「文学横浜の会」

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2011年12月7日


「より大きな失敗をしないために」

 「十字軍物語」を書き終えた塩野七生氏のインタビュー記事(朝日新聞6日朝刊)から
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「善意ぐらい悪をもたらすものはない」
 8度にわたる遠征で最も悲惨な結果はフランス王ルイ9世が率いた第7次十字軍。 熱心な信者だったルイは、キリスト教徒の血を流してこそ聖戦というローマ法王の言葉を素直に受け止め、無謀な行軍で惨敗、 大きな犠牲を払う。

「自分に疑いを持っている人はあまり悪行は犯さない。自分を正しいと思っている人たちが災害をもたらすと思う」
 理想のリーダーはイギリス王リチャード「獅子心王」だ。彼の第3次十字軍は交渉でキリスト教徒の聖地巡礼を認めさせた。 戦略的な思考と前線に切り込む勇気を併せ持ち「勝つべくして勝った男」と評する。 居眠りして捕まりそうになる場面もあるが「俺たちがいないと、と部下に思わせるのが一番強いリーダー。完璧な人はだめです」
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200年に及ぶ「十字軍物語」を書き終えた塩野氏の含蓄のある言葉だ。
日本のリーダーについても言及し「欠点ばかり探すのはやめようという気持ちになった」そうだ。

塩野氏が日本の国会審議をどの程度見ているか判らないが、 テレビで放映される日本の国会審議を見て、これが国会での審議かとうんざりすることが多々ある。 リーダーとは、実際に仕事をする人(つまり官僚か)が、率先して仕事に取り組めるようにするのも大事だと思うが、 昨今の官僚叩きもそれが過ぎると、国としてはマイナスとなるのでは、と危惧する。

一部の悪弊や不正を正すのはいいが、なんでも官僚は悪いとなるとそれは行き過ぎだ。 なんだかんだと言われても、諸外国に比べて日本の官僚に汚職や不正は少ないし、仕事に取り組む姿勢も悪くはないのだ。 中国やロシアでさえ自国の国民でさえ役人の汚職は目に余る状況だし、 国によっては入出国に際してさえ公然と賄賂を要求する役人さえいるのだ。

塩野氏はまた、
「負けた時に相手を研究するのがキリスト教世界。後のルネッサンスは自分たちへの疑いと反省から生まれた。 最後に勝ったのはキリストでしょ」。 一方のイスラム世界は「相手に興味がない。イスラムはなぜ勝利を活用できなかった。反省がないから次の発展がないのです」。
とも言っている。

こうした記事を読んで、放映されたNHKの番組「“真珠湾”から70年 証言ドキュメンタリー日本人の戦争」、 「坂の上の雲」を見て思った。

 日本は苦労して亜細亜ではいち早く近代化し、多くの犠牲を払って「日露戦争」に勝利したのだが、 反省もなくただ勝利したと言う事実に酔って、そのまま「真珠湾」に突き進んだと思えて仕方がない。 日露戦争での勝利にしろ、203高地への攻防に至る戦績を見れば、そんなに誇れる内容ではなかった。 余りに海戦の勝利に酔いしれて、反省をしなかった結果が「真珠湾」へ向ったのではと思えて仕方がない。

塩野氏は「賢者は歴史から学び、愚者は経験に学ぶ」と言うが、 「人間は何からも学んでいない。相も変わらず失敗ばかり」とも言う。

つまり人類とは失敗の繰り返しであり、成功とは次の失敗の序章に過ぎないと言っているように思う。

 そこで今回の原発事故だが、これは失敗に当たる事象に違いない。でも起こってしまった事はもう元へは戻れない。 それならば事故に至った原因を包み隠さず究明し、反省を込めてこれからの世代に引き継がねばいけない。 それが我々にできる唯一の事で、より大きな失敗をしないための教訓にしなければならないと強く思う。

<K.K>


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