「文学横浜の会」

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2012年3月9日


「大震災に備えるために」

 3月11日に近づくにつれて東北大震災に関連する映像を多く目にするようになった。 震災に遭われた方にはさぞ忌まわしく、観るのさえおぞましく感じる事だろう。

大震災に関連した余震と思われる地震がまだまだ収まる気配はなく、 東京直下型地震や東南海地震に関係する予想もかまびすしく報道されている。 日本に生まれた以上、何処にいようとも地震から逃れることはできない。 だからと言って脅えてはいけない。

今回の東北大震災でも判るように、大震災が一度起こると大きな被害が発生し、復旧・復興のために莫大なお金を必要とする。 それなのに日本の財政は凡そ1,000兆という莫大な借金を抱えている。 東北大震災によって更に膨らむ事は間違いない。

そうした中にあっても財政健全化に無頓着な政治家がいるというのがなんとも情けない。 日本の借金がこんなに大きいのに問題視しない理由として「外国から借金している訳ではない」と言うのがある。 確かにヨーロッパ等の諸外国の借金は外国からの借金が主だ。 外国からの借金だと国内にちょっと問題があれば国債が売られ、従って国債の利子が騰がって、利払いの増加で借金が膨らむ構造になる。 つまり利払いのために更に借金をしなければならない。

今の日本の国債利子は年利にして0.2%ぐらいだろうか。ヨーロッパ諸国の国債利子が2〜6%の国が多い事からみても極端に低い。 つまり日本の国民は低金利の国債を購入して国の財政を支えている、と言う事になる。 それも殆どが団塊世代以上の今や年金受給世代であり、国内金融・投資機関だ。

そうした低金利にも拘わらず、国の予算のおよそ半分が過去の国債の利払いと新規国債費に充てられているのが現状だ。 気の弱いぼくなどそれだけで青くなってしまう。 例えば1,000兆円の謝金でもし金利が1%上がっただけで10兆円の利払いが生じるのだ。 楽観論者は、そうなったら収入も増えるから、と言うかも知れない。

しかしグローバル化の中で若者の収入はそんなに増えていないし、若者の人数そのものが少なくなっている。 つまり労働人口が減っていて、所得税収入も減っていく。

今のような所得税中心の税制では国の財政は立ち行かなくなるのは明らかなのだ。 こうした事は何年も前から判っていた事で、とうの昔に税制改革をしなければいけなかったのだ。 していなかったのは政治の責任であり、こうした実態を説明しなかった政府の責任だ。

労働者が減り賃金も上がらない社会構造の中では所得税を中心とした税制では、国が従来のサービスを提供するには無理がある。 ここは年金生活者からも応分の税を支払う仕組みを早急に作り、 それによって不利益を被る方には応分の援助をする仕組みも考える必要がある。 税制改革を怠ればギリシャ問題、つまり財政破綻問題は他人事ではなくなる。

財政破綻すれば国民が多大な被害を被る。 ぼくは体験してはいないが、戦時国債が無価値になった敗戦後の混乱を父母から聞き、 過去のニュースからも財政破綻した国家が混乱に陥る様は想像できる。 財政が破綻すれば日本国債を多く保持している日本の国民こそ一番の被害者なのだ。 国債は持っていなくとも多量に抱えている金融期間や年金機構は大きなダメージを受け、国民に被害が及ぶ。

 こんな財政状況の中で、予想される大震災に国は適切な対応ができるのだろうか、ぼくは心配だ。

しかるべき大震災に備えるためにも国の財政は早く健全化しなければいけないのだ。 せめて今のGDPの約200%の謝金をまず150%に減らし、そして100%にすべきだ。 その為にもまず国債の利払いを除いた収支バランスを保つ事が求められる。

無駄を減らすことは無論大事だが、それを待ってはいられない時期にあると認識すべきだ。

<K.K>


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