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2014年11月 7日


「国柄について」

 アメリカ国内ではオバマ大統領の人気が就任以来、最悪だとニュース報道で知った。 その影響もあってか先日のアメリカの中間選挙では共和党が圧勝して、上院/下院とも共和党が過半数を占めたと言う。 捻じれが解消されたことは良いのかも知れないが、大統領として残された期間、あと2年、 オバマ大統領はさぞ大変だろうなと他国の事ながら思う。

それにしてもオバマ大統領の人気がないと言うのがどうも理解できない。 大統領になって約6年、アメリカは中東での軍事的犠牲者は少なくなったし、シェールガス革命もあって経済は上向いている。 それなのに人気がないとは、恐らく他の価値判断があるのだろう。

オバマ大統領の人気のない一つの要素として、 我が国でもそうだったが議会での捻じれ現象で議案が通らず、結果、決められない大統領、と言われているそうだ。 こればかりはオバマ大統領だけの責任ではないと思うのだが…。

人気のないもう一つの要素としては、強いアメリカのイメージを与えられなかったという事が言われている。 つまりイスラム国への対処が生ぬるいと言う事なのだろうが、この辺りにアメリカの国民性が窺われる。 アメリカ国民にとっては、兎に角、力で抑えつけろと言う国民が多いのだろう。

だけど武力によって真に問題は解決するだろうか。 イスラエルとその周辺国との武力抗争の歴史を見るにつけ、武力によっては真の解決にはならないと思う。 アメリカの国民は、大部分がそうだとは思わないが、強いアメリカを望む傾向があるようだ。 銃による多くの事件が起き、多くの犠牲者出ていても、未だに、銃を持つのは個人の権利だと主張する国民も多いのだ。 それがアメリカの国柄なのかも知れない。

そうしたアメリカと付き合うには、日本政府としては心して付き合う必要がある。 何もアメリカが武力を行使したからと、それに付き合い必要は更々ない。 日本国憲法で、そうした武力行使は認められていないと、はっきり言うべきだし、今までそうしてきた。

だけど、これからはどうなるのだろう。 これまでは憲法で認められていないと言っていた集団的自衛権が、閣議決定で、認められると変えてしまう国だ。 憲法の番人としての最高裁判所は、一体何をしているのか。 それともそう言う事は政治案件だから、口出ししないと言う立場なのだろうか。 集団的自衛権が必要なら、出来るように憲法を変えればいいだけの事なのに…。

曖昧なままに事を進めてしまう。これが日本の国柄だと言えば多分そうなのだろう。 昔には、関東軍が国の意向とは関係なく中国大陸への侵攻を続けてもなんのお咎めもなく、結果、日本の敗戦に?がった。 近くは国会答弁で「自衛隊がいる処は安全地帯だ」と言った首相もいる。それで国会が混乱もしない国だ。 責任の所在が有耶無耶、それが日本の国柄なのだろう。

アメリカとの同盟関係は大事だし、その必要も解るが、だからと言って何が何でも、と言う訳にはいかない。 国には国の、特色もあるし歴史がある。 自国の守りを備えるにしても、日本は勇ましい事は言わないし、しない、それで結構、と僕は思う。

国柄と言う観点から、隣国、中国はどうか。 最近のニュースを見ると、中国では「法治」、つまり「法によって治める」と言う事を再確認したそうだ。 今までそれが出来ていなかった言う事なのだろう。

だけど広い中国で、上からの表明だけで法治国家になれるのなら…、と思う。 中国憲法の前文に 「中国の各民族人民は、引き続き中国共産党の指導の下に、〜、文明的な社会主義国家として建設する。」 と言っている。要するに一党独裁であり、法の上に共産党がある、と言う構造だ。

中国にも憲法があって法律もあり、法治国家なのは確かだが、その上に共産党がいる。 つまり法治国家でありながらそうではないのが中国の国柄と言える。 中国は広すぎて、人も多くて、それが一つの国家になっているから、どうしても無理がある。

<K.K>


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