「文学横浜の会」

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2015年 8月 7日


「おかしくはないか?」

 サウジの国王だかが「フランスの避暑地にある別荘地に移動」とのニュースを目にした。

御一行様が、なんと千人以上、それも自動車を連ねて、一般の避暑客は締め出してビーチを王様御一行専用にしてとの内容だった。 ビーチまでの専用エレベーターまで造ると言うのだから、「それって本当?」と思ってしまった。 ビーチから締め出される地元民の反感は理解できるとして、地方行政府としては御一行様が落としてくれる「お金」に期待して、 或いは治安上の問題からそうした対応をせざるを得ないのだろう。

それだけ財力があると言う事なのだが、元はと言えば原油があるからで、その利益を一族で独り占めしているからだ。 私にはどうにも理解できない事なのだが、「中東」と呼ばれる地域にある「国家」のイメージは、 民主主義を標榜する西欧諸国とはまるで違うようだ。 国の名前はあるにしても、実態は各一族の集合体であり、一族の結束の方が国の結束力より強いと言う。

だから富める一族とその他一族との貧富の差は激しい。何もしなくとも何千億とも言われるオイルマネーの利益に預かれる一族と、 一所懸命に働いても食べるのに汲々としている人達との落差は激しい。貧しい人々の反感も大きいだろう。 そうした実態が中東諸国と呼ばれる地域全体を不安定にさせているのは間違いない。

原油産出技術の向上で自国でのシェールガス等、原油調達に目途のついたアメリカが、 今後中東諸国にどのように関与していくかは不明だが、今まで通りだとは考えにくい。 つまり中東諸国とは今迄とは少し距離を置く可能性もある。 となると中東地域での政情不安は混迷を深める事も考えられる。

そうなると中東地域からの原油の輸入は不安定になり、 だからと言って現在参議院で審議している「安全法案」と言う法律の出番だなどとは言ってほしくない。 寧ろ日本のエネルギーにおける原油の依存度を再検討するきっかけにすべきだ。

安倍首相が度々例に出す「原油が届かなくなったら、日本は立ち行かなくなり、 それでいいのか」とまるで脅すような言葉には暗然とし、だから自衛隊を派遣すると言うのか。 原油が届かなくなるような事態になったら、アメリカに習って力ずくで原油が届くようにするなどと、夢夢、思ってはいけない。 そんな力は日本にはないし、例え複数の国でそんな事をしても、アメリカと共に貧しい人達から反感をかうだけだ。

原油で得た利益を、平等にそこの地域の人々で分け合うシステムが出来ていれば、中東が平穏化すると思うのだが…、 現状ではとても難しい。

と言って、原子力エネルギーに大きく頼るのも、 安全性や使用済み核燃料処理技術が確立されていない現在、それは後々大きな問題を残す。

となれば原油を利用しなくてもいいシステムを造る事だ。 つまり自然エネルギーの活用であり、水素エネルギーの活用システムの確立だ。 それにCO2が本当に気候変動の原因になっているのかの検証を前提として、多くの国で産出される石炭の活用も考えるべきだろう。

中東地域での貧富な格差問題が地域の不安定化を齎しているのは確かだが、西欧諸国や日本でも格差問題は顕在化している。 中東の混乱をみるにつけ、格差問題は国内の不安定要因の最たるものだと為政者は肝に銘じてほしい。 幾ら軍事力を強化して、対外的な安心を担保したとしても、国内が不安定化してはなんのこともない。

<K.K>


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