「文学横浜の会」
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2015年10月 4日
「公平な社会へ」
「GDP、600兆円を目指す」との安倍首相の唐突の発言に「ははぁ、今度は国民の目を経済に逸らす魂胆か」
との印象を持った方も多かろう。
国力、或いは経済力の指標の一つとしてGDP(国内総生産)が用いられている訳だが、日本は今、世界第三位のGDPにある。
ご存じのように長らくアメリカに次いで第二位に位置していたが、中国に抜かれ、
その差は年々大きくなり、今や中国のGDPの半分ぐらいだ。中国のGDPがアメリカを超えるのもそう遠くはないと言われている。
13億を超える人口を抱える大国だから、GDPの数値だけで見ればそれも頷ける。
同じような人口を抱えるインドも、何時か日本に迫り、超える年が来るかも知れない。
さて、安倍首相の発言だが、真意はどうあれ、その他の発言(例えば「1億総活躍社会」へ)からすると、
国民の全てが生産に従事して生産力を高める、と言う事らしい。
無論、そのための政策を進めると言う事なのだろうが、もう働きたくない人、
つまり定年退職した人も含めてと言う事ならちょっと待て、と言いたい。勿論そんな事は考えてないだろうが。
ここで考えなければいけないのはGDPが大きくなれば、それだけ国民が幸せになれるのか、と言う事だ。
つまり国民の総所得が大きくなったからと言って、国民の全ての所得が大きくなったとは言えない現実がある。
金持ち或いは大企業の社員の所得は増えたが、派遣社員や中小企業に勤めている人の賃金は変わらない、
或いは減ってしまうようでは、GDPを増やしたからと言っても何の意味もない。
政治家の仕事とは何かと言われて、国民の平和と安全を守り、安心できる生活環境を維持する、と多くの政治家は言うだろう。
無論それは大事ではあるが、同じように働いた人は同じように公平に扱われるような社会にするのも大事な事だ。
人の運、不運はつきものだが、不運に遭った人でも安心して暮らせる、そんな配慮も必要だ。
その為に余裕のある方からは多く税金を取る、自分の幸運をほんの少し社会に還元する、そんな仕組みが必要で、
つまり金持ちへの増税だが、税金逃れの為に海外移住との新聞記事を見た。
それによると消費税の10%アップ、遺産相続への課税強化、或いは国民総背番号制の導入によって個人の資産が判ってしまう、
等の事から将来の増税を恐れて、実際に日本を離れる資産家がいるようだ。
そう言う人は恐らく何十億もの資産があるのだろう。例えば何百万円の税金を払っても、手元にその何倍ものお金が残るのに、
少しでも税金の少ない国に移ると言う心理は判らないではないが、なんともあさましい。
法人の税についても、各国で下げる競争のようになっているが、それもなんかおかしい。
まぁ、会社が来てくれるのなら、社員を雇って貰えるのだから、国としてはいいのだろうが、
国家間での法人税の値下げ競争となれば、チョット待てと言いたい。
どんな国にも国民がいて、仕事がなければいけないのだ。
だからそういう事こそ、国連とかの機関で税についての取り決めを決めて、
一定の範囲にするように統一基準を決める。
ただ税逃れためだけのペーパーカンパニーには各国でそうした会社へのペナルティーを科す事が出来、
安い税金の国を転々とするような資産家には、
入国税や滞在税も高くできるような取り決めがあってもいい。
資産家諸氏よ! <K.K>
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