「文学横浜の会」

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2016年 1月 8日


「激動する世界と日本」

 暖かい正月だった。

 これも温暖化の影響なのかとのんびり正月を過ごしたら、突然、北朝鮮が水爆実験をした、とのニュースが流れた。

なんとも判らない国だ。何を意味するのか何をアピールしたいのかさっぱり判らない。 北朝鮮の言う事では「アメリカからの抑圧への対抗手段だ」と言う事らしいのだが、 それがどんな危険な事なのかまるで理解できていないようだ。 絶対的な独裁者の国で、独裁者が間違いを犯せば、その国民は可哀相だ。 原爆だの水爆だの、使用すれば自ら破滅するだけで、持っていても自己満足だけ、なんの使い道もない。

そんな国が近くにあるのも事実だ。 唯一つの救いは、日本の若者や国民が北朝鮮の独裁者に対して冷めた目で見ている事だ。

 また南シナ海を見ると、中国による南沙諸島の埋め立て問題で隣接諸国と軋轢が生じている。 岩礁を埋め立てて、飛行場を造り、中国は着々と実績を積み立てているようだが、そんなごり押しは認められていない。 なんとも厄介な国だと思う。 不幸な過去をもつ大国で、国力が盛んになった今、過日の勢いを取り戻さんとの想いなのだろう。 人口の多い大国だけに、北朝鮮とは違う意味で厄介な国だ。

   *

 目を世界に向けると、中東諸国からEU諸国へのイスラム教徒、特にシリアからの難民の流れが止まらない。 EU諸国にイスラム教徒が増える事によって、或いはISのテロリストが難民に紛れて国内に侵入するリスクも併せ持ち、 キリスト教徒の多いEU諸国では大きな国内問題になっている。

中東諸国のいざこざや混乱は今に始まった事ではないが、難民の発生とあって、周辺諸国にたいして、 特に地理的に近いEU諸国に種々の問題を起こしている。 人道問題、財政問題、右翼の台頭、宗教問題、と諸々の問題が一挙に噴き出した。 かねての理想だったEU諸国の垣根を取り除こうとする、崇高な理念が今や風前のともし火のようになっている。 難民発生のそもそもの遠因は、西欧先進国によるアフリカや中東諸国で行った過去の政策を引きづっているとも言える。 つまり現在の現象は過去の行為を引きずっているのだ。

 中東ではイスラム教内の問題も生じている。
サウジアラビアがシーア派の宗教指導者をテロリストとして処刑した事で、 サウジアラビアとイランではお互いの大使館を閉鎖しあい、何やらきな臭くなっているのだ。 中東地域におけるスンニ派とシーア派の大国とあって、今後の動向が気になる。

イスラム教中東諸国でのスンニ派国とシーア派国との対立は以前からあるにしても、 これも歴史的な背景があり、突然生じたと言う事ではない。

ソ連が崩壊しアメリカが相対的に以前ほどの力が無くなり、 新たな大国として中国が台頭し、今や世界は次の新たな秩序を求めているような様相だ。

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 そんな世界を背景に日本を見るとこれでいいのかと思うような事が様々ある。 その一つがここでも何度も書いているが、日本の借金問題だ。

 何日か前、と言うか先月、と言うかもう去年と言う事になるが、日本の国家予算が新聞に載っていた。 個別の予算額についてつべこべ言う見識は持ち合わせていないが、アベノミクスとやらで日本は景気がいい、 と言う事になっているのに収入より支出の方が多いのに「おや?」と思った。

支出には過去の国債に対する金利分等もあるから、それらを除いた金額を考慮した収支のバランスで見ても、やはり支出の方が多い。 と言う事は依然として国の借金は膨らんでいると言う事だ。景気の良い悪いは振り子のように常にやってくる。 景気が良い時に幾らかでも借金を減らさなければ…。

もし景気が悪くなればもっともっと、国の予算は借金に依存する額が多くなり、国の借金は益々大きくなる。 国の借金は今でも1千兆円を超えているのにどれほど大きくなるのだろうと心配だ。

借金は何時か返さなければいけない。 真面目に考えれば少しずつ何年もかけて返す事になる、と考えるのが普通だが、そんなにうまく行くのかと大いに心配だ。 子供や孫の世代、或いは孫の孫の世代まで続くとなれば気が重くなる。

どんな形で返すのかも問題で、いきなりのインフレで、それも第二次大戦後の日本でのハイパーインフレ、 近くはアルゼンチンにおけるハイパーインフレが起これば国の借金はチャラになるかも知れないが、その付けは国民に来る。 つまり国民に強制的に負わせる事になり、国民は苦しみ、日本の信用は無くなる。

 確か小渕首相の頃だったと思うが、国の借金が膨らんで、深刻な表情で”借金王”だと揶揄して言った時代があった。 その頃の国の借金は500兆円にはなっていなかったと思う。 それが1千兆円を超えて、益々増えて行く借金に、政治家は鈍感になっているとしか思えないのが何より怖い。

 難民問題や宗教問題で苦しむよりお金で苦しむ程度なら、と政治家は思っているのだろうか。

<K.K>


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