「文学横浜の会」

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2016年 7月 4日


「イギリスのEU離脱をみて」

 いやいや、イギリスのEU離脱を問う直接選挙結果にはびっくりした。

選挙結果をみて、民主主義、或いは直接選挙の様々な問題点が見えてきた。 特に今回のような離脱か離脱しないか、或いは賛成か反対かの二者択一の単純化された選挙には違和感がある。

例えば、日本においても「郵政民営化」反対か賛成かで選挙が行われたが、そんなキャッチフレーズで選挙をして選ばれた国会では、 何も「郵政」だけを扱っている訳ではない。寧ろ考え方にによってはもっと大切な大事な事も審議する。 だから二者択一の問題提起だけで選挙をするのは問題が多い。

民主主義とは話しあってみんなの納得できるような方法を見い出すのが理想的なのだろうが、現実ではそんな理想通りにはいかない。 話し合うと言うのはお互いに相手の内容を理解して自分の意見を言うのが理想だが、 実際は言論競争のようになって、自分の主張の正しさを主張し、相手の欠点を言い立て打ち負かす、 その果てに誹謗中傷、事実でない事まで言いふらす、そんな風になってしまうのが現実だ。 そしてそれらの言論の洪水の中で、どれが真実でどれが偽りかの判断が出来なくなる。

現実の問題は全て二者択一で決まるような事は少ない。

国民に判断を仰ぐと言う場合でも、国民に全ての情報が与えられているのかとの問題もある。 例えばTPPの問題にしても、交渉過程を含めて全ての情報が開示されているのか?  国会の議論を見ているとどうもそうではないらしい。 つまりTPPの内容を含めて開示されていないのにどうして国民には判断を仰ぐ争点にするのか。

憲法改正問題にしても、9条を変えて軍隊を持てる普通の国にしたいと言うグループと、 9条を守り戦争の出来る国にするなと言うグループが対立している。 極端な議論では、一方はアメリカの軍事力を頼むからにはそれなりの協力も厭わない、 アメリカ軍に協力して自衛隊を何処でも派遣する、と言う意見であり、 一方はこれ以上自衛隊の能力を高める事さえ反対、と言うような事を言う。

となると僕はどちらに賛成していいか分からなくなる。 ぼくの考えはそれなりの軍事力を持って、力を蓄えることは反対ではない。 だからと言って西欧やアメリカのように、問題解決の手段として軍事力を行使することを迷わない国と同じ行動を取るのは反対だ。 軍事力を行使しても真の解決にはならないし、かえって憎しみを残すだけだ。 戦後の日本に対しても、韓国や中国の人々の中に未だに憎しみを持っている人が少なからずいるのも、 戦前戦中の日本に対する憎しみからだ。 だから戦後日本のたどった道は正しかった。

戦後の日本政府の政策は正しかったと考えるが、と言ってこれ以上の軍事力は持たない、と言う極端な意見には賛成できない。 確かに9条には「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」とあり、 自衛隊も憲法違反だとする者もいる。しかし自衛隊の存在を否定する者は多分少ないだろう。

過去の政治家たちは憲法の下で如何に自分の国を守るか、英知を働かせて自衛隊を作り上げたのだと思う。 憲法にどんな事が書かれていようとも、自分を守るのは当然の事だ。 憲法に書かれているのは我が国の他国に対する思いを述べているのだと、ぼくは理解する。 だからこそ自衛隊は違憲かも知れないけど、大方の国民は支持しているのだ。

だから自衛隊の力を増強し、進化させる事は何も問題はない、と言うのがぼくの立場だ。 今の改正・反対のそれぞれのグループの考えを聞いても、どちらにも組しない。

まあ憲法問題は何も9条だけではないから、これこそ二者択一ではないよね。

<K.K>


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