「文学横浜の会」

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2016年12月7日


「世界の問題、日本の問題」

 5年後、10年後、或いは20年後に現在を振り返った時、なんと語るのだろうか。 恐らく多くの人はまだまだ健在で「あの年」として現在をを振り返る事が出来るだろう。その時どう言うだろうか。

英国のEUからの離脱派の勝利、そして米国のトランプ勝利、と世界に大きな衝撃を与え、 そしてEU諸国にも大きな影響を与えて国粋派を勢いづかせている、と各種のメディアは伝えている。

皮肉な事に、英国にしても米国にしても、直前の世論調査では多くのメディアは反対の結果を予想していた。 という事でメディアの信頼性を傷つけ、大手メディアが多くの国民の意志を掴めていない事も明らかになった。 知性に対する反乱だ、と見る向きもある。

予測は予測で、そんなに誇大評価すべきではないとの見方もあるが、 従来の予測調査では正確に投票行動を把握できなくなっているのは間違いない。 それにメディアの多様化にもその原因があると思われる。

インターネットの普及で、ツイッター等による真偽ごちゃまぜの情報がはびこり、全ての情報を読む事は不可能で、 情報を受ける側、つまり吸収する情報の片よりが生じているのは明らかだ。 結果それは、民意の分断を助長しているのではないか。

例えば従来のメディアを例にとるなら、A新聞だけしか読まない、とう状況がインターネット利用者の間で進んでいるということだ。 偏った情報だけではまともな議論はできないし、異なる考えを理解しようとする考えも起きないだろう。 そしてインターネットで流れる情報はまるで信用できない、出所もはっきりしない情報も多い。 そうした中でネットのある情報だけ見ている人は、それを信じてしまう危険性は大だ。

 一方、英国や米国の選挙結果は、従来の体制への国民の反乱だと言えるし、不満の表れだともいえる。 それはグローバル化に対する反乱であり、所得格差に対する怒りである。 不満の捌け口として、より過激な方を支持して、兎に角現状を変えたい、という捨て鉢な意識が働いたという事だろう。

結果が出た以上、今は見守るしかない。 取り敢えずはトランプ大統領が選挙で言っていた事を何処まで実行しようとするのか、いずれ判るだろう。

そしてEUはこの先EUとして纏まっていけるのかも大きな問題だ。 各国が割拠して、複雑な同盟関係を繰り返し、戦い合っていた歴史を踏まえて、 EUとしてまとまろうとした初期の理念をこのまま継続できるのか、試練である事には違いない。

日本としては見守るしかないが、日本の中にも、EU諸国や米国の国民と同じように不満がくすぶっているのは間違いない。 政権側はそれを理解する必要がある。

  *

 西欧の不安要因と共に、日本の独自の不安要因として、天皇の継承問題がある。

今、天皇陛下の退位をめぐり政府内で議論がなされている。何れはっきりした方針は出されるだろう。

今、こうした事態を見るにつけつくづく思う。 天皇陛下が退位したいと思っても、自分のご意志ではままならないのが現在の陛下の置かれた立場だ。 それ程重い立場なのは間違いないが、なんとも苦々しく思う。

それぐらい陛下の意志を叶えてやってほしい、と思うのだ。 そうは出来ない、とう方達の理屈は尤もだとしてもだ。

そんな不自由なら、陛下の地位に就くのはやめる、という後継者が出たらどうする、と思って、天皇への継承問題を考えると、 日本の天皇制度は将来に亘って維持できるのかと不安になる。

今の制度では天皇の直系の男子、に限られる。 それによれば今該当される皇族では4人、3代しかいない。 それも今の天皇を1代とすれば2代目が2人、3代目は男子が一人、つまり3代目に男子が生まれなければ、絶えてしまう。 それはなよ、と言いたい。

だいたい「直系の男子」のみと言うのが、今の時代に合っているのかは疑問だ。 政権側では3代目に男子が生まれるのを期待して、との考えだろうが、 その3代目がそんな制約の多い天皇の継承は嫌だと言ったらどうする? まさかそんな自由はないと、強制する積もりなのだろうか。

外部の者の英知を集めても、それぞれの考えや思想で纏まらないのは明らかだから、 皇族の「長」は皇族方が決めて、それを日本の天皇として仰ぐ、と言う制度にならないものか。

小泉政権の時に皇室典範の改正について議論され、改正寸前までの時点で、3代目の男子が生まれ、 改正が立切れになりそのままになってしまったのがなんとも悔やまれる。

政権は難しい事は後回しにしたいのだ。

<K.K>


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