「文学横浜の会」

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2017年 4月 7日


「北朝鮮問題」

 北朝鮮の挑発行為によって、周辺諸国は苛立っている。

隣国の韓国は無論のこと、攻撃対象として名指しされるアメリカや日本も不快感と不気味な感情で北朝鮮を見守っている。 取り分けアメリカのトランプ政権が、これからどのような方針で臨むか、当面、目を離せない。

トランプ政権になって懸念されていたアメリカ国内の分断はまだまだ続くようだし、政権を支えるスタッフもまだ整っていないと言う。 そうした中で国内の諸問題はまだ手つかずのままで、選挙公約に掲げた公約を実行しようとすれば、 国内の分断は益々深刻になる。現に就任直後矢継ぎ早に出された大統領令も、あえなく引っ込めざるを得なくなったものもある。

トランプ大統領と今迄のアメリカ大統領との違いは、ツイッターでの発信にある。 つまりトランプ大統領は個人的な見解・感情をそのままツイッター上に発信する。 その中には明らかな間違いも含まれている、らしい、 と言う曖昧な表現になるのは、ネット社会における<真実>について考えなければいけないからだ。 そして言葉の意味を、個々人の中でどのような意味合いを持つのかも考えなければいけない。

ところで言葉とは、基本的には人間の意思・考えの伝達手段の為の道具であり、言葉の捉え方はその濃淡を含めて個人毎に異なる。 だから同じことを表現するにしても、芸術家は時に多くの言葉を用いる。 それがツイッターでは短い言葉で、ましてや大国アメリカ大統領の発信する言葉だから世界中で様々な憶測を呼ぶ。 同じ言語でも短い言葉では受け取り方で、ニュアンスや印象も異なるのに、他言語に翻訳すればその内容は微妙に乖離する危険もある。

アメリカの大統領が北朝鮮に対して「アメリカだけでも、あらゆる手段を考慮して対処する用意がある」と発信すれば、 北朝鮮の指導者はどう考えるだろう。無論、そう言わせてしまった責任は北朝鮮にあるにしてもだ。

最悪のシナリオはアメリカの軍事力行使である。

アメリカは今まで多くのそうした事をしてきた過去がある。巧く成功した例もあるが、失敗した事もある。 ビンラディン殺害は成功した例かも知れないが、イラク侵攻はその後の混乱、アメリカ兵の死者の数から言っても失敗例だろう。

先の大戦後の日本は、アメリカとは戦勝国と敗戦国との関係でスタートした。 戦後日本は、時にアメリカの援助を受け、時にアメリカを利用して経済力を高め、 そして防衛面ではアメリカの傘の中で経済的な繁栄を築いてきた。 その関係もあってか、日本政府はアメリカのする事には反対せず、そして協力もして来た。 何れも日本とは遠く離れた地域の紛争地での出来事でもあったからだ。

さてそこで隣国での事となると、これまで通りアメリカのする事は「何でも賛成」と言う方針でいいのだろうか、と思う。 確かに北朝鮮は不気味で、日本における拉致事件も解決していないし、なんとも不気味な国なのは確かだ。

日本の政府はトランプ大統領がもし「軍事力を行使して排除する」と言ってきたらどう答えるのだろう。 そうなれば隣国の事ゆえ、日本も被害を受ける可能性は高い。 少なからず犠牲者が出る事も考えなければいけない。それを承知してアメリカの対応を支持するのだろうか。

武力行使など、よくよくの最後の手段だと思う。 武力で解決しようとすれば、その反発も武力でとなり、どう決着がつくにしても恨みも根深くなる。 中東地域の2千年に亘る混乱は双方に根深い恨みが根付いて、和解を困難にしている。

ロシアやアメリカが常にテロ行為に晒されているいるのは、武力を行使した事によるなんらかの恨みを受けているからでは7ないのか。 アメリカやロシアがよりテロの対象にされるのは、国外でより多くの命を奪い、恨まれているからに違いない。

こんな事を言うと、やる時には毅然としなければいけない、と言う声が聞こえる。 それはそうかも知れないが、毅然と対処する事だけが、全てうまく行く、と言う訳ではあるまい。 兎角大国は自分の国の強さを過信して、力で抑えつけるきらいがある。

北朝鮮に対しては挑発されても相手にせず、気長に内部崩壊を待つのがいいと思うのだが、甘い考えだろうか。

<K.K>


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