「文学横浜の会」

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2017年 5月 6日


「共謀罪」

 まだまだ北朝鮮問題とトランプ大統領に纏わるニュースが続いていて、当分収まる気配はない。 無関心でありたいが、日本とは地政学的に或いは経済的に密接な国であり、そうも言えないのが現実だ。

でも余りに軍事的な禍々しいニュースが続くと嫌気がさしてくる。 そう言う事に鈍感になるのも、別の意味で良くないのかも知れないが、多くの日本の皆さんは今はゴールデンウィークとやらの休日で、 そうした禍々しい事は忘れているだろう。

どちらかと言えば、ぼくは北朝鮮から聴こえて来る勇ましいニュースには無関心でいた方がいい、と思っている。 トランプ大統領の何でも駆け引き、取引で問題を解決しようとするのも、何か違和感がある。 でも他国の国民が選んだ大統領だから、それ以上の事は言えない。 とばっちりが日本に及ばないように願うのみだ。

 *

 さて今国会で審議されている「共謀罪」、正確には 「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」について様々な指摘がなされている。

法務省のWebページで政府の提案理由を調べると 「近年における犯罪の国際化及び組織化の状況に鑑み、並びに国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条 約の締結に伴い、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団による実行準備行為を伴う重大犯罪遂行の計画等 の行為についての処罰規定、犯罪収益規制に関する規定その他所要の規定を整備する必要がある。」とある。

ぼくは法律の素人だが、ついでに内容についても調べてみた。それによると関連法案は、
第一 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部改正
第二 条約による国外犯処罰
第三 刑法の一部改正
第四 犯罪による収益の移転防止に関する法律の一部改正
第五 国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律の一部改正
第六 附則
となっている。

上記の内容詳細は素人の言うべきことではないと思うが、第一印象としては、その関連法が多方面に及んでいると言う事だ。 刑法は無論、民事再生法や破産法、或いは旅券法や地方税法、道路運送法はたまた所得税法等々、百余りの法案に及び、 凡そ日本のすべての法律と関係していると思える程だ。 つまりどんな事でも疑いがあれば捕えるぞ、と言う風にも思える。
それだけ今回の「共謀罪」が様々な議論が起こる要素でもある。

そしてどんな法案でも「その他」とか、「のような事項」とか「に類する事項」とかの文言がある。 「〜の事項に限る」と言う表現にはなっていないのだ。 とう事は立法時にどんな説明をしても、それが担保されていると言う事はあり得ない。

よく戦前戦中の「治安維持法」と対比されるが、この治安維持法も当初は「共産主義者」を取り締まる法律として立法されたが、 共産主義者に限らず、政府に批判的な人々を取り締まる法律として運用されるようになった。

つまり立法時に政府がどんなに説明しようと、その過程は残らず、ただ法案だけが一人歩きするのだ。

そうした要素とは別に、日本の大きな問題は司法のあり方だと思う。 つまり日本の司法制度は本当に独立した組織であるのかとの疑いが拭えない。 どんな法案でも運用するのは人間であり、時の政権だ。

検察と裁判がそれぞれ本当に独立した組織なのかとの疑いも縷々指摘されている。 つまり法務省や検察庁、裁判所の人事交流があるような組織で、本当に独立性が保たれているのかとの指摘も前々からある。

それに日本では「忖度」と言う事が何かと目に見えない形であり、権力者に媚びると言うのではないだろうが、 物事を穏便に済ませるには、或いは組織間でいらざる軋轢は起こさないために、と言う暗黙の配慮が働く場合かある。 そう言う訳で専門用語は失念したが、日本では検察から出された案件は殆どが裁判の対象とされていると言う。 政治案件の裁判では多くが有罪の判決だとの指摘もある。 これは先進国では日本特有の事らしい。
つまり日本では司法の独立性が保たれていないのだ。

今回の法案にしても後々国民を苦しめる様になるやも知れない。それが心配だ

<K.K>


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