「文学横浜の会」
エッセー
INDEX 過去のエッセー
2019年 6月14日
「引きこもりと2千万円不足問題」
中高年の引きこもり問題が浮上している。
「中高年の引きこもり」の定義は曖昧だが、ここでは一定の職を待たない、求職行動もしない、
年金年齢にも達していない中高年の人達とする。
これ自体問題だが、予備軍、つまり学校は出たが同じような状態の若者達の存在ももっとクローズアップしてもいい。
そのような状態の年齢毎の実態は把握されていないようだが、かなりの数になるとも聞く。
僕の住む町、身近な近所を見ても、それらしき人物はいる。仕事も持たずぶらぶらしているような人ならそれと判るが、
自宅から出て来ない人もいるとなると人数は全く判らない。
そんな人達はどうして生活できているのかと言えば、親のすねをかじっているのだろう。
中高年の引きこもりが何故問題かと言えば、そうした親達がもうかなりの高齢者で、
子供を養える資産を残せる親ならばいいが、そのな親はそういまい。
つまり、高齢の親が亡くなれば引きこもりの中高年の人達の生活はいきづまる、と言う事だ。
そう言う方たちは将来、国からの生活支援に頼らざるを得ず、
それでなくても国の社会保障費は国家財政の大きな比重を占めているのに、こうした事態を放置すれば将来さらなる負担増となる。
働く年齢にあるに人が引きこもるにはそれぞれの理由がある。
「その他」の中には精神的な病気と本人は自覚していなくとも、病的な人もいるだろうが、
育った環境や本人自身に問題のある人もいるに違いない。そう言う人は集団の中ではある程度生じる数なのかも知れない。
また「身体的な病気」の方たちは、個人の力や努力では如何ともし難く、社会全体で支えていかなければいけない。
ここで問題になるのは「精神的な病気」や何らかの理由で「社会から取り残された者」達である。
そうした者たちが最近増えていると言うのだ。その中には学校を出て会社で働いていたが、発病し求職に追い込まれた、
と言う方もいる。また若い頃に正社員になれず非正規社員でその日暮らしをしていたが、高齢化によって職を失い、
労働意欲を失った者もいる。
或いは高齢の親の面倒を見るため等で退職せざるをえず、所謂、老々介護の実態もある。
本人は働きたいのに働けないと言う典型的な例だ。面倒を見ている親の年金で今は生活できているが、何れ親は亡くなる。
それから職を探して運よく働けたとしても、満足な年金をもらえるのか、と不安な日々を過ごしている方もいるだろう。
精神的な障害をもった方たちの社会復帰の問題も、日本では後進国に等しい。
今のような複雑な競争社会ではどんな人でも精神に異常をきたし発病するリスクを抱えている。
日本ではそうした知識も知見も不足していると断言してもいい。
我が子あるいは自身がそうならなかったのは幸いなことで、自分が誰にどんな影響を与えたかは判らない、
と言うのが現代の複雑な社会の中で生きている事なのだ。
個人の成功は他人に不幸を与えたかも知れないし、個人の悦びは他人にショックを与えたかも知れない。
集団の中で生きる以上、人間である限り、それは避ける事は出来ない。
そう言う方たちを含めて、社会から取り残された方たちの社会復帰への道をサポートするシステムが必要だし、
何よりそういし者達を生み出さないシステムを会社を含めて取り組まなければいけない。
会社にしても経験を積んだ人材を失うことでもあるのだ。
社員の精神状態を把握し負担のないように勤めるのも、会社の利益になると自覚すべきだ。
嘗て日本は総中流社会と言われたが、今や欧米並みの格差社会だ。こうして社会から取り残された方々、
それに何百万人と言われる非正規社員の方たちを含めて、国民年金を支払うのが大きな負担となっている。
日々の暮らしに追われて月々1万数千円の支払いが大きな負担になる人達なのだ。
やっとの思いで全額支払ったとしても将来もらえる基礎年金は月々6万円たらず。
それなら無理して納めるより将来は生活保護の方がいい、と考える方もいるだろう。
確かに、生活保護を受給するには色々な制約があるにしても様々な特典があり、その方がいいと考える者もいる。
そうした中で今マスコミを賑わしているのは国の諮問委員会が出したと言う、老後資金としての2000万円問題だ。
諮問委員会が出したと言う報告書を政府は受け取らないとのニュースが流れている。
誤解を受けるとか国民に不安を与えるからとの理由らしいが、
そんな報告書以前に多くの国民は将来への不安を抱いている。
不安を与えると言うのは老後の資金として、夫婦で月およそ26万円必要だから、年金で賄うには月約5万円不足するから、
その分は個人で貯えろ、と言う内容だそうだ。個々の数値はおよそだが、内容はそう言う事だと思う。
ここで問題になっているのは正社員として働き、実質企業年金も貰える退職者だろう。
だけど他の多くの非正規社員、実質基礎年金しか貰えない多くの人は、2000万円の不足ではとても足りない。
6万円余りの基礎年金しか貰えない人とは別次元の話だ。
キャッチフレーズだけで、政府がありのままを国民に伝えないか国民は更に不安になる。
アベノミクスとは株価を上げた事は確かだが、国の謝金も大きく増やしたのも確かだ。
20年後、30年後の日本はどうなっいるのだろう。
<K.K>
|
[「文学横浜の会」]
禁、無断転載。著作権はすべて作者のものです。
(C) Copyright 2000-2004 文学横浜