「文学横浜の会」

 上村浬慧の旅行記「アムステルダムの異邦人」


2000年12月


@「深夜に着いた運河の街」

  秋、His Wifeとしてアムステルダムへ。

 プライベートなら季節を選んだりツアーにのるとかするのよね。でも、それは費用がばかにならない。そんなお金もひまもない。

 それならHis Wifeとして巡ってきたチャンスをものにしない手はない。とばかりスケジュール調整、勇んでMy Husband に同行。とはいえ、ハズがなにやら難しい会議に出ている間、パーティーまでの数時間をどう過ごそうか…。

 言葉も知らない初めての国。身振り手振りのカタコト英語。観光客のほとんどいない街や村をひとり歩きでもしてみましょう。知りたい!見たい!だけがつよーい味方の旅でした。勿論、半分はMy Husband も一緒でした…が。

* 深夜に着いた運河の街

 思えばこの旅、出だしからハプニング。成田を無事に飛び立ったまではよかったのだけれど、乗り換えのフランクフルトに着くまでに、安全ベルト装着の指示、数回。遥か上空のことではあるし、何事かと窓の外を見ても、そんな時は雲ばかりでなにも見えない。機長の説明によると、気流と霧によるものだとか。気のせいか機体もガクンガクンと揺れている。

 そんな飛行が12時間。やっと着いたフランクフルトは深い霧の中。アムステルダムへ向けての便はすべて欠航との電光掲示。ここで泊まるか、航空会社の用意してくれた6時間のキャリアバスに乗るしかない。ハズが、一日の余裕をみてアムステルダム入りを計画したのは懸命だった、と妙な感心をした。

 2,3メートル先も見えない霧の中に、オレンジ色のライトが重なり合ったシャボン玉のように揺れている空港。幻想的な情景に疲れているのも忘れてしばし見とれる。

 現地時間、午後9時発のバスは30分ほどで高速に乗った。あたりはすっきりと晴れ上がり、遠くに街の明かりがきらきら光っている。あゝゝ今ごろはとっくにスキポールに着いてたはずなのに…。本当に飛べなかったのかなとうらめしく見上げると、確かに低い雲が、いかにも厚ぼったく空一面を覆っていた。

 前席の人のウォークマン、カシャカシャとやけに響く。まてよ、これは魔笛、モーツアルトの魔笛…。そう判った途端、なんとなく優しい気持になった。隣を見ると、ハズはぐっすりおネンネ。カシャカシャのリズムが魔笛の舞台を運んでくる。

 残念なことに、魔笛の彼は、オランダに入ってまもなく、トイレタイムの小さな村で下車してしまった。

 トイレタイムは15分。車外に出て深呼吸。

深夜0時の空は満天の星。オリオン座も白鳥座も手が届きそうに近く見える。横浜では、一つだけ小さくなって見える北斗七星も、7つともはっきり光っている。やはりここは北なんだなと思う。 That's clear! って乗り合わせた人たちと、思わず微笑みを交わし合っちゃった。

 A.M.2:00スキポール空港着。広い空港では、シャッターが降りているとはいえ、デパート、スーパー、ゲームセンター、ちょっとしたホールまで目白押し。まるでシティーのようだ。

 まずはトイレ探しに案内板の矢印に沿って歩く。もっち、ハズとわたしはそれぞれ別…。

驚いたのなんのって、トイレの高さ、身長162センチのわたしの踵が床に付かない。ハズに聞いたら、男子用も同じだって。朝顔型の男子用は厚底の靴を履いたぐらいじゃ無理だろうって。背の低い人は大便用を使うんじゃないかなって話。そこでハズ曰く。「目標を高く持てって意味が分かったよ」 ふふふ…。

 深夜なのに空港にはTaxiが10台以上も並んでた。欠航はよくあることなんだろうか。

ドライバーは当たり前の顔をして雑談しながら客を待っているみたい。日本と違うなって思ったのはTaxiの型…乗用車もあればバンもある。割合からいったらバンの方が多いかな。ホテルへのアクセスは簡単。「アイル、ゴナアムス. トゥーレンブラント・レジデンス・オテール.OK?」これで結構意志は伝わる。

 やたらと橋を渡り、川沿いに走るTaxi。そうか、オランダは海抜下だった、運河が多いんだったと改めて暗がりに目を凝らす。水の上でなにかが動いている。水鳥かな。That's Swan? Duck? と聞いてみた。That's Swan. と自信有り気に答えたドライバーはまだ18,9の男の子。朝、ホテルの窓から見えたのはWild Duck…かもさんでした。笑っちゃったね。

写真(WILD DUCK) リンク削除

 ホテルに着いたのは午前3時。ハズは荷も解かずに眠りの国へ。部屋は運河沿いの17世紀の建物。やたらと段差が多く、迷路のような通路の奥のおくがこれから五日間のマイルーム。窓からは運河に映る街の灯がゆらゆら揺れてみえました。家事いっさいから解放されて過ごせるんだと思うと、なんだかわくわくして眠ってなんかいられない。TVのスウィッチを入れる。ギョ…! オットット、こりゃなんじゃい。ポルノ映画館でもお目にかかれない映像がバーンと飛び出してきた。深夜のニュースとニュースの間に流れるCM。性に開放的だとは聞いてたけどね。やっぱ驚いた。この話はまたあとで。

写真(AROUND THE HOTEL) リンク削除

 この次は、ホテルから歩いて5分のところにあるアンネの隠れ家に行った時のことを聞いてね。

(Lie)

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