デタラメ昔話
◆目次◆
第1話 第2話
第1話 桃太郎
昔々あるところに、じいさんとばあさんが住んでおったそうな。二人はとても仲良く暮らしておった。
ある時、じいさんは山に芝刈りに、ばあさんは川に洗濯にでかけました。
ばあさんが川で洗濯をしておると、川上から大きな桃がドンブラコ、ドンブラコと流れてきました。
「おお、大きな桃じゃ。あれを持って帰れば、さぞかしじいやも喜ぶじゃろう」
ばあさんはその桃を持って帰り、じいさんに見せました。
「これは見事な桃じゃ」
じいさんは目を細め、ふぅっと長く息をつくと、ある事に気がつきました。
「ばあさんや、長嶋茂雄のサインが書いておるわい」
「おお、まことじゃ。これを売れば、銭こがいっぱい取れるわい」
お金がだ〜い好きな二人は、迷わずYahoo オークションに出そうとした。
「ちょっと待て!!」
桃からモーターの電動音がしたかと思うと、桃がウィーンと開きました。
「桃太郎といえば、ここで『桃を切ろうとしたら、桃から男の子が出てきた』だろう?違うだろうがよ!」
桃太郎はこうしてこの家の息子となりました。とても小食であったが、どうにか成長していきました。
桃太郎はとても働き者であったそうな。細くてひ弱な体で汗だくで働き、じいさんとばあさんをた〜んと助けました。
さて、桃太郎が18歳になった頃のこと。鬼ケ島というところに住む鬼が、ひどい悪行を繰り返しておった。村を荒らしたり、子供をさらったりするので、人々は困り果てていたのです。
そんな噂を聞いた桃太郎は、ある日、じいさんとばあさんの前に座って言いました。
「じいさん、ばあさん。俺は、これから鬼ケ島へ鬼退治に行くことにする」
二人はびっくら仰天。それもそのはず、桃太郎はとても非力で脆弱な体で、鬼どころか村の女の子にもはっ倒されるほどの弱さでしたから、無理もありません。
「桃太郎、一体どうしたのじゃ?おまえが鬼に勝てるわけがなかろう?」
「そうじゃ。おまえが勝てる確率なんて、一般人がボブサップに素手で立ち向かっていって勝てる確率よりも遙かに低いんじゃよ?」
「じいさま、ばあさま、わしに秘策があるのじゃ。任せてくれ」
じいさまとばあさまは呆れかえって、桃太郎が鬼ヶ島へ鬼退治に行くのを止めませんでした。
桃太郎は翌日の朝、鬼ヶ島へと出発しました。途中のコンビニできび団子を買いました。
しばらく行くと、犬がやってきました。
「桃太郎さん、桃太郎さん。どこへ行くのですか?」
「赤の他人のあんたが、何で俺の名前を知ってるんだ?」
「質問に答えてくれ」
「鬼ケ島へ、鬼退治に行くんだ」
「お腰に下げたものは何ですか?」
「これか。これはコンビニで買った賞味期限切れのきびだんごだ」
「捨てろよ、そんなもの」
「うるさい。おまえはこれが欲しいと言えばいいんだ」
「別に欲しくはないが、貰っといてやる」犬はきび団子を受け取った。帰ろうとすると、
「おい、犬。何でそのまま帰るんだ。おまえは俺についてくるんだ」
かくして犬は、強制的に連れて行かれた。
桃太郎と犬の主従がしばらく歩いていくと、今度は猿が近づいてきました。
「桃太郎さん、桃太郎さん。どこへ行くのですか?」
「赤の他人のあんたが、何で俺の名前を知ってるんだ?」
「質問に答えてくれ」
「鬼ケ島へ、鬼退治に行くんだ」
「そうか、がんばってこい」
「おい!違うだろ!おまえはこのきび団子と引き替えに、俺についてくるんだ」
「僕は甘いものは嫌いだ」
「何でもいいからついてこい」
かくして猿も強制的に連れて行かれました。
犬と猿を連れてしばらく行くと、今度はきじが飛んできました。
「おい桃太郎、どこ行くんじゃ?」
「夕べおまえにE-mailで知らせておいたはずだが?」
「夕べはPCつけなかったんだ」
「そうか。俺たちは鬼ケ島へ、鬼退治に行くんだ」
「鬼ヶ島って、可愛い女の子がいっぱい居るんだって?ほんとはナンパに行くんだろう?」
「違うって」
「俺も混ぜてくれ」
「動機が不純だが、ストーリー上おまえも連れて行く」
こうして、きじは大喜びでついて行った。
鬼ケ島に渡ると、恐ろしげな鬼の城がありました。大きな鉄の門はしっかりと閉められています。そこで、きじが中に飛んで入り、門を開けようとしました。
すると中から鬼の声がして、
「おお、そんな事をしなくてもいいぞ。こちとら準備万端で待っておった」
門は何故か電動式であった。ウィーンと開くと、中には鬼が金棒を持って立っている。
「何で俺たちが来る事を知っていたんじゃ?」
「夕べおまえのブログに書いてあるのを読んだのじゃ」
「ぬうう。それでは早速決闘に入ろう」
「待て」
鬼はストップをかけると、犬と猿ときじを買収し始めた。
「犬よ、おまえにはニッポン放送の株500株をタダでやる。フジテレビかライブドアに買ってもらえ」
「ありがとう。おまえの側に寝返るよ」
「猿よ。大塚愛の全国ツアーの最前列のチケットをプレゼントするぞ」
「おお、俺が愛ちゃんの大ファンなのを知ってるな。おまえの側に寝返るよ」
「きじよ、おまえには愛知万博のフリーパスをやる」
「ありがとう。おまえの側に寝返るよ」
かくしてみんなに寝返られた桃太郎は、みんなにボコボコにやられて敗れたそうな。めでたし、めでたし。
第2話 いっすんぼうし
昔或る村に、子供に恵まれない夫婦が居ました。夫婦は毎日神様にお願いしていました。
「どうか子供をお授け下さい。親指ほどの小さい子でもいいですから」
すると、ある日の事です。二人の願いが叶って、赤ちゃんを授かりました。でも本当に、親指ほどの小さな子でした。しかも何故か、金正日そっくりでした。生まれたときからカーキ色の作業着を着用し、ふんぞり返って貫禄がありました。
こんな子供が生まれてしまった事に夫婦は合点がいきませんでしたが、あかちゃんに「ミニ金正日」と名付け、顔を見ただけでぶん殴ってやりたい衝動をこらえながら大切に?育てたとさ。
そうしてある日の事。ミニ金正日は両親に言いました。
「私はこれから都へ行って参ります。必ず立派になってかえって参ります」
両親にお椀と箸と縫い針を準備して貰いました。縫い針には秘密兵器が仕込んでありました。
都へ行くには、大きな川を下っていかなければなりません。
「体に気を付けるんだぞ」
「危ない事はしないでね」
「大丈夫です。私のする事はいつも危ない事ばかりです」
フォローになっていませんでした…。
ミニ金正日は両親に見送られ、出発しました。お椀の船に乗って、都を目指し、力一杯お箸の櫂をこいでいきます。手製の北朝鮮国旗と労働党旗をはためかせながら。
何日もかかって、ミニ金正日はやっと都に着きました。
「おお〜、ここか。ニホンザルどもの首都もどき・トーキョーは」
ミニ金正日が歩いていきますと、やがて立派なお屋敷が現れました。
「おたのみもーす!」
ミニ金正日は玄関に立つと力一杯叫びました。するとだいじん…ではなく、受付のお姉さんが
「あら、誰もいないのに??」
ミニ金正日は堂々と言いました。
「ここです、ここにおります。私はミニ金正日と申します。どうかこのお屋敷で働かせてください」
ミニ金正日の存在にやっと気づいた受付嬢は言いました。
「アポのない方はご遠慮いただいております」
「アポだとう?『いっすんぼうし』の元の話と違うじゃないか」
「既にかなり違っている気がいたしますが」
「だいたいオレ様にアポなど必要あるかっ」
「アポのない方はご遠慮いただいております」
ミニ金正日は相手にしてもらえず、あげくは警備員につまみ出されてしまいました。
追い出された金正日は考え、一計を思いつきました。屋敷の裏側に回ると、窓の向こうにあどけない姫が見えました。見るからに世間知らずそうでありました。警備の交代のタイミングを狙い、姫の部屋に近づき、姫に話しかけました。
「きゃっ!」
「しーっ、静かに」
「あなたはだーれ?」
「金正日と申すものだよ」
「キムジョンイル? 工藤静香の夫かしら」
「それはキムタクだ」
「韓国の漬け物?」
「それはキムチだ」
「森タワー38階の男は?」
「キムチ悪いよ」
どうにも要領を得ない世間知らず?娘に”地上の楽園”の話をして籠絡する事に成功しました。
あるひのこと。お屋敷のお嬢はミニ金正日を連れてお寺参りに出かけました。
「姫!どんな悪者が出てきても、私が姫をお守り申し上げます」
「ほほほ!それは頼もしい事。宜しくね、ミニ金正日」
二人は楽しく外出しました。ところがその帰り道、それはそれは恐ろしい鬼が現れ、姫をさらおうと襲いかかってきました。ミニ金正日は鬼の前に飛び出すと、
「姫に何をする!」と針の刀を抜いて勇敢に鬼に立ち向かっていきました。鬼は足元のミニ金正日に気づくと、
「なんじゃ、おまえは。小さいくせに、何を生意気な」
そういうと鬼は、ミニ金正日をつまみ上げ、一口で飲み込んでしまいました。
鬼に飲み込まれたミニ金正日。鬼の胃袋の中で不敵に笑いました。
「ふふふ。この刀は核武装しているのだ。ニホンザルどもに思い知らせてやるわ」
ミニ金正日は核の自爆ボタンを押しました。
すさまじい爆発音とともに、東京が核爆発に飲み込まれ、上空には巨大なキノコ雲があがりました。関東一帯はすさまじい核汚染の為にその後百年は誰も住めないゴーストタウンとなりましたとさ。
めでたし、めでたし?
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