ブリ語入門

2004.11.07  


 

1. ブリッジのオークション

 
 

コントラクトブリッジでは,コントラクトをオークションで決めます.オークションでは,各プレイヤーが順番に「コール」して,コントラクトを競りますが,個人としてではなく,ペアで競ることが,普通のオークションと違います.


 
 

1.1. コール

 
 

オークションのセリに使える単語は次表の15語です.


1.1-1
  @1から7迄の数詞、
  A切札の種類 (Club, Diamond, Heart, Spade, NoTrump)
  Bパス、ダブル、リダブル

[数詞 + 種類] を「ビッド」といい,全部で35あります.ビッド,パス,ダブル,リダブルをコールといいます.
ビッドにはランクがあり,下図のように,上位ほどランクが高くなります.「ビッド」を使うときは,直前のビッドよりランクが高いビッドを使わなければなりません.
1のあとでは,1は使えません。ダイヤモンドを示すなら,23でなければなりません。

オークションでは,これら38の「コール」以外の用語は使えません.

これらのコールのオークション上での意思表示は下表のようになります.


コール オークションの意味
1.1-2
7NT 切札なしで,13トリックとる.
7 スペードを切札にして,13トリックとる.
7 ハートを切札にして,13トリックとる.
7 ダイヤモンドを切札にして,13トリックとる.
7 クラブを切札にして,13トリックとる.
6NT 切札なしで,12トリックとる.
6 スペードを切札にして,12トリックとる.
6 ハートを切札にして,12トリックとる.
--- ---
--- ---
2 ダイヤモンドを切札にして,8トリックとる.
2 クラブを切札にして,8トリックとる.
1NT 切札なしで,7トリックとる.
1 スペードを切札にして,7トリックとる.
1 ハートを切札にして,7トリックとる.
1 ダイヤモンドを切札にして,7トリックとる.
1 クラブを切札にして,7トリックとる.


 
 

1.2. コントラクト

 
 

オークションはパスが3回続くと終了します.そして,最後のビッドがコントラクトになります.下図を参照してください.

図1.2-1
N E S W
1S / 2C /
2D / 2NT /
/ //    
 
図1.2-2
N E S W
1S / 2C /
3C / / X
/ / //  
コントラクト=2NT/S コントラクト=3CX/S

 
 

2. ハンド情報

 
 

ビッドはコントラクトを買うことを約束します.例えば,1は、「スペードを切札にして,7トリックとる」ことを約束し,メークすればスコアをもらえますが,作れなければ,ペナルテイをとられます.
従って,1をビッドするには、スペードの枚数が多く,ハンドが強いことが必要です.
また,セリはペアが協同して行うので,パートナーのコールの裏づけになるハンド情報が分かれば,効率の良いオークションができます.
このため,コールにオークション本来の意味のほかに,ハンド情報を持たせることが考え出されました.


 
 

2.1.ポイント

 
 

トリックをとるには,「フォローイング・スート」のルールから,絵札が多く,長いスートのあるハンドが有利です.
「ハンドの強さ」を評価するため,現在,絵札を絵札点(HCP)で,長いスートを分布点(LP)で換算し,ポイントで表します.(表2.1.1


表2.1-1 ポイント
絵札点 分布点
A = 4 ; K = 3 ; Q = 2 ; J = 1 5枚目から+1/枚[ポイント].
:5枚=1; 6枚=2; 7枚=3;

したがって,ハンドの強さは絵札点と分布点の合計で表わされます.(表2.1.2)

表2.1-2 総合ポイント
ポイント(TP)=絵札点(HCP)+分布点(LP)

 
 

2.2. 分布

 
 

スートは各々13枚ありますから,平均は13/4=3.25枚となります.
したがって,切札が8枚あれば,オポーネントより優位になります.

ブリッジでは,ダブルトンが1つ以内,最長スートが5枚以内のハンドをバランスハンド,これ以外のものをアンバランスハンドといいます.
バランスハンドのパタンは表2.2-1のとおり,全体の出現率は約48%になります.

パタン 出現率(%)
4432 21.6
5332 15.5
4333 10.5

 
 

3.ハンド情報の割付け

 
 

ビッドに,「ハンドの強さ」と「スートの枚数」に関する情報も持たせると,パートナー間でオークションを効率よく行うことができます.

コントラクトブリッジでは,パートナー間で最適のコントラクトを競り落とさないと良いスコアは得られません.3Sをビッドして4メークしても,ゲームボーナスは出ません.4Sをビッドして,4メークすれば,ゲームボーナスがでます.

したがって,ハンド情報の伝達方式の良否がゲームの勝敗を左右することになります.

一般に,ポイントは「範囲」で,スートの長さはそのスートの「保証枚数」で割り付けます.

これをナチュラル・ビッドといいます. 保証枚数の情報を含まないビッドをアーティフィシャル・ビッドといいます.


 
 

3.1. ポイント

 
 

ハンドをポイントで評価すると、その値は0からい30くらいになります。しかし,使えるビッドは35しかありませんから、ビッド・レベルにポイントを「範囲」で,最低2,最大10くらいに,割りつけします.
ポイントの範囲が狭いほど,正確度は増しますが,ビッドの種類が限られているので,割付けに工夫がいります.
ポイント・レンジが2乃至4のビッドを確定ビッド,それ以外のものを不確定ビッドと呼びます.


 
 

3.2. 枚数

 
 

ビッドの種類で,そのスートの保証枚数を表します. 1レベルでオープンする時の保証枚数は表3.2-1のとおりです。

1とオープンすれば、ハートは5枚以上です。1のオープンは3枚保証ですが,95%は4枚と考えてよいでしょう。


3.2-1 保証枚数
オープン 1 1 1 1 NT
3枚 3枚 5枚 5枚 最短2枚、最長5枚

1のスート・オープンに対し、新スートのレスポンスは普通4枚を保証します。しかし、1 : 2 の場合は5枚を保証することになっています。


 
 

3.3. 3分法

 
 

ポイントの範囲を効率よく伝えるため、3分法がよく用いられます。
例えば、オープニングの場合,全体を3つのグループに分け,次のような割付けをします.


ポイント 12以下 13 - 21 22以上
ビッド 2,2,2
3,3,3,3
4,4,4,4
1,1,1,1
1NT(15-17)
2NT(20-21)
2
3NT(25-27)
グループ A B C

グループBのスートビッドの場合,ポイント・レンジは9です.この値を聞いても,パートナーは結論を出せません.
1NTは3ポイント巾,2NTは2ポイント巾になっています.これを聞いたパートナーは自分達のポイントを正確に把握できます.
Aグループもポイントレンジは10以上ですが,これらのビッドは枚数情報が正確です.Cグループの2はポイントレンジが不定ですが,これは特殊ビッドで,ゲームコントラクトまでビッドを続ける約束になっています.


 
 

3.3.1. 1レベルのスートオープン

 
 

1レベルのスートでオープンした場合,ポイントレンジは9になりますが,これも3分法を使って「あいまいさ」を減らします.

これはあらかじめこのレンジを,Min, Med, Max の3グループ に分けておきます.オープンするとき,これらを1つのビッドで表し,次のビッドで,どのグループに属するかを示すようにします.

例えば,ポイントが17で,アンバランスなハンドなら,最初,1レベルのスートでオープンして,次のリビッドで,Medの範囲にあることを示すようにします.この手法によって,ポイントを3ポイント巾で示すことができます.(表3.3.1-1


3.3.1-1
ポイント 13 - 21 ビッド例
区分 Min
(13-15)
Med
(16-18)
Max
(19-21)
 
1回目(オープン) 13-21 1
2回目(リビッド)   16-18   2

プのポイント割り当ては均等にする必要はありません。重要な情報は幅狭く、重要でなければ幅を広くウエイトをつけることもあります.

このポイントの分け方はビッデング方式で異なります。 ACBLの「クラブ篇」では、オープンする時のポイントレンジを,12以下、13〜21、22以上3つに分割するのは同じですが,Min13-16Med17-18に設定しています


 
 

3.4. ビッデング方式

 
 

この情報割付けの方法によって,いろいろなビッデング方式ができます.
オークションでは,コールでセリを行うと同時に,このビッデング方式による情報交換を行なっているわけです.即ち,会話をしているわけで,ビッデング方式はいわゆる人工言語です.ここでは,これを「ブリッジ語」(清岡センセイに倣って,「ブリ語」と略します)と呼ぶことにします.
現在、よく使われているビッデング方式は下表のとおりです.


方式 説明
スタンダードアメリカン 北米で発生した方式.
SAYC ACBL推奨の5枚メジャー方式.
2/1 最新の5枚メジャー方式.
プレシジョン ウエンの提唱した方式.
エーコール 英国で発生した方式.

 
 

4.情報交換の基本

 
 

オークションでは,「ブリ語」で,「ポイント」と「分布」の情報を交換しながら,自分達に

@どのくらいのポイントがあるか,
A8枚以上のスートがあるか
を探します.
そして,結論をだせる情報を受け取ったプレイヤーがコントラクトを決めます.即ち,正確な情報を受けた方がコントラクト決定の主導権をとります.
これをモデルで示したものが図 4.1 です.
プレイヤーはオークションで情報を交換しながら,自分のハンドとキーナンバーでポイントとスートのフィット状態をチェックして,自分達が買うコントラクトを求め,オークションを続けます.
また,必要に応じて,メッセージをだして,オークションの継続,停止あるいは判断委譲をします.

図 4.1
(自分)
ハンド情報
(メッセージ)
------->
(オークション)
<-------
(パートナー)
ハンド情報
(メッセージ)
(参 照)
キイナンバー>

 
 

4.1.キイナンバー

 
 

「ハンドの強さ」を「ポイント」で表わした場合,ペア間で25〜26ポイントあれば、バランスハンドでは3NTできることが経験的に知られています。また、スートコントラクトなら,切札が8枚以上あれば、同じポイントで1トリック多く取れることも知られています。
このようなコントラクトを買うために必要な情報をキイナンバーといいます。
プレイヤーはオ−クションで得られる情報から,これらのキイナンバーで自分達のポイント,スートのフィット状態をチェックしながら,コントラクト決定に進んでいきます.

  表 4.1.1 キイナンバー

  • 切札は8枚必要である。
  • 3NT,4,4 を作るには25ポイント必要である。
  • 5,5 を作るには29ポイント必要である。
  • スモールスラムを作るには33ポイント必要である。
  • グランドスラムを作るには37ポイント必要である。

 
 

4.3. 確定ビッドと不確定ビッド

 
 

ビッドのポイント情報は「範囲」で示しますが,その巾が小さいほど,パートナーはコントラクト決定の判断作業が容易になります.このようなビッドを「確定ビッド」といいます.
これとは反対に,例えば,1レベルのスートオープンのようにポイントの巾が広いビッドを不確定ビッドといいます.


 
 

4.4. フォーシングビッド

 
 

不定ビッドを受け取ったパートナーは自分達のポイントの範囲が広く,コントラクトに関し,結論が下せません.
例えば,自分に10ポインある場合,パートナーが1とオープンしたとします.ポイント合計は23から31となり,スラムのないことは分かりますが,自分達のポイントがパートスコア・ゾーンにあるのかゲーム・ゾーンにあるのかが,この時点では不明です.
パートナーにもう1回ビッドしてもらい,あいまいさを減らす必要があります.3分法の項で説明したように,リビッドでポイントレンジがMinMed か Max かを示してもらえば,判断が容易になります.
このような時,パートナーにビッドを強制するビッドをフォーシングビッドといいます.

表4.4-1 フォーシングビッド
1回フォーシング(F1) 1回ビッドを続ける.
ゲームフォーシング(FG) ゲームコントラクトまでビッドを続ける.

フォーシングは「コール自体」あるいは「コールのオークションでの位置」でその機能を持ち,ビッデング方式が規定します.

この種の情報操作を「メッセージ」といいます.メッセージはこの他に,「インビテーション」,「サインオフ」があります.

表4.4-2 インビテーションとサインオフ
種類 意味
インビテーション 示したビッド範囲の上方ならレイズし、下方ならパスしなさい。
サインオフ こう決めました。(拘束力なし)。

 
 
 

4.5. コンベンション

 
 

オークションで,エースの枚数を聞きたいときがあります.また,4枚メジャーの有無を知りたいことがあります.

このような場合,特定のコールをその用途に割り当てて,所定の情報を問い合わせることができます.この種のコールをコンベンションといいます.
ビッドを使う場合は,数詞やデノミネーションには本来の意味はありません.


図4.5-1 ステイマン
N E S W
1NT / 2C  
       
図4.5-2 ブラックウッド
N E S W  
1 / 3 /  
4NT        

4.5-12Nに4枚メジャーを持っているかを尋ねるコンベンションで,「クラブで8トリックとる」といっているのではありません.
4.5-24NTSにエースを何枚持っているかを尋ねるコンベンションです.ノートランプでプレイする積りはありません.


 
 

4.6. キャプテン

 
 

ハンド情報の交換はどこまで続けたらよいでしょうか.

コールのポイントが2〜4の幅以下になれば,この情報を受け取った人は、自分のハンドのポイントから、自分達がパートスコアの領域にいるのか、ゲーム領域あるいはスラム領域にいるのかの見当がつきます.即ち、コントラクトを決定する立場になります。

従って,最初にこの種の情報を受け取ったプレイヤーが「キャプテン」となって,以後のコントラクト決定の指揮をとります.

 しかし、スート情報が不足だとかポイント範囲が境界領域にあるとかですぐ決定できないこともあります。

この場合は、フォーシング・ビッドで更に情報をとるとか、インビテーション・ビッドでパートナーに決めさせることができます。

ノートランプ、ウイーク2ビッド、3レベル以上のスートのオープンはポイント、スートの長さ、ルーザーの情報が明確なので、レスポンダーがキャプテンになります.

2のオープンの場合はオプナーがキャプテンになります。

1のスートオープンの場合は、普通、レスポンダーがキャプテンになることが多いのですが、途中の経緯でオプナーがなることもあります。


 
 
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