プレイ計画

2004/01/20  

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プレイする前に

ミニブリッジでは、ダミーがカードを開いたらプレイ計画を検討し、コントラクトを決めます。そして、オポーネントがオープニングリードをしたら、計画を再チェックします。
計画というと大げさなと思うかもしれませんが、難しいことではありません。
目的のトリック数と自分達がとれるトリックとの差をチェックして、その差を解消する方法を考え、実行することです。

ゲームですから、勝つためには計画が必要です。当てずっぽうにプレイしては勝てるゲームも負けてしまいます。

エキスパートはダミーのハンドを一目見て、すぐプレイしますが、やはりプレイ計画をたてているのです。慣れているから、その時間が短いだけです。

初心者はプレイの前に時間をかけると他のプレイヤーに悪いと思うかも知れません。しかし、毎回、すこしづつプレイに時間をかけるより最初に少し時間をかけて、サッサとプレイしたほうがスマートです。慣れてくると、だんだん早くなります。

では、ノートランプ・コントラクでのプレイ計画の立て方から始めましょう。


 

ノートランプのプレイ計画

ブリッジ・プレイも普通の仕事と同じで、「計画−実行−検討」のプロセスをとったほうが上達が早いと思います。

プレイ計画の手順は次表のようになります。

(1) トップトリックを数える。
(2) 必要なトリック数との差を数える。
(3) 差があれば、トリックを補充できるスーツを探し、その手法を検討・決定する。
(4) 手順を間違えないように、計画を実行する。

■ トップトリックの数え方

まず、トップトリックの数え方を覚えましょう。
トップトリック(Top Tricks)とは、リード権をとったら、すぐとれるトリックのことです。シェア・トリック(Sure Tricks)ともいいます。

AのないKはトップトリックではありません。フィネスやプロモーションによる可能性は無視します。

例をみてみましょう。

ダミー K96 K1096 J109 QJ10
デクレアラー A54 QJ7 AQ3 AK32
トップトリック 2 0 1 4

このデールでは、スペードはすぐA,Kととることができ、クラブも、 Q,J,A,Kと取ることができます。トップトリックはスペードが2個、クラブが4個になります。
ハートはAを追いだせば3トリック取れますが、トップトリックは0と勘定します。
ダイヤモンドもフィネスが成功すれば3トリックとれますが、トップトリックは1です。

このように、トップトリックは各スートですぐとれるトリックのことです。

もう一つ練習してみましょう。

ダミー KQ6 A109 876 J1063
デクレアラー A54 QJ7 A93 KQ54
トップトリック 3 1 1 0

スペードはA,K,Qの3トリック、ハートとダイヤモンドはAの1トリックだけ、クラブはAを追い出さなければK以下が勝てないので、トップトリックは0です。


□ 練習問題

次のハンドのトップトリックはいくつですか。番号にさわれば、答がでます。
(1) (2) (3) (4)
K8
AJ109
1086
AK65
A94
KQ6
972
AJ106
AJ7
K6
972
AKJ105
K97
A876
K72
A54
A97
876
QJ972
QJ
K86
A85
AK84
543
KQ6
10875
A104
964
A82
QJ10
A106
K1086

 

■トリック補充の注意点

ノートランプはレースだといわれます。

例えばコントラクトが3NTの場合、こちらは9トリックを、オポーネントは5トリックを、先にとったほうが勝ちという競争です。

トップトリックが目標のトリック以上なら、すぐトリックを取ります。ここで注意するのは、トリックをとる順序をまちがえないことだけです。

トップトリックが目標値に足りない場合、プロモーションやフィネスなどのトリックを増やす手法を使います。

これらの手法を使うとき、リード権がオポーネントに移ることがあります。プロモーションやフィネスが失敗した時、リード権は確実にオポーネントに移ります。これに対し、つぎのような対策が必要です。

対策 説明
カード分布推定 オポーネントのトリック能力計算
ホールドアップ オポーネントのリードバック防止
ダッキング エントリー確保

■カード分布推定

オポーネントがリードするカードはでたらめに決めているのではありません。パートナー間の取り決めにしたがってリードし、パートナーにそのスートの情報を知らせています。

ノートランプでは、オポーネントはオープニングリードに自分達の強いスートを選びます。強いスートがなければ安全なスートからリードするでしょう。
リードされたカードの情報は下表のとおりです。

リードされたカード その情報
低いスポットカード フォースベストの可能性大。
2なら、オリジナルの枚数は4。
高いスポットカード トップ・オブ・ナッシングの可能性大。
ルール・オブ・エレブンでチェック。
絵札 シーケンスからのリード。

(1) 次のデールでトップトリックは6(S=1; H=0; D=4; C=1;)です。足りない分はハートのプロモーションで3トリック補充できます。

3NT/W. OL=2
A93
K32
KJ64
A104
876
QJ104
AQ2
QJ9

オープニングリードは2です。フォースベストでしょう。Nのスペードは4枚、Sは3枚と推定します。
したがって、リード権を渡しても、スペードでとられるのは3トリックだけです。すぐ、Aでとり、Kをプレイします。


(2) 次のデールはトップトリックが5(S=1; H=1; D=0; C=3;)です。ダイヤモンドのプロモーションで4トリック補充できます。

3NT/W. OL=2
Q9
A32
K84
KQ1042
A76
J54
QJ1052
A9

SKでとっても、Qが生きるからとダミーからローをプレイしそうです。
しかし、全体を見てみましょう。 SKでとり、ハートを攻撃したらどうなるか。ダイヤモンドのプロモーションのときに、ハートのストッパーがありません。

オープニングリードは2ですから、Nのスペードは4枚でしょう。
リード権を渡しても、スペードでとられるのは3トリックだけです。
したがって、ダミーのAでとり、ハートのストッパーのある内に、すぐオポーネントのAの追い出しにかかります。


(3) 次のデールでトップトリックは7(S=4; H=1; D=1; C=1;)です。

3NT/W. OL=K
A103
A102
QJ6
AQ109
KQJ5
96
A1087
J32

マイナースーツでのフィネスでトリックをふやすより方法がありません。
オポーネントのハートは8枚です。4−4なら、どちらでフィネスしても支障ありません。5−3なら、Sにリード権を渡した方が無難です。したがって、ダイヤモンドでのフィネスを計画します。
2回ホールドアップし、3回目にAでとり、Qをリードします。


(4) 次のデールでトップトリックは8(S=0; H=2; D=2; C=4;)です。足りない分はダイヤモンドのフィネスで補充するしかありません。

3NT/W. OL=Q
K32
AK3
KJ1064
A4
976
974
A72
KQJ9

オーポーネントのスペードは7枚です。4−3の分れなら心配することはありません。問題は5−2の分れです。
Qは、普通、QJ10からのリードでしょうが、AQJからのリードも考えられます。従って、2回目の時にKで取ります。そして、Jをリードします。Sのスペードが3枚なら、Nは4枚ですから、スペードで取られるのは3トリックだけです。2枚なら、リードバックできません。


■ホールドアップ

ホールドアップはオポーネント間の通信を遮断する手法です。
オポ−ネントが攻めてきたスートを直ぐ取らずに、2回か、3回目にとり、オープニングリーダーのパートナーがリードバックできないようにします。

この手法は、ストッパーがAだけとか、AJx,KQxのような場合は使いますが、状況によっては、ダブルストッパーの時にも使います。


□ ワン・ストッパーの場合

(1) 次のデールはトップトリックが7(S=1; H=2; D=1; C=3;)です。

3NT/W. OL=K
A92
A7
10964
KQ43
876
K954
AQJ2
A8

スペードのストッパーはAだけです。足りないトリックはダイヤモンドのフィネスで補充するしかありません。
失敗して、Sにスペードを返されるとスペードで走られる可能性があります。オポーネントのスペードは7枚ですから、7−0,6−1.5−2,4−3の分かれ方があります。出現頻度の高いのは5−2と4−3です。

1回ダックして、2回目に勝てば、ダイヤモンドのフィネスに失敗しても、オポーネントは4トリックしかとれません。
5−2の分れなら、Sのスペードはなくなります。4−3ならSに1枚残っても、Nはスペードで3トリックしかとれません。

1回目にとれば、5−2の分れなら、Sはスペードを返して、スペードで4トリック、ダイヤモンドで1トリックとられ、ダウンします。


プレイのヒント:ルールー・オブ・セブン

7−(自分達の枚数)=ホールドアップする回数

 ストッパーがAの1枚の時、ホールドアップする回数を示すガイドです。 例えば、自分が3、ダミーが2なら、7−(3+2)=2。2回ホールドアップします。


□ 2ストッパーの場合

(2) 次のデールはクラブのプロモーションでトリックを補充するには2回リード権をオポーネントに渡さなければなりません。
このような場合は、オープニングリードしたスートにストッパーが2つあってもホールドアップします。

3NT/W. OL=6
A92
AK7
K1096
Q43
K75
954
A2
J10982

トップトリックは6(S=2; H=2; D=2; C=0;)で、3個不足です。クラブをエスタブリッシュするのに、AKを追出さねばなりません。その際、Nがリード権を取ることも考えられます。

スペードが5−2の分れで、クラブのアナーがNに1つあると仮定します。

1回ホールドアップして2トリック目に勝ち、クラブをリードします。 Sがリード権をとってもリードバックできません。Nがリード権を取っても第2のストッパーがあります。
クラブのA,Kが両方ともNにあれば仕方がありません。しかし、その確率は25%です。


(3) 次のデールは2つのスーツでトリックを補充する例です。

3NT/W. OL=7
K92
A53
KQ4
QJ107
A103
K92
J92
K953

トップトリックは4(S=2; H=2; D=0; C=0;)です。5つ補充しなければなりません。 ダイヤモンドで2つ、クラブで3つ補充できますが、リード権を2回渡すことになります。

オポーネントのハートは7枚で、4−3の分かれなら問題はありません。5−2の分れで、NにどちらかのAがあると仮定します。
1回目はホールドアップし、2回目に勝ちます。それから、プロモーションにかかります。
短いほうにAがあっても、リードバックができません。また、長い方にAがあっても、ハートのストッパーはまだ残っています。

この場合も、両方のANにあれば仕方がありません。 

望みを捨てないでトライしましょう。


■エントリー

味方同士でリード権を渡せるカードのことをエントリーといいます。
味方のトップレスの長いスーツはプロモーションやエスタブリッシュでウイナーを作ることができます。しかし、オポーネントがホールドアップするとそのスート全部を使えないことが生じます。残りのカードをウイナーにするためには、他のスートにエントリーが必要です。

また、フィネスを複数回実施するときも、エントリーが必要になります。

エントリーを考えてプレイしましょう。


□長いスートのあるハンドにハイカードを保存する

(1) 下図で、トップトリックは6(S=2; H=2; D=0; C=2;)です。3トリック不足です。

3NT/W. OL=Q
AK2
AK92
74
K863
943
43
KQJ102
A52

クラブはデクレアラーで勝ち、ダミーにエントリーを残します。直ぐダイヤモンドでプロモーションします。オポーネントが3トリック目に勝っても、Aでダミーに入り、残りのダイヤモンドをとることができます。

 

□オーバーテイク

(2) 下図で、トップトリックは8(S=2; H=2; D=1; C=3;)です。1トリック不足です。

3NT/W. OL=Q
AK52
AQ
A1074
AKQ
9
K8543
863
J762

クラブのJを活用するにはどうしますか。クラブのA,K,Qをキャッシュした後、QKでとれば、Jを使えます。

 

 

□ダッキング

(3) 下図で、トップトリックは7(S=1; H=2; D=2; C=2;)です。2トリック不足です。

3NT/W. OL=Q
AQ2
AK82
AK2
853
974
543
73
AK762

トリックを補充できるのはクラブとスペードです。
オポーネントのクラブの分れが3−2なら、A,Kとキャッシュしても、Qが残ります。ダミーにエントリーが無いので、残りのクラブが使えません。

この場合は、リード権を渡してもKがあるのでAで勝ち、1回目のクラブを負けます。3−2の分れは、2−1の分れになります。
あとで、AKとキャシュすれば、クラブが全部ウイナーになります。この手法をダッキングといいます。


□フィネス

(4) フィネスでは、リード権を維持するようにカードを選べば、エントリーを節約できます。

3NT/W. OL=2
AK2
AQJ75
64
K94
876
1092
KQ92
A82

トップトリックは5(S=2; H=1; D=0; C=2;)です。ハートのフィネスでトリックを補充します。クラブでダミーに渡り、10をリードし、フィネスが成功すれば引き続き9をリードします。

2をリードしたら、どうなりますか。


 

■その他

この他にも、プレイ計画で有効なテクニックがあります。二三紹介しておきましょう。


□危険なオポーネント

トリックを増やす時、危険なオポーネントにリード権を渡さないよう計画をたてましょう。

(1) 次のデールでトップトリックは7(S=2; H=0; D=3; C=2;)です。

3NT/W. OL=3
A62
KQ9
AQJ
K1095
KJ73
54
K109
AJ82

SからJがでたのでKでとります。これで、あと1つトリックを補充すればよいことになりました。

足りないトリックはスペードかクラブのフィネスで補充できます。

この場合、危険なオポーネントはSです。フィネスが失敗して、Sがハートをリードすると、Qはストッパーになりません。

したがって、フィネスするスートはクラブにします。ダミーから8をリードしてQに対するフィネスを行います。失敗しても、Qは依然としてストッパーです。

このプレイをアボイダンス・プレイ(Avoidance Play)といいます。


(2) 次のデールはトップトリックが8(S=1; H=2; D=3; C=2;)です。

3NT/W. OL=K
A62
AK9
Q93
K1095
873
854
AK6
AJ82

トリックを補充できるのはクラブのフィネスしかありません。これは2ウエー・フィネスで、どちらからもフィネスできます。この場合、危険なオポーネントはNです。フィネスが失敗すると、スペードで走られる可能性があります。

スペードを1回ホールドアップして2回目に勝ち、ハンドからクラブのローをリードして、Qに対しフィネスをします。


□オポーネントにリードさせる時

(3) 次のデールはトップトリックが8(S=2; H=1; D=1; C=4;)です。

3NT/W. OL=2
AK53
AQ9
AQ9
KJ9
864
854
863
AQ82

1トリック足りません。ハートかダイヤモンドでQが1つとれればコントラクトはメークします。フィネスが考えられますが、成功確率は50%です。

確実な方法があります。Nのスペードは4枚です。すぐAで勝ち、クラブをキャッシュしてからKで戻り、スペードでNにリード権を渡します。

Nはスペードで2つ勝った後、ハートかダイヤモンドのAQへ打ち込みとなります。

これはスローインの初歩です。このように、オポーネントにリードさせるのも一つの方法です。


□アンブロッキング

(4) 次のデールはトップトリックはいくつでしょう。

3NT/W. OL=K
62
AQ9
AJ3
KQ98
A73
85
106
A76542

クラブで6トリックとれるし、楽勝と思って、すぐAでとろうとしていませんか。
ブリッジで大切なのは注意力です。
K,Q,Aと取って、そこでブロッキングに気がつきませんか。8のためクラブが走れません。

このデールはクラブの8を捨てればよいのです。どこで?
スペードを3回目にとり、その時に8を捨てます。

 

□モートン・フォーク

(5) これは一寸高級な手法です。2つのスーツでプロモーションが必要な時に使います。次のデールはトップトリックが5(S=2; H=3; D=0; C=0;)です。

3NT/W. OL=Q
  12  
A
AK9
QJ93
KJ953
K763
Q52
K1072
Q2

クラブとダイヤモンドのAを追い出せば、4トリックは確保できます。

Nに12HCPあるので、マイナースーツのAは両方ともNにあります。ハンドで勝ち、最初、クラブのローをリードします。NAで取れば、クラブで4トリック取れるので、Nはホールドアップします。

あと3トリックとればよいことになります。ダイヤモンドのプロモーションで3トリック確保できるので、こんどはダイヤモンドを攻めます。NAでとっても、コントラクトはメークします。



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