去年に続けて鳥友達と共にトカラ列島の島に遠征した。行く先は初体験の宝島。奄美大島からのフェリーはまだ暗い早朝5時に宝島に到着する。朝食後早速島内を2台の車に分乗して回るが鳥の姿は殆ど見られず、声も聞こえない。唯一タヒバリ類、アカガシラサギ、上空はるかを飛ぶノスリ、オオノスリを確認できた位であった。初日確認種数は39種、しかも殆ど車の中からの観察であった。未知なる島への大きな期待が失望に変わりかけた2日目の朝、朝食前の探鳥で宿の周辺を気の向くままに鳥が居そうな場所を歩いてみた。その場所はツバメが飛び回っているで、その中にたまに見かける小鳥を片っ端から双眼鏡で確認する。20mほど先の葦の穂先にとまった鳥を見て仰天した。つい先日八丈島でチャンスを逸したズグロチャキンチョウが眼前に居るではないか。信じられん! とにかくその姿をカメラに収めたのちさらに周辺を見渡す。テトラポットの上になにやら小さくてあまり色彩感のない鳥が居るが遠くてはっきり分からない。やがてその鳥は飛び立ち、眼前20m程の海藻の上に降りたので双眼鏡でのぞいてみて我が目を疑ったのである。独特の風貌、白くてハッキリしたアイリングとハッキリした腮。間違いない!ズアオかイワバホオジロだ。思わず一人ガッツポーズが出てしまった。ともあれ、朝食時間なので急いで宿へ帰り朝食の席で報告、食卓はにわかに活気にあふれたものとなり、そそくさと食事を終えると、宿からゆっくり歩いても10分くらいのそのポイントに向かったのである。超のつく珍鳥がタブルである。グループの全員がこれを確認し、カメラに収めることができたのだが、人間とは身勝手なもので、珍鳥が2種、しかし片方は超ド級の大珍鳥。こうなると「普通の珍鳥」であるズグロチャキンチョウはその存在を無視されてしまうに等しく、レンズはもっぱらイワバホオジロの方を追っている。それを妬んだわけでもなかろうがズグロチャキンチョウが何かとイワバホオジロに近づきたがり、その結果この2羽の珍鳥のツーショットがしばしば見られるのである。その極めつけのシーンが我々の眼前10mで演じられた。これである。なんということだろうか。午前中いっぱいこの豪華劇場を堪能したあとは、一旦珍鳥劇場を離れて、今度は徒歩で当たりをつけた場所を確認してみた。詳細は省略するがその結果はリストの通りである。その夜は宿に帰ってから皆で画像を検討、図鑑、ネットでの画像検索などにより最終的にイワバホオジロと確定したのであった。おそらく国内5例目ではなかろうか。最終日は前夜からの雨がやまないまま夜明けを迎えるが、まだ暗いうちから今まで全く聞こえなかった鳥の声を耳にするようになり朝の一回りでは島内のあちこちで新手の鳥たちが確認出来た。クロウタドリ、サンコウチョウ、ムクドリ3兄弟、そして珍鳥劇場でも新たにコホオアカなど。チラミではあるがオニカッコウらしい姿も報告されたのである。鳥の状況が大変化する中で我々は昼過ぎには島を離れねばならなかった。しかし情報により急遽同じトカラ列島の平島から駆け付けた鳥友のグループはこの日の午後のみのチャンスではあったのだがこの2種に加えて我々は見ることができなかったオガワコマドリをも見ることができたとのことである。
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