このところ雑事が多く、フィールドに出ることが出来ないでいたのだが、この間にナント梅雨が明けてしまった。今日は早朝からは無理としてもなんとか午前中から出動可能ということで、このところの強風をものともせずに出かけたのである。といってもそれ程までにしても行きたかった場所があるわけではなく、コアジサシの巣立った幼鳥が期待できる九十九里方面のパトロールということにした。どの海岸でも強風による砂粒の攻撃にさらされてしまい、戦意喪失気味だったのだが、たまたま干潮のピーク近くのタイミングで広く広がった渚にコアジサシに混じってかなり白っぽく見えるアジサシが降りてきた、遠目にも明るく見えるし双眼鏡で見るとかすかにピンクがかった腹部も確認できた。間違いない、久しぶりにベニアジサシに出会えたのだ。そばにもう1羽、アジサシが確認出来たがどうやら脚は赤いようだ。アカアシアジサシとベニアジサシの組み合わせ、以前はそう珍しいということでもなかったのだがこのところ何年も見ていなかったいわば懐かしい鳥達だ。飛ばれないように姿勢を低くして地を這うように吹き付ける砂と格闘しながら時間をかけて接近を試みた。アカアシアジサシは嘴も根本近くは赤みが残っているが前頭部はゴマシオになりかけておりすでに冬羽への換羽が始まっているように見える。広がった砂浜に寄せた波が引いたあとに僅かに残った水に青空が写って青い水の膜が出来る。ベニアジサシの姿がその明るい青に映えてとても美しい。暫くそんな様子を観察しているとベニアジサシは30分程でまた沖合に出て行ってしまった。周辺のコアジのコロニーでは巣立ったばかりのコアジサシの幼鳥が強風のなかを覚束ない様子で飛んでは降り、また低く飛んでは降り、時には波打ち際を行ったり来たりとまるで飛行訓練でもしているかのようだ。以前の様にアジサシの大きな群れの中に見られたのではなく、突然にアカアシアジサシとベニアジサシの2羽のみが現れたのであり、周辺はコアジサシのみであった。ベニアジサシが見えなくなったのを機に、例によって印旛沼経由で帰途に就いた。立ち寄った印旛沼、湖面は茶色に濁り、白波がたってまるで荒れる海面のよう。時折ヨシゴイが飛ぶが風にあおられてなかなかまっすぐは飛べない様子であった。強風のためか鳥の姿は少なくオオヨシキリの声だけが「見えてなくても居るんだよ」と存在を主張しているように感じた。
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