聖と初めて二人きりのクリスマス。

ちょっとドキドキ…って何かを期待しているわけじゃない…はず。

今日は私がお料理当番だから、聖が買出しに行ってくれた。

…と言っても私はサラダを作って、スープとパンを温めるだけ。

後は聖が買ってきてくれる食材待ちなのよね。

「どうせクリスチャンじゃないんだから、気分を味わえる程度で充分♪」

チキンにケーキとワインがあれば良いなんて言っていたけれど…まだ未成年だよ、私。

でも…遅いな?近くのスーパーに買出しに行っただけなのに、どうしたんだろう?



「おまたせ〜!!」

「お帰りなさい、遅かったね」

「いや〜、レジが混んでてね。それより…ほら丸ごとチキン!」

目の前に出された丸々したローストチキン…え?

「これ全部食べきれるの?」

「今日食べなくてもいいのよ。それに、ほら、明日はチキンサンドができるように食パンも」

なるほど…って、二人でまさか丸ごと買ってきてくれるとは思っていなかった。

「ほらほら、買ってきたんだから温めて並べてよ!!お腹すいた〜!」

はいはい、そんなにせかさないで下さいよ。



温めておいたガスオーブンにチキンを入れている間に他の事を準備。

今日は緑のマットにリース模様の入ったお皿を並べ、ワイングラスを置いた。

テーブルの真中には金のキャンドルスタンドに赤のキャンドルが。

やっぱり、せっかくのクリスマスだし、雰囲気は大切にしたいものね。

あ、聖が部屋から出てきた。

「なにをしてたの?」

「いいこと♪」

うっ、不安…親父の笑みが浮かんでる。

こんな時の聖って何か企んでいるのよね・・・。

触れないで無視しよっと、うん、それがいい。



チキンを大皿に取り出し、中央に置く。

聖がスパークリングワインを開けてくれている間に、

何とか、チキンの足元にナイフを入れる。ぐぅ、むずい。

「こらこら、力任せはいかんよ。魚をさばく要領で、骨にそって…そうそう!」

ふ〜っ。何とか切り分けてお互いのお皿に置く。

「はい、祐巳」

「えっ?」

「今日くらいいいじゃない?」

「で、でも…未成年…」

「甘酒飲むでしょ?」

「飲む」

「なら、これもオッケー!」

ニコニコしながら、スパークリングワインをグラスに注いでくれた。

琥珀色の液体がグラスに。

小さな小さな気泡が所狭しと動いている。



「さて、祐巳がこうして食卓の演出をしてくれたんだから…」

全部用意が済んでさぁ食べようと言う時になんだろう?

「私は場の演出を」

そう言って、リビングにあるデッキに向かう。

流れてきたのは「ホワイトクリスマス」

テーブルに戻るとキャンドルに火をともし、

再び離れると部屋の明かりを全て消した。

キャンドルの近くに置いてある二人のワイングラスが、

蝋燭の明かりに浮かび上がる形でちょっとロマンティック。

なんてちょっと良いムードに一人で入っていたら…

「シュッ、シュッ、シュ〜〜〜〜〜っ!!」

なんてスプレーをする音が。もう、何しているのよ聖!!

「あ、雪…」

白いものが天井から降ってきた…わけないよね。

聖が今、スプレーを使って降らせてくれたんだよね。

「クリスマスと言ったら、ホワイトクリスマスでしょ?」

そう言って、テーブルに着いた聖はウインクした。

「ほら乾杯♪」

慌ててワイングラスを手にする。

「チーン」と澄んだ音を立てながらグラスが合わさった。

「今日だけはクリスチャンになろうかな?」

「なんで?」

「祐巳とこうして過せる場が持てたから」

グラスを片手にニッコリと微笑む聖。

うっ、て、照れるよ〜!!わっ、顔が熱いよ〜!!ゴクッ。

「おお、良いのみっぷりだね、ほら、もう一杯!!」



その後のクリスマスディナーが盛り上がったのは言うまでもないことで…。


あとがき

風邪でボロボロの中、1時間足らずで書きました。
皆さんへのクリスマスプレゼントのつもりで…

この話の落ち、聖がスプレーでばら撒いた綿が、
食卓や床に散らばって…さぁ、大変!!
にしようと思ったんですけど、祐巳ちゃんが、
スパークリングワインを飲んで良い気分になっちゃったから、なし。(笑)

(2002.12.24)



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