「い、いたっ!痛いってば〜!」

腕も引っ張りながら同時につねってるんだもの。もちろん痛いでしょう。
でも、聖が悪いんだからね。トイレだと思っていたら全然戻ってこなくて、
心配して見に行ったら・・・

「あ、皆さんごきげんよう、情報ありがとう♪」

まったく、何を話していたのやら。
手を振りながら笑顔も振り撒くなんて・・・は〜っ。

「ねぇ、祐巳、なにをそう怒ってんのよ」

「・・・・・・・・」

「ねぇってば〜。・・・あ、もしかして焼きもち?嬉しいな」

「・・・・・・・・・・・」

我ながら子供っぽいと思ったけれど、ついホッペを膨らませる。
こら聖、怒っているんだから楽しそうにホッペをつつくんじゃない!
まったく、旅の出だしがこんなで大丈夫なのかな・・・不安。





そもそもの始まりは一本の電話からだった。

「えっ、いいの?うん、多分大丈夫じゃないかな?あ、そう。
じゃあ、取れたらこっちから連絡するよ。サンキュ〜亜矢さん」

前期も終わりに近づいた頃、聖の従兄弟の亜矢さんから電話があった。
ちなみに今聖と二人で住んでいるこの部屋本来の持ち主の奥様。
会社の転勤命令で海外に行く事になり、部屋を誰かに貸そうかと考えた時に
思いついたのが聖だったとか。確かにリリアン女学院から程遠くない位置。
見も知らない人に貸すよりも、身内の方がある安心感。
ちょうど4年の予定で赴任になったのも好都合だったんだと思う。

「祐巳、亜矢さんが遊びに来ないかってお誘いだったよ。
もちろん行くわよね?バイト代も溜まってるし、一週間行くわよ!」

「え?亜矢さんの所?・・・ってことは海外?」

「何を当たり前の事を。知っててボケてるの?」

「たしかロスって言ってたよね?」

「そうよ、ロ・サァンジェルスよ」

なぜか両手を肩の高さまで上げて、
大げさなジェスチャーと巻き舌での発音をする聖。

「パスポートは持っているでしょ?」

「うん、10年のにしたからまだ全然大丈夫」

「え〜っ、そうなの?」

「な、なんで?」

「言われなかった?『結婚した時に苗字が変わったらまた取り直しですよ』って。
未婚女性は普通、5年にするものなのよ」

「そ、そうなの?・・・聞かれなかったけど」

「きっと、係りの人が祐巳は幼いから当分結婚しないと見破ったのかも」

「ちょっと、『見破った』ってどういうこと?それより聖は?」

「ん、私も10年のよ」

「自分の事を棚に上げて言わないでよ〜」

思いっきりこぶしをグーにして反抗する。

「だって、私は結婚しないからいいのよ。
とりあえず、前期終ったらすぐに行ける様にしましょう。
明日、旅行会社にいってチケット手配してくるわね」

手をひらひらさせたかと思うと、急に真面目な顔になった聖。

「え、もう?」

「遅いくらいよ。いくら海外旅行者が減っているとはいえ、夏なんだから」

確かにそうかも。
でも聖と二人で旅行か〜。それも海外。
う〜ん、「新婚旅行」みたい♪




・・・とまぁ、亜矢さんの好意で聖と二人でロスに行く事になって、
今は太平洋を飛んでいるジェット機の中。
夕飯もおいしくいただき、機内はすでに暗くなっている。
前方のスクリーンでは映画が上映されている。

「もう、聖ったら私がいる目の前でナンパするなんて・・・ひどい」

「ち、ちょっとまった。何か誤解をしてない?」

「ごかいも、ろっかいもありません。現場を見られておきながら、
今更言い訳をなんて元白薔薇さまとあろうお人のなさりようとは思えませんわね」

「だ〜から、違うんだってば〜」

「ニコニコしながらたのしそ〜におはなしになってましたわよ」

「それはそうだよ。せっかくいい情報をもらえたのに、笑顔で答えないわけにはいかないでしょ?」

「情報?」

「そ、ロス近郊のいいとこ情報。亜矢さんも知っているだろうけど、どうせならと思ってね。
よく、アテンダントは穴場の情報を知ってるって言うじゃない?だからおいしいお店を紹介してもらったのよ」

「あ・・・ごめんなさい、勘違いしてた?」

「ま、そのお店に付き合うってことでチャラにしましょう」

「うん!」

「さ、後、数時間でロスだよ。眠いだろうけど、我慢してね・・・」








本編の再開はないので、その代わりではないのですが、
つい最近思いついたネタを。適当に書き足していったり、
手直しするので、特に更新の表示はしませんが、
多分、一週間に1・2回は付け足せる・・・といいな〜。
ご意見、ご希望ありましたら掲示板までどうぞ。
ちなみに、誤字脱字は今後直しますのでご容赦を・・・



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