師走も半ばを過ぎた頃、親しくさせてもらっている方々に、
年賀状を書き始めていました。一枚一枚、全て手書きなのは、
自分の真心を込めたいという現れ。その代わり、
本当に親しくさせてもらっている方にのみ出させてもらっています。
それも礼儀の一つと私は思っていますので・・・。
暖房をつけた自分の部屋で、一枚の年賀状を机の上に置いたまま、
私は目を閉じて考え事をしていました。その年賀状の宛先は・・・真央。
普通に友人に書くような文面にしようとも思いましたが、
ある想いがそれを許しませんでした。真央への・・・想い。
今は「お姉さま」と呼ばれ、恋人のような睦まじい時間を、時として一緒に過ごしていますが、
いつまでも時を共に刻む訳ではないのですから。そう、いつまでも・・・。
真央にはその身も心も焦がれるくらいに求めている人がいます。
その方よりも、私を見てとはとても伝えられません。
それは望んではいけないこと。
私が好きなのは・・・心の中で激しく求めながらも、
表面はそれを微塵も感じさせることの無い彼女なのです。
一途に一人の人を想い続けている彼女なのですから。
・・・と私は何度も自分に言い聞かせてきていました。
しかしながら、彼女との関係が長くなるにつれ、
私の心に徐々に変化が現れてきたのです。
自分自身の気持ちに耐え切れなくなろうとしています。
すでに身体の関係を持ち、恋人同然の日々を過ごしている私達。
二人を結ぶものは「約束」という名の契約であっても、
お互い、二人きりでいる間は、恋人同士でいるのです。
私は聖人ではありません。市ノ瀬美和という名の普通の人間です。
真央をこの手で奪いたい、その身も心も自分のものにしたいと思わないわけがありません。
その想いを抱いてしまう自分の心が穢れていると、この身を抱き、涙で清めようとしたこともありました。
今もその想いに苛まれています。真央を手に入れたい・・・と。
よき姉、そして全てを受け止める恋人と言う役を演じつづける自分。
そんな自分が嫌になるときもあります。
ですが、真央と会い、「お姉さま」と慕われてしまうと、
その役に徹することができるのです。いえ、徹するしかないのです。
自分の本当の気持ちを彼女に知られてはいけないのですから。
机の上にある真央への年賀状になんと書くべきなのでしょうか。
「あけましておめでとうございます」は別に問題なく書けたのですが、
その続きを頭の中に思い浮かべ、書く筆が止まってしまいました。
気になったのは、「本年もよろしくお願い致します」という一文です。
私は今年で高校を卒業いたします。それは、真央との「契約」の終了を意味します。
そのまま続けることは・・・まずありえないでしょう。
なぜなら、やはり私は彼女を支える立場に徹することが、
最良と信じているからです。真央の本当の恋人に私がなっては、
いけないのです。真央の為にも、私自身の為にも。
私は再び机に向かいます。
真央への年賀状を書き上げる為に・・・。
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