「好きです。付き合って下さい!」
自分が言われているってわかるまで、30秒はかかった。
部活の片付けに戸惑ってしまい、
いつもより遅いバスになってしまった。
学校の校門のすぐそばにあるバス停の周りには、
同じように部活で遅くなったと思しき生徒が数人立ってる。
バスが来るまで後少し。これを逃すと、後30分は来ないからな〜。
んでもって、疲れもあってボーっとバスを待っていたら、
下級生と思しき子がツカツカと私の目の前まで
(それこそくっつかんばかりの距離だよ!)やってきて、
人の顔をジーッと見てきた。
(なにこの子??)と思っていたら・・・あのセリフ。
現実をすぐに理解しろって方が無理ってもんでしょう。
・・・で、周りにいて同じように今起こったことを理解できないでいる生徒の目から逃れるため、
その子の腕をむんずと掴むと大股歩きで人目のつかない場所へと移動した。
「キャ〜!!先輩嬉しい!!」
―なんて言ってる名前もしらな・・・名札に「高城」ってあったな。
その高城なんたらを引っ張ってとりあえず校内へと戻った。
TPOもわきまえず、あんなことを言うやつには説教してやる!!
「・・・何してるの?」
「先輩、ここなら誰も見ていないですよ」
「何を考えているんだ〜〜!!」
何を考えているんだこやつは。
いくらなんだって誰だか知らない下級生を
人目のつかないところへ連れて行ったといってキスする気などない。
「私はいつでもO.K.ですよ!」
「私が良くない!!第一、いきなり『付き合って下さい』だの、
『キス』するだの、常識ってもんがないのあんた?」
「私の座右の銘なんです」
「はぁ〜?」
「やらずに悔やむならやって悔やめ」
呆れて物も言えない。
自分の都合ばかりを考え押し付けるったあふうてえヤツだ。
これはキュッとお灸を据えてやらないといけないぞ。
・・・おや?なんか急にしおらしい振る舞いをしてるぞ。
「マコちゃんに久々に会ったから・・・つい気持ちがはやっちゃって。ごめんなさい」
ぺこりと頭を下げる高城なんたら・・・あれ?なんか変・・・。
「ちょ、ちょっとなんで私の名前を知ってるの?それに初対面でちゃん・・・」
「初対面なんかじゃない!!」
あっ、バスがいっちゃったよ・・・後30分待ち決定か・・・って、なにを言ってんのこの子?
「やっぱり思い出してくれていないんだ。将来を誓い合った仲なのに・・・」
「将来を誓い合った?私とあんたが?」
我ながら素っ頓狂な声を上げたもんだ。
いくらなんでも、年下の女と将来なんか誓ったなんて信じろって方が無茶だ。
「マコちゃんの部屋のベッドで、キスしながら誓ったのに・・・いつまでも一緒にいようねって。
嘘だったんですね。あんなにきつく抱きしめて言ってくれたのに!」
お・・・思い出せないぞ。私、小さい頃の記憶ってあんまりないんだよね。
写真嫌いであんまりアルバムとかもないし・・・う〜ん。
顔が小柄で、ずうずうしくて・・・ちょっと可愛い知り合い・・・・・・・・・ん?
一人いたかもしれない・・・確か小学生の時に引っ越した・・・近所の・・・
「もしかして・・・理沙・・・ちゃん?」
小声で恐る恐る尋ねる。
「思い出してくれたんですね!!」
「わっ!!!!」
いきなり抱きつきは・・・まぁこの際許そう。
ずっと幼馴染を忘れていた私が悪い。
でも、キスはないだろキスは〜〜〜!!!
「久しぶり・・・マコちゃんとのキス・・・」
「うっ・・・」
顔が真っ赤になる。記憶って便利なもので、思い出し始めると、一気に出てくる。
目の前に立つ理沙と・・・その・・・仲良くしていた頃を全部思い出しちゃったわけだ。
近所に住んでた理沙とは、それこそ赤ちゃんの頃からの仲良し。
学年こそ違うけど、誕生日がおない年の2月と4月。年は変わらないのだ。
近所で同じ病院で出産した縁で、私達はいつも一緒にいた。
お昼寝だっていっしょにしたし、お泊りも良くした。
一緒にいるのが当たり前だった。
ずっと一緒にいるんだと思ってた。
でも・・・現実は小さな子供の思いなんか無視した。
「引越す?なにそれ?」
「マコちゃんと離れ離れになっちゃうんだって」
「なんで?マコはリサとずっと一緒にいるんだよ」
「リサだってマコちゃんと一緒にいたい!・・・でも、パパの仕事で遠くに行くんだって」
「遠くってどれくらい?マコ、会いに行く。毎日リサちゃんに会いに行く!」
「無理だって・・・リサもママに言ったんだ。マコちゃんに会いにいけるよねって。そうしたら・・・」
「そうしたら?」
「飛行機じゃないといけない遠い遠い場所なんだって。毎日なんて会えないって・・・」
「そんな・・・マコはリサちゃんと一緒にいるんだ。ずっと一緒にいるの。そう決めたの!!」
急に理沙が家に泊まりにくることになって、訳もわからず喜んでいた。
そうしたら、いきなり引越すことを告げられた。・・・よく忘れてたな、こんな大事なこと。
嫌、あまりにもショックで記憶を消そうと自己防御が働いたのかも知れない。
なんたって、理沙が引越した後、一ヶ月は食事も睡眠もろくにとらなかったのだから。
確かベッドの上で二人でぎゅっと抱きしめて・・・キスして・・・誓った。
「一緒だよ。リサちゃんとずっと一緒だよ!!」
「リサも一緒。ずっと、ずっと離れていてもマコちゃんと一緒だよ!」
・・・・・・うん、確かにキスして誓い合ったよ。
「私、高校に入る前に隣の町に引越していたんだ。
もちろん、マコちゃんが一緒の高校だなんて、思ってもなかった。
ずっと、ずっと気になっていたけど、まさか小さな時の誓いなんて忘れちゃってると思ったし、
マコちゃんのこと、探そうとは思っていなかったんだ」
「ぐっ・・・確かに忘れてたよ」
胸が痛いぜ・・・チクチクと・・・。
「そうしたら、今日、たまたま私の脇を走っていくマコちゃんを見て驚いちゃって」
「え?私、理沙の隣を通ったの?」
「あ、やっぱり気づいていなかったんだ。私、ビックリしたんだよ。
だって、マコちゃん全然昔と変わっていないんだもん。すぐにわかったよ」
「理沙だって変わってないよ・・・いや、変わったかな。前より・・・ずっと可愛くなった」
「本当?」
「ああ、本当。だから気が付かなかったのかもね」
「それ、言い訳でしょ?」
「まっね」
二人して笑った。大声で、今まで一緒に笑えなかった分を今全て笑い尽くすために。
不思議なもんだ。もう10年近く離れていたのに、ずっと一緒だった気がするよ。
「マコちゃん・・・付き合ってくれる?」
「えっ?あ、あれって冗談じゃなかったの?」
「もちろん、小さい時の他愛もない誓いだって私だって思ってた。
でも・・・こうして、マコちゃんに会えたら・・・私、マコちゃんのことが好き!
誰よりも好き!ずっと一緒にいたいの。一緒にいてよ、もう離れたくない!!」
うっ、確かに今まで好きなヤツなんてできなかったよ・・・理沙以外。
でもさ、これって変だよな・・・絶対。確かに好きだったよ。
今、こうして会って、始めはちょっと違和感はあったけど、打ち解けたら・・・愛しさが湧いてるよ。
でも、でも、うちらは女同士なんだぞ!結婚もできないし、子供だってできないぞ!
そりゃ、好きだけど・・・好きだけど・・・そう簡単に答えられないよ〜〜!!!
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