今は放課後。薔薇の館には祥子さまと祐巳しかいない。

「いらっしゃい」
そう、祥子さまが祐巳に声を掛ける。
祥子さまの姿は両手を広げるイエズスさまの像のように、
全てを受け止めてくれる、そんな風に思えた。

祥子さまは祐巳の肩を引き寄せて、そっと抱く。
優しく、天使の羽に包まれるようなふんわりした心地。
祥子さまの胸にいる間、祐巳はまさに天国にいる
感覚を感じていたのではないだろうか。

祥子さまの豊かな胸は、顔を当てても、跳ね返すほど
弾力があり、大きさもあり、女性から見ても、魅力的だ。
ずっとそのままの体勢でいられたらと祐巳は思った。
初めて胸に抱かれた祐巳。お姉さまの優しさと、
体の柔らかさとを感じて、悩みを受け止めてもらっているはずが、
とても暖かい気持ちになっていた。

(祥子さま私の悩みを受け止めてください…)
そう思って、祐巳も祥子さまに手を回そうとした瞬間。

「バタン!」

「祥子お姉さま、大変ですっ!」

お邪魔虫というのは、まるで心得ているかのように
いいシーンで登場するものだった。もちろん、予告なしで。

「何ごとなの?瞳子ちゃん」
とっさに身体を離し、祥子さまが尋ねた。
祐巳も祥子さまの背にまわそうとした手の行き場を無くし、
思わず、盆踊りを踊ろうかと思ってしまった。


―結局、そのあと「やり直し」はなかった。
もし、あの時瞳子ちゃんが入ってこなかったら、
そう考えると、頬が赤らむ祐巳であった。

あとがき

久々のマリアさまのSSを書きました。
ネタ元は新刊。どこぞやに存在する、
「いらっしゃい」の台詞を読んで、
私と同じことを考えた人(OR それ以上?)
絶対にごまんといるはず!

どうせなら、本文でも、
「祐巳の頭を優しくなでる」とか、
「背中を軽くさすってあげていた」
ぐらいあっても面白かったかも!?

ちなみに、文庫では新キャラの憧子は、
個人的には誰の妹にもなって欲しくないな。
そのほうが、彼女の性格が際立つ!
そう思いません?
(それで皆に迷惑かけまくると・・・)

2001.08.03

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