「令ちゃん、本当にいいの?」

「もちろん、由乃の頼みだもの」

「嬉しい!!こうして令ちゃんとできるなんて夢だったの!ありがとう」

「こらこら、由乃。まだ終わっていないんだから、先に済ませようよ」

「そうだね、それではお願いします…なんか照れるね」

向かい合う二人。
二人とも真剣なまなざしでお互いを見つめる。

(嬉しいな、由乃がこんなに元気になってくれて)
目の前にいる由乃の姿を見ているだけで、思わず涙しそうになる。
(いけない、いけない、せっかく由乃がその気になってくれているんだから…)

「いくね、令ちゃん!」

「よし、由乃おいで!」

擦り寄るように近づく二人。
だんだん距離が狭まるが、ある一定の所までくると、
お互いの次の行動を探るような動きをとる。
二人の間に交わされる熱い眼差し。
お互いの一挙手一投足に注意を払う。

お互いの胸のうちを探りあう。
次の動作を予測する。
だんだん由乃が焦れてくる。
(まだまだ経験が足りないな、由乃…)



「め〜ん!!!」

由乃の掛声が道場内に響きる。
令の剣先がわずかに下がったのを見て、
(今だ!)と、思いっきり踏み込む由乃。
もちろん、それは令の誘いだった。

由乃の体が動くやいなや、すばやく竹刀を上段に構えなおしつつ、
スッと体で竹刀をさばくと、そのまま面を狙う。

「めん!!」

軽く打ったようだったが、ズンと響くような痛みを頭に覚える。
綺麗に決まり、さすがに由乃も何も言えない。

開始線に戻り、互いにそんきょをし、礼を終える。
正座をし、互いに面を外し、手ぬぐいもとる。
それほど動いていないのに、息を軽く切らせる由乃。
それを見ながら、心配に思いつつも、
重い防具を身につけられるようになっただけでも強くなったと思う令。

「やっぱり令ちゃんにはかなわないか」

「まだいくらなんでも由乃には負けられないよ」

「また、お願いしていい?」

「もちろん、いつでも受けてたつわよ!!」

何度でも何度でも待っているよ。
由乃の元気な姿を見られるのが嬉しいから。
そう心の中でつぶやく令であった。



あとがき

一ヶ月ぶりのSS。
壊れようと思ったけど、やめたら、中途半端に。
やっぱり、思いっきりのよさは必要?

他のバージョンもあるけど、それはまた今度っと♪

ところで、これを書くときに「黄薔薇革命」を読んでいたんですけど、
由乃の病院にジャンパースカートにモヘアのカーディガン姿でいるはずの祐巳が、
挿絵だと、制服姿なんですよね。いつ着替えたんでしょうね。(古い話?)

2001.09.09

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