「きゃぁ〜〜!!」

ううう、怖い・・・・・・

「わわわっ!!」

うるうる、ビックリするよ・・・

「祐巳!少し静かになさい!!」

え〜ん!これが一番怖いかも・・・。


薔薇の館には私と祥子さまだけがいる。
それだけならと〜っても幸せなのだけど・・・・・・。

「きゃい〜ん!!」

「祐巳!!」

・・・さっきから騒いでいるのは雷のせい。
雨は降っていないんだけれど、ピカッと光ってから、
ドガ〜ンと落ちている。光ってからの時間が短いから絶対に近く。
あまりの怖さにテーブルにつくことも出来ず、チョコレート色の扉の前で、
肩を縮ませながらぶるぶると震えているのだ。

かたや祥子さまと言えば、雷なんてなんのその。
雨雲で灰色となっている窓の外をバックに、
てきぱきと書類に目を通しては処理をしている。

「もう、さっきから落ち着きないわね。たかが雷にびくびくしないの」

さすがに手伝わないで、騒いでばかりいたからか、頭にきたのかも。
持っていたボールペンを置くと、仕事の邪魔をしてばかりの妹の私の方を見る。
でも、祥子さまにとっては「たかが雷」でも、私にとっては「されど雷」なんです。

「だ、だってお姉さま、雷って人間に落ちたら感電死だってあるんですよ〜」

そうそう、毎年テレビで一回はあるもの、落雷事故って。

「その時はその時。少なくともこの建物の中にいる間は大丈夫よ」

だから何という感じで、私の言葉に微動もせず、
ちょっと眉の端を上げたかと思うと、下をむいて作業をしていたから、
肩にかかっていた美しい日本髪を手で払いのけた。

「わからないじゃないですか!ここは木造ですし、落ちたら火事ですよ〜!」

よく雷が木に落ちて燃えたというのがテレビでやっている。
薔薇の館にもし落ちたら・・・ぶるぶる、怖いよ〜!!

「校舎の方が高いから、落ちるとしたら、そっちよ」

ゆっくりと私のほうへと歩いてくる祥子さま。
あ、あの〜、ここに落ちなければいいのですか?
あっ!また光った!!!

「きゃぁ〜〜!」

(えっ?)
ビックリした。目を瞑り、耳を塞いだ後、確かに雷の音が遠くになった。
それだけじゃない・・・これは・・・。

「お、お姉さま?」

「こうしていれば怖くないでしょ?」

祥子さまの胸に私の顔があった。
かすかにだけど心臓の音がする・・・もしかしたら自分のかな?
絶対に顔が真っ赤になってる。だって、思いっきり抱きしめられてる。

いきなりの行動にさすがに口をぱくつかせるのが精一杯。
ま、まさか抱きしめて雷から守ってくれるなんて・・・。

まだ雷は光りつづけている。
もし、ずっと雷が続いたら・・・このままでいられるのかな?


あとがき

即席SSでございます。
知らなかったよ、祐巳ちゃんてかみなり苦手なのね。(笑)
2002.08.02

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