@「長き夜の・・・」

茶色く染まった部屋の中、手を伸ばせば届きそうな所に祥子さまがいる。
今この瞬間、祥子さまは、私だけのもの・・・。

「祐巳?なにをしているの?」

祥子さまに手を伸ばそうとしていたら、
突然、祥子さまのまぶたがぱちりと開いた。
その前に手に何か触った感触があったが・・・。

覗きがばれた中年男性みたいに私はパニックを起こしたが、
祥子さまは別にとがめる訳でもなかった。

「祐巳」

私にだけ聞こえる声で、祥子さまは話しかけてきた。

「さすが姉妹ね。考えていいることは一緒だったようね」

(えっ?)
それって、もしかして祥子さまも私と同じ事をしようとしていたということ?
祥子さまの手が布団の中を通って、私の手を握ってきた。
そして、ぐっと引っ張られる。祥子さまのそばへ来て欲しいという合図。
私は白薔薇さまを起こさないようにと、静かに自分の布団から抜け出した・・・。


「あ〜、何で祐巳ちゃん祥子の布団でいっしょに寝てるの?」

次の日の朝、早く寝たからか、寝覚めのとてもいい白薔薇さま。
部屋に響き渡るような叫び声で目が覚める私と祥子さま。
と、同時に隣の部屋から、「なんだ!?」と祐麒と柏木さんが
襖を勢いよく開くと、二人の同衾を目に留める。

「祐巳、寝相悪いぞ!何で祥子さんの布団に邪魔しているんだ?」

あきれたように頭に片手をやると、ぼやくように話す祐麒。
普段なら、ここで、「なにいってるのよ!」とやりあうけれど、
これ幸いとばかりに、その言葉に乗ってしまう祐巳。

「す、すみません。私、寝ぼけてお姉さまのお布団にお邪魔したみたいで・・・」
「いいのよ祐巳。別にきつい訳でもなかったし」

慌てて祥子さまの布団から飛び出る祐巳。
顔が赤いのは、そのまま寝てしまって、見つかったからだけど、
この場なら、寝ぼけてしまったことを恥かしがっていると思ってくれる。

「祐巳ちゃん、寝ぼけるんだったら今度は私の布団にはいってきなさいね!」

白薔薇さま、それは遠慮いたします・・・。


あとがき
長き夜に、布団の中で何があったか。
それは皆さんの想像にお任せします。
祐巳X祥子になったちょっとだけ壊れた作品。
(2001.10.13)

戻る