『電話できる?』
去年の12月に引っ越したというのに、いまだに転がっているダンボールを片付けてたら、、
仕事中のはずの紘子から携帯にメールが入ってきた。どうしたんだろう?
取り出していた本をとりあえず棚に置くと、携帯を手にして電話を掛ける。
・・・繋がらない。何かしているのだろう。でも、着信履歴を残したから、
掛けていいのなら、紘子のほうから電話を掛けてくれるだろうし。
案の定、すぐに紘子からのワンコール。
彼女の明細書は掛けた相手の番号が出てしまうので、
いつも、ワンコールで合図をしてもらい、折り返し掛けるようにしている。
それを申し訳なさそうに思っているようだけど、私は気にしていない。
会えないのなら、せめて声を聞きたいと思うのは自然な事。
紘子の声が聞けるのなら、そんな手間や、電話代など些細な事だから。
さ、電話をしてあげましょうか。
「愚痴ってもいいですか?」
それが電話を掛けて聞いた紘子の第一声だった。
最近、仕事の愚痴はこぼしていなかったのに、何があったんだろう?
声を出す前に、彼女は話しを始めた。こんな彼女も珍しい。
「あのですね、パートさんが来るはずの時間に来なかったんですよ・・・」
紘子の話はこうだった。
そうでなくても今日は人が少なくて出勤してから大変だった。
にもかかわらず、15時になったら来る筈のバイトの子が来ない。
「もしや・・・」と思ったら、案の定、店長がスケジュールをミスっていた。
これが一度目ならまだしも、頻繁に発生していて、みんな切れそうになっている。
「ま、これだけなんですけどね・・・」
そういって、笑ってはいるけれど、かなり店長に呆れているのがわかる。
紘子が店長のミスを補ってばかりいるのを何度も聞かされているから、
今回もそうなんだろうというのは、容易に想像が出来た。
「ま、な、なんて言って良いかわからないけど、が、がんばって!」
「はい、がんばります!・・・あ、私、今、駐車場なんですよ。
花粉症のお薬が売れちゃって、他の店にもらいに行くところ」
「近い所?」
「そうですね、渋滞してたら、30分ぐらいですかね?今、パンを食べながら
話しているから、聞きにくいでしょ?ごめんね」
どうやら休憩時間も兼ねているらしい。あわただしいのはいつもだけど、
御飯もゆっくり取れないのかと、ちょっと店長に文句を言いたくなった。
でも、それを言っても、紘子は自分のせいだから仕方ないと言うに決まってる。
「いいわよ」
「それじゃあ、行って来ますね」
「気をつけてね」
「愛してるよ、お姉さま」
「愛してるよ」
10分ほど電話をしていた。紘子が大変だという事は知っているけど、
私にはどうすることもできない。ただ、事故もなく帰ってくることだけを願って、
再び中断していた片付けを始めた。
もう何回か紘子が訪れた部屋。
「来るたびに変わっていて楽しいですよ」
引越をして早3ヶ月。いまだに部屋の中が落ち着いていなくて、
家具なんかはいまだに揃っていないから、
紘子にそんな事を言われてしまったっけ。
途中で仕事が入ったから仕方ないと自分に言い訳をしながら、
ダンボールの中に入っていた漫画を少しずつ本棚に並べていった。
30分ほどたった頃、また携帯にメールが入った。
手にとって見てみると、また紘子からだった。
『今、もらって帰ります。思ったより早く着いた。
駐車場で残りを食べるから、電話してもいい?』
もちろん、していいに決まっている。
私はすぐに返事を打った。
『いいわよ♪』
それだけ打つと、私は少しウキウキしながら、続きを始めた。
そして、それからまた30分ほどして、携帯が一回鳴った。
携帯の画面を見るまでもない。紘子に決まっている。
私は、すぐに着信履歴から紘子に掛けなおした。
「途中で渋滞にはまったんですけど、意外と早く着きました。
ま、本当ならすぐに店に戻らないといけないんですけど、
休憩も兼ねてますし、パンを食べるくらいの時間はもらわないと」
何度も私の声を聞けるのが嬉しくてしょうがないのか、
紘子の声がウキウキしているのが携帯越しでもわかる。
もちろん、私だって、紘子の声が聞けるのは楽しみになっている。
「そう言えば、向こうのお店もショッピングセンターなんですけど、
やっぱり『女の子の日』だから、混んでましたね。店長も、
うちが単独店ならまだしも、隣がスーパーなんだから、こんな日は
混むっていうのがわかっていないんでしょうかね?」
この後も紘子の愚痴が続くかと思ったら、話が急に変わった。
「・・・そう言えばお姉さま、雛飾りって飾りました?」
「飾ったわよ。一人っ子だったし、お店にも飾ったから、7段飾りよ」
「わ〜、それはすごい。うちはまだマンションに住んでいた頃だったから、
大きなのは飾れないから、ガラスケースに入ったのでしたね」
何の話かと思ったら、雛飾りの話だった。
私はふと、ある事を思い出した。けど、紘子の話がまだ続いていたので、
それを頭から消し去ると、紘子の話に集中をした。
「あのですね、お飾りいつくらいまで飾りました?」
「中学くらいまでかな。さすがに7段飾りだから、片付けるのが大変だし」
「・・・という事は、その後は飾らなくなったと」
「そういうこと」
「うちもそのくらいから飾っていないんですけど、よく、
『雛飾りを出さないでしまっておくと嫁に行きそびれる』って言いません?」
「え?それって『早く片付けないと』じゃないの?」
「そうなの?うちはしまいっぱなしだとって言ってますけど・・・」
「私はそのまま出しっぱなしだと行き遅れるって言うのは聞いた事あるけど、そっちはないわね」
「私はそっちを聞いたのが初めて」
「両方なのかしら?」
「そうかもしれないですね」
何を言いたかったのかは良くわからなかったけれど、おそらく、
紘子の家では雛飾りをそのまましまいっ放しになっているからしているから、
自分は結婚に行く気がないと・・・そう言いたかったのだと思う。
話が一段落した所で、私は再びひな祭りでの出来事を思い出していた。
「そう言えば・・・」
私がそう漏らしたのを、紘子は聞き逃すはずもなく、
「えっ?なんです?」と尋ねてきた。別に紘子に隠す話など何もない。
私は思い出した高校の時の思い出を簡単に紘子に話した。
「へ〜っ、それはすごいですね。うん、私、それをもとにまた話を書きますから、
今話した事をメールで送ってください。良いですよね?」
「そ、それは良いけど・・・」
「わ〜い、楽しみが出来た!遅くても構わないですから、送ってくださいね。約束ですよ」
約束をすれば私は必ずそれを守る。たとえいやな事でも。
紘子はそれをとっくに承知しているから、こんな時には必ず約束をさせる。
う〜ん、紘子ってそんなに人の話を聞きたいのかしら・・・。
「それじゃあ、また仕事に戻ります。帰りにまたメールしますね♪」
「うん、待ってるよ」
「お姉さま、愛してるよ」
「・・・愛してる」
そう言って紘子は再び仕事に戻っていった。
この後、4時間は紘子は働いているから、そんなに急いでメールを書く必要はないかな。
・・・そうも思ったけど、私は文章を書くのが遅いし、少ししたら書き始めようかな。
まったく、紘子ったら私の仕事がヒマなのを知ってて、おねだりするんだから。
嫌ではない。それどころか、もっともっと甘えて欲しいし、おねだりをされたい。
私を必要として欲しいし、私は人に尽くす時に幸せを感じるし。
でも、紘子ったら結構頑固だからな〜、いつも「ダメです!」だし・・・。
目を細めて、いつも外食の後におごろうとすると手を伸ばして出すように
私に催促するその姿を思い浮かべていた。別にいいのにな。
もらってきていた仕事を少しやった後、久しぶりにパソコンを立ち上げた。
そう言えば、紘子にメールをパソコンで送るのも久しぶりだ。
初めの出会い(?)もPCメールだったけど、いつでも見たい、
送りたい、すぐ読んで欲しい・・・と、対応の携帯は持っていたけれど、
Eメールの申し込みをしていなかった私にどうしてもと、
それこそこれだけは譲れないような勢いでお願いされたんだよね。
もう、1ヶ月経つけど、今では携帯メールと、電話が二人の主な伝達手段。
やっぱり、メールだと記録として残しておけるけど、電話だと、その場で伝えたい事を
愛する人を感じながら話せるもんね。それに、長いメールはこれからは仕事で
打てないだろうし、そう考えたら、紘子のおねだりも私のことを考えてだったのかしら?
PCだと、長く書こうとするから、2時間以上はかかってしまうしな。
ま、本当は、いつでも読めるし、返事が簡単に出せるからなんだろうけど。
「えっと・・・」
は〜い、仕事はどう?はかどってる?
え〜と、ひな祭りのことだったよね・・・
私の高校は私立ってこともあって、卒業式は3月1日だったの。
で、2日に恵理子が泊まりに来て、3日に別の友人も合流することに
なってたから、いちゃつけるのはその日しかなかったのよね〜
で、昼過ぎにやってきて、夕方までは彼女が私の背中を台にして
漫画を読んで、その後ご飯を食べて、一緒にお風呂に入って
背中を流してもらって、湯船に浸かって・・・
部屋に戻ると、布団を敷くスペースの横にパソコンラックがあって、
そこに母がひな人形を出しててくれて・・・
押入を開けて布団を敷くと、引っかけたらしく人形を落としたけど、
それを元に戻して、布団に対して真横を向くようにして・・・
Hしたんだけどね〜
ま、詳しいことは忘れたけど、今でも覚えてるのが、その時彼女に
「今夜で関係を持つのは終わりにしましょう」
って言われたことかな?
ま、でも結局その後3年、関係を持ったけどね(笑)
で、Hは普通にしてたんだけど、その夜初めて彼女を全裸にして
(今までは学校の帰りだったから全部は脱がしてなかったからね)
私も下着になって、膝で彼女のクリトリスを擦って・・・
終わった後パジャマを着て、腕枕で寄り添う様にして寝て・・・
朝、目が覚めてふとひな人形の方を向いたら・・・
寝る前に横を向けてたはずなのに、何故か2体とも全く同じ角度で
こっちを向いてたのよね〜(笑)
未だに不思議だな(笑)
まあ、今までにも2、3回不思議な事はあったから、ありえないことでも
ないんだろうけどね♪
さて、こんなモンでいいのかな〜?
仕事はまだ残ってるだろうけど、このメールでも読んで頑張ってね♪
送信ボタンを押して、メールを送った後、私は夕飯を作り始めた。
さて、これを読んだ後、本当に紘子はこれを元に話を書いてくれるのかしら?
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