マツキクミコ カリグラフィー展/Letters and Variation展

 去る2000年3月9日より6日間、東京・青山のギャラリーPROMO ARTEにて、初の個展を開催いたしました。
 今回初めて個展を開くに当たり、15年という時間の中で基礎から蓄積してきたものを自分なりのスタイルで自分の書きたい文字、使って心地よいツールで表現してみようと思いました。また、今回は様々な和紙にこだわって、それらも使用してみることにしました。

 出展した作品は、通常、カリグラフィーで用いられる専用ペンを使って作られたものはわずかに2ないし3点のみで、ほとんどは、それ以外のペンやツールを使用して作った作品ばかりでした。中でも、多くはルーリングペンで書かれたものです。
 ルーリングペンは、これ1本でペンアングルを変化させ、細いラインから太いラインまで自在に出せるツールで、今まで使ったどのペンよりも面白く、私にとっては書いていて書き心地のよいものでした。
 出展した作品の中に何点か、同一のテキストを使用して、ルーリングペンのみを用いたものがあります。それぞれ、太い書体や細い書体、ゆったりしたラインやスピーディーなラインで書かれた作品など、それぞれに異なるスタイルで書いたため、視覚的な印象が全く違うものだったと思います。
 それと同時に、日本では額装された作品が多数を占める中、立体作品を展開させることで作品のヴァリエーションにも幅を持たせてみました。これは皆様にも楽しんでいただけたものと信じております。
 額装した作品は会場となったフロアーの3分の1の壁面に、立体的な作品は3分の2の空間にディスプレイし、見ていただきました。

 6日間フロアーに立ち、来客をウォッチングしていて感じたことは、カリグラフィーを始めて2〜3年の方にとっては書き慣れた、あるいはこれから習うであろう書体とは全く違っていてある意味で驚きやショックを感じている様子でした。また、何年かカリグラフィーをしている方にとってはこんなふうに展開できるというひとつのプレゼンテーションとして見ていただけたのではないかと感じました。

 常々思っていたことですが、長い間カリグラフィーを楽しんできた中で、西洋の書道であるカリグラフィーを日本において、日本人としてどのように楽しめるだろうか、どのように表現していこうか、ということでした。
 もっと日本的な用の美との組み合わせがあったり、実生活の中で楽しむという幅があっても良いのではないかという思いがあり、立体的な作品もお見せ致しました。

 事実、額縁から飛び出してみると、カリグラフィーを内側から見ていたのが客観的な見たように感じると共に、様々な試みに今まで以上に楽しみや面白さが加わったと思いました。





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