CHEF'S OFFICE
< 道具 >
包丁各種。すべてではないけれど
マリオの包丁
 (なんて言ってもメンテが決め手)

マリオの包丁を紹介します。プロ用と家庭用のものとでは一体どこが違うのでしょう。お気に入りはフランス製なのですが・・・。2003年8月7日



<プロの包丁>ということで、「さぞかし高価なもの。」としばしば思われがちなのですが、しかし、実際は、ご覧のとおり、ほとんどがふつうの業務用ステンレス包丁です。

寸法も小さいです。右端の一番大きいのが野菜用のスライス包丁で、刃の部分の長さは24センチ。野菜用としては、ともに同型の21センチを併用しています。

肉用の包丁では、その横の細長いのがいわゆる<筋引き>です。これは、フランスでトランシュ・ラールと呼ばれるもので、使い込んで少し短くなりましたが、もとは25センチありました。もう一本はさらに短くなって、左隣の20センチのフィレ・ド・ソル(舌平目用ナイフ)と区別がつきません。

その左手の肉用のスライス包丁は21センチです。小型のキッチンには小型の包丁のほうが都合がいいことに気づき、さらに操作性の点でも有利なことがわかって、すっかりこの小型のラインナップになりました。もっとも、タイの頭を<あら炊き用>に処理するとなると、やはり、大きな出刃包丁のほうが適任ではあるようです。

洋包丁と言えば、一昔前までは、ドライザックやヘンケルなどドイツのものが有名でした。日本にもすぐれた包丁メーカーが数多く存在し、各社各様にすぐれた技術と個性を持っていて、それぞれに多くのユーザーがあるわけですが、私の場合、お気に入りはやはりフランス製の包丁です。パリのコキリエール通りにドイレラン(E.Dehillerin)という昔からの厨房器具専門店があって、そこで、サバティエ(Sabatier)やヤニップ(Yanip)のものを少しずつ買っているのですが、出会いというのはおもしろいもので、ドイレランの店頭でサバティエのトランシュ・ラールを初めて手にしたとき、瞬間、握りの感じ、重さ、バランス、すべての面で、それが、自分にぴったりの包丁だと確信することができました。以来、フランス製の包丁が、次第に増えてきています。

ちなみに、ドイレランの包丁は、その売り方が日本とは少し違います。

日本では、各種のサンプルが店頭のショーケースにずらりと並び、お客に渡す包丁は、それとは別に、一本一本うやうやしく箱に収まっているというのがふつうです。しかしこちらの包丁は、陳列台にいくつも並んだ大きめの木箱の中に、一種類ずつ、裸のまま何本も、時には20本ぐらい無造作に放り込まれていて、買い手はその中から気に入ったものを手にとり、おかしなところがないかを確かめたうえで、「ジュ・ルプラン。」(これをもらう。)と自分の係りにそれを手渡して買うのです。つまりここでは、売り手は、商品ではなく客につき、商品は、見る品と買う品が同じというわけです。

取り扱いも違います。包丁は、先端にワインのコルク栓を切ったものを刺してガードとし、堅めの茶色っぽい紙でキリリと巻いて、端をテープで留めれば一丁上がり。あとはお勘定。おもしろいですね。

お話ししたとおり、マリオの包丁は小型のステンレス包丁です。そして、その限りでは、ふつうの文化包丁と大差ないのですが、しかし、形状と切れ味は常に一定以上に保たれていて、このメンテナンスの技術と実際に包丁を使う技術が、多分、家庭の包丁と、プロのそれとの違いを生んでいるのだろうと思います。 (次はメンテナンスの話です。)

2003年8月7日 マリオ 

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