CHEF'S OFFICE
< 道具 >
17歳のコショウ挽き。隣のワインは10年もの。
 10年保証のコショウ挽き
 コショウとコショウ挽きについて・・・。

私が使っているコショウ挽きを紹介します。
フランス製。ボレル(BOREL)の10年保証付きの品物で、中に入っている金属製の臼の部分はプジョー(PEUGEOT)です。   2004年9月25日


私が使っているコショウ挽きを紹介します。

フランス製。ボレル(BOREL)の10年保証付きの品物で、中に入っている金属製の臼の部分はプジョー(PEUGEOT)です。

「コショウ挽きぐらいでフランス製?その上10年保証つき?チョッと大げさ。」と思われる方も多いと思いますが、しかし、それにはそれなりの歴とした理由があるんです。

皆さんはご家庭でどんなコショウをお使いでしょう。ビン入り?缶入り?それともコショウ挽き派ですか。

フランス料理ではコショウは特に指定がない限り、Poivre du moulin(ポワーヴル・デュ・ムーラン)つまり、調味のその時にコショウ挽きで挽いたコショウを使います。ムーランとは粉挽き機のことで、ここではコショウ挽きをさしています。

もしもあなたが、よく売られているビン入りなどの粉コショウをお使いなら、一度コショウ挽き試してみてください。それだけで、ビフテキでもなんでも料理の味ががらりと変わることを体験できるはずですから。
「アー、なるほど。フランス料理の味はこれだったのか。」
そう理解頂けるだろうと思います。

つまり、挽きたてのコショウは、材料が本物であること(だから化学調味料は使わない。)などとともにフランス料理のとても重要な要素だというわけです。

それでご理解頂けるだろうと思います。コショウ挽きは、フランス料理のお店では最も酷使される調理器具の一つです。だからその頑丈さはとても大切な徳目で、私のコショウ挽きは、首に<10年保証>のペンダントが下がって売られていたのでした。

部品のすべてが大振りで頑丈です。パリで初めてそれを見つけたときはビックリでした。
試しにと思って一つ買い求めたわけですが、すべてが頑丈にできていて、その上使い心地がとてもいいので数年後に更に買い求めて合計4本。ラ・ヴィルフランシュ開店の時にその新しい2本を下ろし、3本で運営しながら中途で一番古くなった一本をリタイヤさせて替わりに新たな一本をおろして現在に至っています。

ちなみに、この一番古い、リタイヤさせた一本ですが、これはマリオ時代からのもので保証書通り10年あまりの使用で故障が出ました。故障は、木部に金属製の臼の部分を固定する、金属製の押さえベルトの木ネジの腐食でした。小さな鉄製の木ネジで、忙しい調理環境ではしばしばコショウ挽きの底部が水ぬれすることがあり、その染みた水が原因でサビが出たのだと思われます。

修理は木ネジの交換で簡単に終わりました。臼やその他の部分はまったく健在でしたからその必要もなかったのですが、あえてリタイヤさせ、<看板に偽りなし>の証としてそのままとっておくことにしたのでした。もっとも、今では他の二つがすでに17年の現役ですから、その意味はすでに失われたと思います。

最後にコショウ挽きの使い方です。

コショウ挽きは、収納と臼の部分を含んでいる基部と、フタでもあり臼を回転させるハンドルでもある頂部との二つに大きく分かれています。頂部は臼の回転軸が貫通していて、その軸の先端にはネジが切ってあり、そこに挽き具合を加減するためのナットがセットされています。これを締めれば細かくなり、ゆるめれば粗挽きです。

持ち方は野球のバットや竹刀と同じです。左手で基部を持ち、右手で頂部を持って手ぬぐいを絞るように回転させると、丁度、相互に右ネジを締めるように回転し、臼の底から挽けたコショウがはじき出されます。

続いて、一瞬左右どちらかの手をゆるめて元に姿勢に戻り、再び握ってまた絞る。繰り返すと次々とコショウが出てきます。一見往復運動しているようですが、実は、臼を一貫して右ネジ方向に回転させ続けている。

コショウは割に勢いよく出ますから、下の開口部を肉片の目的の部位に向けて作業を行ってください。それでは、新鮮な挽きたてコショウでおいしいフランス料理を楽しんでください。ボナペティ!

2004年9月25日 マリオ 

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