CHEF'S OFFICE
揚げ物によく合うあっさり系。
 ウースター・ソースのこと

改まった席で使うにはちょっと気が引けるウースター・ソース。でも本当は、ヘルシーで、素材に優しい、すてきなソースなのでは? 2003年8月6日


ウースター・ソースは、マヨネーズ、ケチャップなどと並ぶ日本洋食史上屈指のビッグ・スターです。

スーパーの売り場はかなりのボリューム。加えて各種ミックス・ソースは花盛り。ウース・ターソースの入っていないトンカツ・ソースやお好み焼きソースなんて、想像することすら難しいように思います。

およそ、<洋風>と目されるあらゆるものに、このウースター・ソースが振りかけられました。ソース売り場はかなりある。

コロッケ、トンカツ、エビフライ。・・・。フライものは言うに及ばず。ハンバーグ。ビフテキ。ムニエル。その他の焼き肉および焼き魚料理。それらに添えられた野菜類。カレー・ライスなどご飯もの。もちろん、ホワイト・ソースで作られた、繊細な味のカニのクリームコロッケやグラタンだって、決してその例外ではありません。

そのせいでしょう。たとえばフランス料理で醤油やナンプラーを用いたら、そのこと自体が一つの話題になり得たわけですが、ウースター・ソースを用いたからといって、それを誰が問題にするということもありません。つまりウースターソースは、それだけ確かに、<洋風>ということではないでしょうか。

改めて言うまでもなく、ウースター・ソースはピリ辛系の強烈なソースです。そのため、このウースター・ソースを丹精した料理に振りかけるというのは、デリカシーを欠いた下品な行為にも見えて、意固地に貫く人はあるものの、やはり、「改まった席ではちょっと気が引ける。」というのが、普通の人の心情ではないかと思います。

たしかに、ウースター・ソースを何にでもふりかけるとしたら、そんな行為は、<美食学的に見て>なんて言わなくても、不合理は明らかだし、お世辞にも上品とは言えません。

がしかし、かくいう私もこのウースター・ソース・ファンの一人です。無論何にでもかける濫用組ではありませんが、それでなければ表現出来なかったり、感ずることが出来ない数多くの気分があることは否定できず、欲しいと思えば、非妥協的にそれを用います。

ところで、最近とみにそう思うのですが、ウースター・ソースは、独特のぴりぴりした強い刺激はあるものの、見ようによっては、後口の軽い、やけにあっさりしたソースではないでしょうか。それにヘルシー。
ヒメイチのすしにソースはいける?
ヘルシーというのは、低塩、低脂肪、低カロリーという意味ですが、ウースター・ソースはもともとその強い味のために使用量が少なく、誤って大量に用いたりしない限り素材の味を損ねることはありません。それに、天然素材による発酵と熟成の産物ですから、その点を考慮するならば、想像を絶する有象無象の入った当節の量産食品や量産調味料などに比べれば、遙かに素材に優しく、また、肉体的にも精神的にも、ヘルシーなソースだと、言ってよいように思います。

試みに、土佐名物のヒメイチやサバのお寿司にこのウースター・ソースをつけてみてはいかがでしょう。<洋風>ばかりがウースター・ソースの仕事場ではありません。きっと意外な新発見がありますよ。少なくとも、シメサバはおいしいです。

ちなみに、このウースター・ソースですが、起源は19世紀のイギリスにさかのぼります。インドのベンガル州知事だったマーカス・サンディー卿という人がそのレシピを持ち帰り、ション・リーとウィリアム・ペリンという科学者コンビにその実験をさせたのがことの始まりだとか・・・。

このソースの優れた特性に気づいた二人は、卿よりそのレシピを買い取り、1838年、遂にこのウースター・ソースが世に出ることになりました。

ちなみに、ジョン・リーとウイリアム・ペリンの手になるこの元祖ウースター・ソースは、今も西イングランドのウースター市で健在です。後にその名を<ウースターシャー・ソース>とあらため、英王室御用達の栄。日本では、<リー・ペリン・ソース>の名で知られています。

興味のある方はどうぞ。リー・ペリン・ソースのURLです。
リー・ペリン・ソース
それからイギリスのウースター市。
ウースター市

2003年8月6日 マリオ 

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