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JR高知駅。もうすぐご用済み。
これって、同郷異夢っていうんです?
 (新駅事業に思うこと)

 JR高知駅が変わります。昭和10年の土讃線開通時の駅舎は、運良く戦争の空襲を免れました。やがて立て替えられて今日の姿となったのですが、しかし、今またその新駅舎にも、ご用済みの時が訪れます。 マリオ 2003年8月8日



JR高知駅が変わります。昭和10年の土讃線開通時の駅舎は、運良く戦争の空襲を免れました。やがて立て替えられて今日の姿となったのですが、しかし、今またその新駅舎にも、ご用済みの時が訪れます。

今回のこのJR高知駅にかかわる新事業は、<鉄道によって南北に分割されていた街を一体化し、交通の渋滞を緩和し、街に新たなにぎわいを作る>ことを目的としたものだそうです。具体的には、鉄道高架と、新しい駅ビルの建設。周辺地域の再開発という3つの要素を含みます。
新高知駅(高知県HPより)
「なるほど。そうなのか。」
そう言われれば、今さらなんとも言いようがない事柄なのですが、しかしこの町で生まれ育ったものとしては、同じこの町に生まれ育ったであろう行政担当者たちが作ったこの計画には、何とも言えず違和があって、「どうしてこうなるの?」という思いはどうしても打ち消すことができません。

「高知をどうする。」「どうしたい。」生まれ育った町ならば、誰に言われなくても、いろいろ考える人は多いものだと思います。たとえそれが子供でも。

私の兄もそういうタイプの一人でした。中学高校と、5万分の一の地図をもとに、高知の町のいろんな都市計画案を書いては消し。書いては消し。3つ違いの弟である私には、きっと話しても分からんと思ったのでしょう、ろくに説明もせず、一人で書いて楽しんで、高知のオスマン男爵になっているのでした。
3階ぐらいのところを列車が通る。
そのころだったろうと思います。今とよく似た鉄道高架の話があったのは。きっと兄は、その話から、「自分も、高知の町の未来像を考えてみよう。」と思ったに違いありません。

鉄道高架を含む一連の事業を推進する人たちの認識は、そのころも今も変わりなく、<高知の町は鉄道によって南北に分断されていて、鉄道は、今や交通の阻害要因になっている。>というものでした。しかしこれは実に奇妙な認識です。

もともと鉄道の駅は、北本町や新本町の町名が示すとおり、当時の高知市の北辺に作られたものでした。それを実現するために、それまでほとんど西進していた鉄道は、わざわざ薊野より急に南進し、現在の位置で再び西に向きを変えるのです。つまり当時は、駅が地域開発のカギでした。

「町が大きくなって、やがて鉄道を呑み込んだ。」「意図してそれを行った。」それが正しい認識です。鉄道による障害。そんなものはやる前から分かっていた。いやなら、駅を北に移して、鉄道をより自然に西進させればよい。高知平野の北辺である久万川をかすめて福井あたりへつなげば、より大きなパースペクティブのなかで都市計画ができるし、お金はあまりかからない。その上、すでに町に呑み込まれていた広大な鉄道跡地は、単に新事業を資金面で支えるだけでなく、それ自体が、新しい町作りのキーとして生きてくるはずなのです。

しかし、実際その時あったのは、そのような自由な発想ではありません。鉄道高架と新しい駅舎。そして周辺整備計画にすぎず、この鉄道高架の話は、町中の、3階ぐらいのところを鉄道が通るということもあって、はじめはかなり騒がれましたが、すぐに棚上げされて、駅舎のみが建て替えられ、いつとはなしに人の記憶からも消えました。

きっとそんな話、子供でもいやだったろうと思います。「すてきな町が欲しい。」兄は純粋にそんな気持ちから地図に向かい、高知の未来図を描いていたに違いありません。

兄の都市計画は子供のプランにすぎませんでした。しかし、30年の後、一度死んだかに思えた鉄道高架の亡霊は、力を得て再びよみがえり、焼き直されて、現実の政策として今実行されるにいたります。

県警本部前。しかし、考えてみたら、この手の「なんだか違うな。」「どうしてこうなの?」は、私たちの身の回りにいくらもあるような気がします。

高知城の北西部を取り巻いていた道路は、より大きな公園地域の一部として将来歩行者道になって欲しいと思っていたのに、県警本部が城のすぐ北にできて、橋を架け道を付け替えたものだから、今や交通量が増えて、逆に歩行者や自転車には危険な道になりました。

どうしてこうなの?やっぱりお城のまわりは、美術館でも病院でも、大学や公園でもなくて、やっぱり、藩政以来のお役所街ということでしょうか。

アーッ、同郷異夢。高知にもオスマン男爵がいる。その時はおかしく乱暴に思えても、100年後の人々がその町を誇りにし、いとおしく思えるような、そんな町作りをする人が必ず必要だと私は思います。 

2003年8月8日 マリオ 

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