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![]() 小ベニスは高知にも 運河に面した美しい町並みのあるところを小ベニスと呼ぶことがあります。高知にもそんな呼び名がふさわしい場所があるのだけれど、忘れちゃあいませんか?ストラスブールの旅からの連想です。 2003年8月7日マリオ 以前、ストラスブールで運河観光をしたことがあります。挺身10メートルほどのほっそりしたガラス張りの運河船に乗って町の名所をめぐるツアーです。 ストラスブールは、大河ラインとその支流であるイル川との合流点付近に開けた、東フランスの都会です。町は、古くは運河交通や漁業、皮革製造、繊維、製粉その他水資源を利用した産業で栄え、その発展の核となった旧市街は、そのイル川の流れを利用した運河で島状にとり囲まれているのです。食料と富をもたらす川の流れは、敵を防ぐ堀でもありました。 ストラスブールはゴシック様式の大聖堂が町のシンボルです。そしてこのツアーは、その大聖堂を中心にした、中世の記念碑的建造物が立ち並ぶ、町の歴史地区の岸辺から始まります。 「一体どうしたこと。」と思うほど、この町では古い建物が美しく目立ちます。多種多様な切り妻屋根を持つ、意匠を凝らした木骨建築群。それらの家々の窓辺は、明るく楽しげに赤いゼラニウムで飾られ、運河から見るこのあたりの風景は、まるでおとぎの国を思わせます。 ![]() 堰に入って舟が停止すると、扉が閉じられ、水が注入されて、それによって船は浮き上がり、やがて前方の扉が開いて、それまでとは違う一回り高い位置に、新しい水路が開けます。 この堰では、船のまわりに、あたりを散策する観光客が見物に集まります。堰の様子を観察し、船が次第に押し上げられる様子を、みな次々に写真に撮るものだから、ガラス窓の内側の船客たちも彼らに手を振り、ついにはその様子を互いに写真に撮りあって、笑顔の交流が生まれます。 こうして広々とした新しい水面に進み出た船は、そこで右に旋回し、少し流れの速い新しい下り水路に入って、町の北部の19世紀の建築群を見ながら時計回りに半周し、そこでもとの水路の下手に合流するのですが、しかし、ただちに元には戻らず、さらに水路を下って、2キロほど先の、欧州議会のある地域に向かいます。 実はここ。この水路は実に魅力あふれる水路です。歴史色の強いそれまでとは違い、両岸は現代的な低層住宅群。水路を背にして個性あふれる多様な家々が建ち並び、ある家は小さな庭を造り、ある家では掃除中、またある家では、今夜の、<テラスでの食事>の準備がすすみます。 夏草の茂る岸辺では、ところどころに釣りをする人も見られます。気軽な普段着での渓流釣り。漁があるらしく、水に沈めたスカリには魚の鱗が光ります。 「うーん、いいなあこんな町。」 ストラスブール。ピッカピカの都会。人口26万。周辺含めて43万人。高知とほぼ同じ規模の町だけに、この町に、親近感と、一種嫉妬の念がわきました。 ![]() 運河のある美しい町。それがストラスブールの印象です。極めつけは無論<プティット・フランス>、小フランスと呼ばれる地域です。 しかし考えてみれば、わが町高知でも、<プティット・フランス>はともかく、あちこちの<小ベニス>ぐらいの、運河に沿った美しい町並みなら、いくつか見知っていたように思います。 たとえば中之島。たとえば舟入川。たとえば大川筋。城西公園。えんまん橋。西町。たとえ時代とともに姿が変わっても、その水辺の情景が、私たちの小ベニスであることはきっと変わることがありません。 大川筋は、私たちがお店への行き来のために毎日通るところです。かつては、江の口川に沿って昭和初期の家々が立ち並び、それが一種様式的な美しさをも醸していたのですが、今は、古くなったそれらの家の多くが取り壊されて、立て替えられたり、病院やアパートや駐車場になりました。 江の口川の水が製紙会社の排水によってひどく汚染されてしまったのは不幸な出来事でした。 「昔はこの川でも魚が釣れて、夏にはよく泳いだものだった。」 子供の頃、そんな話しを大人からよく聞かされて、異臭漂う茶色の水を見て、その落差に驚いたものでしたが、しかしその頃の高坂橋付近の江の口川は、草がたくさん茂った緑の川縁でもありました。 やがて工場が閉鎖され、川に魚が戻りますが、生活排水をたたえたコンクリートのこの水路に、今たくさんの魚が泳ぐのを見るとき、なんとも居心地の悪い、妙な気持ちにさせられます。 ![]() 大川筋はある意味<今様>の町にになりました。しかし、いったん橋に出て江の口川の側からそこを眺めると、やはり、昔を思わせる美しい水辺の情景が、ちゃんとそこに現れます。たとえば夕暮れ。満ち潮で水位が高いときなど。 「あーっ、きれい。やっぱりここは小ベニスだ。」 と自転車を止めて、しばらくその風景に浸ります。 美しい町を持つというのは、多くの人の望みです。しかし、それを現実のものとするのは容易なことではないようです。「ウーム。世界遺産かぁ。ライバル、ストラスブールは、かなり遠いなあ。」と思います。 2003年8月7日 マリオ |
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