映画のページ
2001 F 108 Min. 劇映画
出演者
Sabine Azéma
(Edith Guetz - 母)
Eric Berger (Tanguy Guetz)
André Dussollier
(Paul Guetz - 父)
Hélène Duc (祖母)
Kawamata Sachi (Kimiko)
見た時期:2002年5月
ドイツ語では元のタイトルに加えて Der Nesthocker というのがついています。 これが全てを言い表わしています。大きくなっても巣から飛び立たない鳥のことで、ここではタンギーという名前の28歳のパラサイト・シングルです。
裕福な中産階級、パリでいい場所に素敵なアパートを持っている寛大な両親、 頭が良くて中国語、日本語に堪能な一人息子。監督は Tatie Danielle の Étienne Chatiliez。
息子が独立したがらないため、中年の母親は冒頭ノイローゼ状態。タンギーは洗濯も洗い物も何もせず散らかし放題、やりたい放題。夜な夜なガールフレンドも連れて来る。翌朝は2人でロマンチックにコーヒー・・・ではなく、両親と4人でコーヒー。怒って出て行ってしまうガールフレンドもいますが、タンギーはあまり困っている様子もない。 自分が謳歌している青春の価値を知っているんでしょうね。1人の女性のためにこのすばらしい巣を諦める気は さらさらない。
ドイツでも最近多少こういう居座りの傾向が出て来ていますが、どうやらフランスやイタリアでは社会問題に近くなって来ている ようです。一般的には息子の方が娘よりやや多いそうです。私が西ベルリンに来た頃は、まだ10代でも親の元を早く離れて、1人で生活したがる人が多かったです。日本の住宅事情を考えると非常な贅沢に見えました。当時の西ドイツと違って、西ベルリンの住宅事情はきつかった のですが、それでも数部屋ある大きなのアパートを借りて、見ず知らずの人と家賃を折半しながら共同生活するという 形で親元を離れたりと、まあ皆知恵を出し合っていました。国民性が違うのか、ロマンス語系の言語を話す国では親子関係はドイツより絆が強いです。ですからある程度長く親元にいるというのはそれほどの驚きではありません。 が、最近ではそれがかなりエスカレートしたのか、時々ラジオや雑誌で話題に上がります。
この映画で意外に思ったのは両親が積極的に息子を追い出しにかかったことです。映画全体がその両親対息子の戦争です。Tatie Danielle をご覧になった方はご存知でしょう。Étienne Chatiliez がその気になると家の中の争いはエスカレートします。精神分析医の所に通いながら、夫の助けを得、母親はアパートを居心地の悪い所にしようと試みます。すったもんだの末ようやく追い出しに成功。息子の新居は両親の生活レベルとはがらっと違う庶民的な場所。親へのあてつけかと思いきや、そうでもないようです。中国語が得意だから、中国人街を選んだようでもあります。両親の方も自分たちの生活様式を押し付けるのは行けないと納得。これで映画は終わるのかと思いました。が、それにしてはまだ時間が余っています。
息子はここから帰宅作戦に乗り出します。2回戦の始まりです。素直ないい息子に見えますが、なかなかしぶとい。両親の弱みもよく心得ています。結局作戦成功で、帰宅。ところが息子はここで母親の言うことを聞かないと自分の地位が危ないと気付き素直に家事を手伝い始めます。やらせて見るとちゃんと家事もできるんですね、この息子。だから母親は苦情をいう理由を失ってしまいます。で、3回戦に突入・・・。
辛子の効き具合、最後の納得のし方から言うと私は Tatie Danielle に軍配を上げます。しかしこれは好みの問題。おもしろい題材を取り上げたものです。次回作では東アジアの女性と結婚したがる欧米人について取り上げてもらいたいものです。
PS フランス語は特殊記号が多くて苦労します。一応記号入れますが、もしブラウザーが表示できなかったら《?》表示になってしまいます。その時は母音に何かしら記号がついたものや 《c》 に尻尾《,》がついたものだと想像して下さい。悪しからず。
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