映画のページ
Sommer 夏
Loch 穴
Sommerloch 2つの言葉を単純にくっつけることができ、「夏の穴」という意味になります。
時期: 毎年夏
高校や大学で初めてドイツ語の授業を受ける時は「夏の穴」という訳でいいのかも知れませんが、それでは何のことかさっぱり分かりません。これは《夏に空いてしまう収益の穴》ということで、例えば映画館が毎月期待している入場者の数が、真夏にどっと減ってしまうような状況を表わしています。なぜ穴が空いてしまうか。人はどこに消えてしまうか。
お金のある人は1年かけてためた貯金を全部はたいて休暇で外国に行ってしまいます。近隣で好まれるのはスペインの海岸など。今年からは両替をする必要もなくなり、日本人が国内旅行するのと同じ、・・・いえ、その地で使われる言語が違うのでそう簡単でもありませんが、毎年ドイツ人が群れをなして押しかけて来る地方ではドイツ語を話せる従業員がホテルにいたり、スペインなのになぜかビールとソーセージを売っていたりと、日本人がハワイに行ったような状況になります。偉そうな事を言いましたが、私はスペインにもハワイにも行ったことがない、というかそういう休暇を取る余裕がないので、これはみな経験者から聞いた話です。
それほどお金が無くてベルリンに留め置かれる人はどうするか。ドイツ人の場合せめて休暇の気分を味わおうというので、天気のいい日は公園に出かけ、暗くなるまで(というのはこの時期ではだいたい22時頃ですが)草の上で昼寝しています。「暗くなるまで待って」なんて欧州で夏に言われるとずいぶん長く待つ羽目になります。ベルリンにはやれ首都だ、大都会だと言われる割には感心するほどたくさん公園や森があり、夏には丸めたござを持って自転車で公園に出かけ、そこで半日本を読んでいるなどという若者がけっこうたくさんいます。
私などはアフリカに行ってもドイツにいてもお天道様が出て来るとすぐ長袖を着込んで帽子を被るのですが、ドイツ人は水着姿、半ズボンなどとにかく肌を焼くことに専念します。白人系の欧米人の肌は弱いと聞いていますが、どう見ても私よりはタフな肌をしているようです。自然の太陽だけでは足りないとばかり、日の照らないシーズンにはソラリウムという電気式、人工の太陽に当たっています。
というわけで映画館は悲鳴を上げます。家にこもってビデオや DVD を見てくれる人もいなくなってしまうわけで、映画産業全体が危機にさらされます。それで企業側もいろいろ考え、週末、金土日を半額以下にするとか、この時期に映画祭を催すなどと客寄せに苦労しています。
今年はソニー・センターの近くにある大手の映画館だけはサッカーのおかげで得をしたようです。以前は壁が立っており、その後は長い間廃墟、その後長い間工事現場だったポツダム広場という所が町の真中にあります。現在はほとんど完成していて、そこだけを見ると何となく渋谷や新宿を思い出すような場所ですが、メルセデス地区とソニー地区があり、ソニー・センターはそこに立っています。大きなビルで囲んだ中庭には屋根があり、雨が降っても濡れないようになっていて、そこのスクリーンで今回サッカーを見せていました。
このスクリーンがどういう偶然か、Cinemaxx、Cinestar という映画館のすぐそば。そしてこれまたどういう偶然かちょうどサッカーの最終戦のある週末に映画半額以下ということになっています。それで昼間放映されるサッカーが終わった後、ぱっくり口を開けている映画館の入り口に呑み込まれる人が出てもおかしくありません。出ました。土曜日ジョディー・フォスターのパニック・ルームを見に行ったら売り切れていました。仕方ないのでゴスフォード・パークに切り換え、翌日がドイツ・ブラジルの決勝戦、こんな夜遅く、マギー・スミス他シルバー部隊総出演の137分もある映画に来る人はいないだろうと思っていたら、満員。しかも若い層が大半。これには驚きました。ついでに見たスパイダーマンは予想通りほぼ満員。ところが次の日に見たスター・ウォーズ エピソード II / クローンの攻撃の方はガラガラでした。翌日が月曜日、サッカーに負けたなどと条件が悪かったのかも知れません。
今年はそういうわけでこの2つの映画館は救われたわけですが、ここ数年の間にかなりの数の映画館が新しく建てられ、こんなに建てて大丈夫だろうかとこちらが心配するぐらいでした。客寄せのために週に1回入場料を安くする日がもうけられ、夏にはこういう値下げウイークエンドというのをしてくれ映画ファンにはうれしい限りですが。
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