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ストーカー /
One Hour Photo

Mark Romanek

2002 USA 96 Min. 劇映画

出演者

Robin Williams
(SeymourParrish - 写真屋)

Connie Nielsen
(Nina Yorkin - 主婦)

Michael Vartan
(Will Yorkin - 夫)

Dylan Smith
(Jake Yorkin - 息子)

Erin Daniels
(Maya Burson - 夫の愛人)

Gary Cole
(Bill Owens)

Eriq La Salle
(Van Der Zee - 警察官)

見た時期:2002年8月、ファンタ

2002年 ファンタ参加作品

要注意: ネタばれあり!

最近の映画でよくストーキングと盗聴・監視が扱われます。ちょっと前に3つ立て続けに見た CIA 物では盗聴・監視が扱われていました。こういう事は特別な理由がなければやっては行けないことになっていて、ドイツには法律があるのですが、アメリカ映画を見ていると結局はやりたい放題やっているという印象です。映画と現実は違うでしょうが、国家がどこまで私生活に踏み込んでいるかなどという事を一般市民が知る機会はまずないでしょう。

もう1つのテーマはこれとは反対に非常にプライベートなもので、愛情と勘違いして誰かをつけまわす人が増えているようです。職務の一部だ、あるいは人間として当たり前の事だと思って親切に振舞うと、それを特別な事のように受け取る人がこの20年の間で増えたような気がします。例えばドイツに住むトルコ人のように親切を親切で返して来る人、家族で付き合おうという形になるケースもありますが、ドイツ人が相手の時は誤解を生まないよう注意するようになりました。男女、職業に関係なく普通の親切が超親切と受け取られてしまうケースが時々ありました。宗教の違いでしょうか、家族体系の違いでしょうか、友達の作り方が違うのでしょうか。

ストーカーはある孤独な初老の男性に思い込まれてしまった主婦とその家族の物語です。ロビン・ウィリアムズ演じるところのセイモアは大きなスーパーの写真屋です。タイトルの通り写真は1時間で仕上がります。几帳面な性格が幸いして仕事は上手く行き、客とも軽く言葉を交わし、いい印象を与えています。一緒に働いている助手の日本人とも上手く行っており、何の問題もありません。

しかし家に帰るとセイモアが軌道を逸していることが分かります。自宅の壁に恐ろしい数の写真を集めて貼り付けています。セイモアは注文された写真を通して覗きをやっていました。元来まじめな性格なんでしょう。セックスなどのシーンではなく、ヨーキン一家の家族団欒の写真で、若夫婦と子供3人が休暇に行ったり、自宅で遊んでいるシーンです。セイモアの持つ健全なモラルと、普通の線を越えた異常さが混ざり、映画を見ている私たちは判断に窮します。

覗かれている家族はその事を知らず、セイモアは1人で自分がジェイクのおじさんになったつもりで夢を見ています。事情を知っている観客は呆れますが、実際はこのままですと何も問題は起きません。ところがひょんな事から注文を受けた写真の数と機械が吐き出した写真の数が合わないことがばれ、スーパーのマネージャーから首を言い渡されます。ここから彼の人生は大きく狂い始めます。

首は受け入れざるを得ず、最後の週の仕事をこなして去って行きます。告訴されないだけ運がいいと考えた方がいいような立場です。辞める頃セイモアは偶然若い女性の写真を現像し、そこにジェイクの父親ウィルが映っているのを見つけます。不倫です。セイモアの頭はこのあたりから暴走を始めます。几帳面さを発揮して周到な計画を立てます。家族のおじという夢を楽しんでいたセイモアはここから可愛そうなニナとジェイクの保護者に変身します。非常な落ち着きをもって計画に取りかかります。

この瞬間ロビン・ウィリアムズが長い間コメディーをやって来た甲斐があったと思いました。意外性充分。演技はジャック・レモンの域に達しています。コメディアンがシリアス・ドラマを演じた時の実力は、シリアス・ドラマの俳優がコメディーを演じた時の実力と比例していません。圧倒的にコメディアンの方が上手いです。コメディアンを軽視する傾向の強いアカデミー賞ですが、この作品のロビン・ウィリアムズはノミネートに値します。

俳優起用の意外さだけではありません。プロットの意外さもかなりなものです。ネタばれありと大きく赤で書きましたが、最後のネタはばらしません。鬼気迫るロビン・ウィリアムズだけでなく、この家族がどうなるか、最後まで席を立たない方がいいです。

ついでに。主演の1人コニー・ニールセンは デーモンラヴァー にも出演しています。私は名前を読むまで同じ人が2回出ていると気付きませんでした。知人などもそうでした。それほど個性の無い人です。それが悪いと言っているのではありません。あくの強い人ばかりでは映画は作れません。しかし周囲に溶け込んでしまって、観客が彼女に気がつかないというのは考えもの。ここ数年山ほど映画を見ているので、数本見ていると「あ、あの人この間・・・で見た」などということが多いです。俳優というのはそうやって観客に思い出してもらいたいものではないでしょうか。

参考作品: 人目につかないように静かに切れるのがロビン・ウィリアムズ、よく分かるようにはっきり切れてしまうのがマイケル・ダグラス

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