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ロビン・ウィリアムズは
シリアス・ドラマに向くか

Robin Williams

1952 Chicago, USA

なかなか行けますぞ。

コメディーや家族で楽しめる映画で有名な人ですが、実は政治学などという堅い物を勉強したり、ジュリアードという有名校で奨学生として芝居を勉強したりと、イメージとはかなり違う顔を持った人です。まじめな几帳面な人だという印象を受けたことがありますが、それを一生懸命隠そうとしているのかと思ったこともあります。最初からコメディーを目指したようです。70年代後半にスタートしたキャリアは80年代徐々に上を向き始め、90年代はトップスターに向かって突進。オスカーにもノミネートされ、1つ貰っています。

驚くべきことに井上さんやHPに登場する人たちと同じ世代の人です。もっと年が行っているように見えますねえ。

見た作品全部は覚えていませんが主なのは

・ フック
・ ジュマンジ
・ ジャック
・ ファーザーズ・デイ
・ フラバー
・ Artificial Intelligence: AI
・ ストーカー
・ インソムニア
・ ファイナル・カット
・ ビッグホワイト
・ ナイト ミュージアム

あまり多いとは言えません。主に子供にも見せられる作品です。コメディーをやっている間のウィリアムズは何となくしっくり来ないという感じでした。なにか人工的に張り詰めたような雰囲気があり、その緊張感のせいで楽しめませんでした。ビリ−・クリステルがロバート・デ・ニーロの精神分析医を演じていましたが、あの時のようなリラックスした雰囲気がありません。クリステルとウィリアムズはファーザーズ・デイで共演していますが、この時もクリステルの方が余裕のある役演技でした。ウィリアムズはコメディーが本職なのにどうも見ていて疲れてしまうという印象でした。

この人がコメディー以外の事もやりたがっているというのはどことなく行間に漂っていました。ベテランになって他に意欲が沸いて来たのか、あるいは本職に疲れて来たのかも知れません。しかしコメディアンが 他の役をやるのは業界では難しいと知っていたはずです。ジム・キャリーの業績が今でも無視されているのがいい例です。ウィリアムズは焦らず時期を待っていたようです。そして今年から来年にかけて3本大人向けの作品が公開されると聞きました。

そのうちの2本を見る機会がありました。すばらしい出来です。これだけを見て、ウィリアムズ過去のコメディーのキャリアを知らない人は、この人はシリアス・ドラマの俳優だと思うでしょう。それも大スターではなく普通の演技で勝負している俳優に見えます。元々才能があったのか、ジュリアードの教育がしっかりしていたのか、この20年をだてに生きていたのではなく常に勉強していたのか、ま、理由は何でもいいですが、足がしっかり地についた演技をしています。

インソムニアではアル・パシーノを立てて、自分は普通のベテラン俳優のような演技ですが手は抜いておらず、パシーノとの対決シーンには強いアクセントを置いています。それがコメディーの時と違いあくが強いという意味のアクセントではなく、狙いを定め命中させたという感じです。

ストーカーはワンマンショーです。ジャック・レモンの域に達しており、これでオスカーのノミネーションが無ければハリウッドは居眠りしているか、時代に乗り遅れ化石になってしまったと言えるでしょう。

手放しで成功を祝福したいのですが、ドイツでは1歩下がった批評や、反対意見も聞かれます。1番はっきりしていたのが「ロビン・ウィリアムズはこれまで自分で築いて来た物を自ら壊しにかかった」という評です。20年かけて築いたコメディー王国を壊しにかかったという趣旨ですが、果たして壊したのだろうか、と思います。1つ王国を築いた後、また新しい王国を築き始めた、2つ目に取りかかったという風には考えられないのでしょうか。いろいろな物を模索していて1つぴったりはまる物に行き当たった、それを極めたから次へ。そういう風に進む自由を認めない人がいるようです。

ストーカーインソムニアを見る時にはロビン・ウィリアムズを見るのだという心構えは必要ありません。できの良いスリラーを見に行くのだとだけ考えれば十分です。そこに出ていたのがたまたまウィリアムズだったというだけで。

後記: 上のリストに載せておきましたが、その後ファイナル・カットという渋い SF でもシリアスな演技を見せ輝いています。

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