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そんなに真似しなくても

考えた時期:2002年10月

この間英国の放送を聞いていたら、ある著名な日本人作曲家の元の奥さんで、本人もかなり有名な女性がインタビューに答えていました。英国の放送ですから使われている言葉は英語。質問されている日本人は通訳など全く必要とせず、直接答えていました。インタビューはスムーズに行き、番組は無事終了。しかし私は目が点になってしまったのです。英語の発音は米語式でしたが完璧。この声だけを聞いたら話しているのが日本人だとは到底分からないほどの完璧さです。しかし話し方はまるで幼児がダダをこねているようで、話の内容は空虚でした。インタビューをした人があまり難しい質問をしなかったからかも知れません。この人の年齢は恐らくミステリー・クラブのメンバーの平均ぐらいか、多少上でしょう。これまでの活動から考えるに頭の中が空っぽということはないだろうと思われる、いや是非そう考えたい人です。

それから数週間、ベルリンの地下鉄に乗っていたら横の方から女性と男性の話し声がしました。英語です。女性は日本人だなと思いました。この女性も米語式ですが、全く外国のアクセントが無く、アメリカ人そっくりの発音でした。それでも日本人だなと思いました。アメリカに育った日本人でなく、日本で英語を勉強したか、ある程度大きくなってから語学留学でもした人かと思います。まだ若い男女でした。男性の方は恐らくアメリカ人ではなく、ドイツ人でしょう。この男性もドイツ人にしては珍しくクセントのない人でした。そして話の内容は限りなく空っぽに近かったです。「是非とも私のこのすばらしい発音を聞いて!」と言っているかのように大きな声だったので車内のちょっと離れた所でも聞くことができました。

普段愛国心がどうのと強調する性格ではないのですが、こういう時だけは考え込んでしまいます。政治的な方向はともあれ緒方という国連の偉い女性は、ぶっきらぼうな発音でぐさっと本題に入ります。彼女がアメリカ人やイギリス人でないことは最初の数秒聞いただけで分かります。たけしが BROTHER で話していた英語も目的優先で、発音は二の次でした。俳優でアメリカ人の役をやるのならともかく、東洋人の顔して、東洋人の肌の色して、東洋人が話しているのだから、アメリカ人のイミテーションは必要無いと思いませんか。

語学熱は日本でもドイツでも盛んですが、何のために語学を習うのか考えてみたことはあるでしょうか。ここは原則論で行った方がいいです。なぜ外国語を習うのか。

用があるから。

これが答の全てではありませんか。外国でホテルを予約するから、買い物するから、駅で切符買うから、空港で乗り換えのゲートをインフォメーションに聞きに行くから etc. もちろん日本にいて外国人の友達を作るとか、彼女を作るとかいうのもれっきとした目的です。

ハリウッドで映画に出るのでしたら徹底的にコーチがついて発音を直されます。これは職業上求められるのだから仕方ないでしょう。ハリウッドが第1に念頭に置いているのが国内の観客だというところに大きな理由があるでしょう。映画でも必ずしも全部直されるのではなく、お国のフレーバーを残して出演している人もあります。例えばこの間見事ヘザー・グレアムと共演を果たした The Guru のジミ・ミストリはインド訛りもろ出しでした。

緒方さんのように重要な地位についている人もやはり

用があるから

英語を話します。国際会議でできるだけ手っ取り早くできるだけ大勢の人と意思の疎通をはかるために選ばれたいくつかの言語の中の1つだから英語を使うわけです。

東洋人を皆知っているというわけではありませんが、例えば香港の人は英語に堪能です。でも香港訛り丸出しで議論に集中している人をよくラジオで聞きます。アラビア人がニュースレポートに登場してもアクセント無しの英語はまず聞いたことがありません。皆そんな事は全然気にしていないんです。私も外国に長く住んでいるので英語とドイツ語を使う時の方が日本語より多いです。でも流暢な・・・と言われるように話せるのは、テーマが自分の分野の時だけです。発音までいちいち気にしている余裕はありません。ベルリンのドイツ人は早口だからぼんやりしていると置いて行かれてしまいます。それに、1番肝心なところですが、相手は私の言わんとしている事が理解できればちゃんと返事をしてくれるのです。

発音の超イミテーションをして、人に聞かせたがるのは無論日本人だけではありません。そういうドイツ人を見たこともありますし、知り合いはフランス人よりフランス風に話すドイツ人というのを知っていました。しかしエネルギーをそこに全部使ってしまって、話の内容がお粗末というのはどうなんでしょうか。本人がそれで満足しているからいいのかな。

ある人が王様、女王様という音楽カセットを送ってくれました。とても気に入りました。あの凄いロックの王様ディープパープルがいったい何を歌っているのかと思って聞いてみると、物凄くアホなことを言っている!そういうこともあるんです。英語だからと言って、全てがすばらしく高等な内容とは限りません。戦後長い間かかっていた英語の魔法、そろそろ解けてもいいような気がします。イミテーションはギャグのために取っておきましょう。

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