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ドイツのデパートで朝食を取る

考えた時期:2002年11月

ドイツのお店や窓口のサービスが悪いというのはドイツに詳しい人にはある程度知られています。日本のように世界でも特異な方に入るサービス完璧の国から来ると目立ちます。ドイツに長期滞在しようとしてやって来た人にはサービスの悪さでカルチャー・ショックに陥ってしまう人もいます。

反対にドイツのマーケティングの専門家や関連部門の人、そして最近では一般の人にも日本のサービスの良さはかなり良く知られています。知っていても、分かっていても、批判があってもめげずにやらないのがドイツの特徴だったのですが、例外的に非ドイツ的な商売をして成功しているデパートがあります。知っていて、分かっていて、批判があって、反省して日本のようなサービスを目指してみても、明治初期の侍商法のようで、慣れない事がよくこなせず失敗する、努力が客に伝わって来ないというのもこれまでのドイツのパターンだったのですが、そこを克服して見事客に分かるようなサービスをするデパートが現われました。

とは言ってもこの店はポッと最近現われたのではなく非常に長い歴史があり、大手の1つでした。そしてサービスをやり始めたのも他のデパートに比べかなり早かったです。遅くとも90年代の途中から「おっ、何事だ」と思うような事が時々ありました。何よりも信じられないことに店員が親切になったのです!日本では言葉はありますが、実際にはあまり起こらない「たらい回し」はドイツではしょっ中。働いている店員が自分の店を良く知らないのが当たり前だった時代に、聞けば大体満足の行く説明をする店員がいるデパートに変身し始めました。

ある日台湾人の友達に言われて朝早く起き出し、朝食を取りに行きました。当時の日本の生活感覚で言うと300円か350円ぐらいでコーヒーがマグ1杯、パン2つ、ジャム、バター、卵のセットが食べられました。安物をかき集めたという感じではなく、けっこうおいしかったです。日本だとモーニング・サービスなどは当たり前で、デパートではあまりやりませんが、町を歩いていると喫茶店などがよくやっています。ああいう感じですが、ドイツはそういう伝統の無い国なので、うれしい驚きでした。その台湾人の友達と一緒に開店してすぐ行き、ゆっくり座って食べたのを覚えています。朝食セット以外に炒り卵やソーセージなど他のチョイスもありました。これは今でも続いていて、一時は他のデパートも真似をしていました。

一時はと言うのはなぜか。実は他にも大手のデパートがあり、かたくなに伝統を守って、良いサービスはしていませんでした。冗談かと思ったら本当だったという以下のような話があります。デパートの店員に対する何かのインタビューかアンケート調査で「あなたの仕事で1番邪魔になるのは何か」と聞いたら「客だ」というのが答だったそうです。これを聞いた時私はマジで日本は天国だ、三波春夫は偉大な人だと思ったものです。ですからこの冗談としか思えない話を聞いた時は目が点になってしまいました。しかし、あるベルリンの有名なデパートに行くと「サービス」というのはドイツでは外国語ですらなく、太陽系でない他の星の言葉だと納得せざると得ないというような時代でした。そしてそれが祟ったのか、これまであった3つの大きなデパートの系列(例えば三越、伊勢丹、高島屋といった具合)は全てこのサービスのいいデパートに吸収されてしまいました。最近までは以前の店名を残していましたが、今年に入ってついに全部同じ名前、ロゴに統一されました。文化は高い方から低い方に流れるのが普通で、いいサービスと悪いサービスがあると、大勢は悪い方に流れてしまうものなので、半ば諦め切っていた私は大いに驚いたものです。

お客様は神様です。

日本にいると当たり前みたいな事をここで改めて聞かされ、皆さんには気の毒ですが、例えばデパートで発行するカードで買うと3%の割戻しをする、PC が故障していたらすぐ代わりの物と取り換えるが、現金の払い戻しも提案する、などという事をします。他の店だと壊れていて修理を要求する時でもすったもんだの言い合いがあると覚悟して行かなければなりませんが、このデパートでは何度かすんなり交換してくれて驚いたことがあります。運悪く、買った PC をうちでテストしていたら電源コードが機能不良だったなどということがあり、やれやれまた一悶着かと思ったら、あっさり非を認めてすぐ換えてくれました。このページを書いている PC も実は買った時故障があり、10日ほどの間に3回換えてもらって4台目です。いったい何というだめな PC を買ったのかと驚くかも知れませんが、これは運の悪い話で、デパートにも同情してしまいます。どうやら運搬する際コンテナーが日の強くあたる場所に積んであったらしく、その辺の数台が全部同じように壊れていたようです。3台目がだめだった時、デパートの人は現金を全額払い戻すか、似たような他の製品に換えてはどうかと提案しました。私はこのノーネームの PC の性能に感激していたので、これにしておきたいと言いました。そして4台目はかなり酷使しましたが、何とかまだ動いています。日本人ならこのあたり店も客もよく分かっています。アフターサービスをちゃんとしておくと、客は信用して、また来てくれる・・・当たり前の話ですが、こういう理屈があまり通らない国でした。ところがこのデパートでは日本の常識が通る!驚きました、当時。

その後ドイツの景気はどんどん悪くなり、日本を数年遅れて追っているような格好になって来ました。当然金の切れ目がサービスの切れ目と覚悟していましたが、そうでもないようです。あちらこちらで恐ろしい割引があり、価格破壊が始まっているように思えますが、それでもまだサービス精神は捨てていないようです。それでこの間はもらったクーポンを持って久しぶりにまたカフェに朝食を食べに行きました。最初の週はコーヒー2杯ただ+カップのプレゼント。次の週は朝食1食サービス。3週目はコーヒーとマフィンのサービス。大手のデパートとしてはこの程度の出費は大した事がなく、来てくれた客がついでに店で何か買ってくれることを期待しているのでしょう。カフェのサービスがあろうが無かろうが来る客は何か買いに来るし、興味の無い人は元から来ないから、結局これで即売上が伸びるかどうかは疑わしいです。ですが雰囲気の明るい広々としたカフェで朝食というのはたまには良いです。で、つられてついふらふら行ってしまいました。

異次元の言葉 ‐ サービス ‐ 異星人の言葉 ‐ サービス ‐ 異国の言葉 ‐ サービス ‐ 果たしてベルリン語として定着するか。

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