音楽のページ
訃報:
ジョン・ピール† (John Peel)
英国の音楽界のロビン・フッド
2004年11月
先月はカリスマ的DJジョン・ピールが65歳で亡くなり、悲しみの月になりました。この人は40年ほど前、元々は海賊放送ラジオ・ロンドンで名を上げ、その後英国の国営放送局の音楽番組の中心的存在になりました。彼の功績で1番に挙げるべきは、レコード会社の薦めに乗って曲をかけるのではなく、辛口の解説をつけながら、自分が見つけて来た世界各国の音楽、自分の所へ世界中から送られて来た無名の曲を、率先して自分の番組でかけた点。パンク、レゲー、ヒップホップ方面では彼に感謝をしているバンドが多いです。仕事をしていた放送局が世界ネットを持っていたため、彼が放送で扱ったことでその後世界的に有名になった人たちも多いです。ちょっと見ただけでもこんな名前が挙がって来ます(氷山の一角)。
・ Billy Bragg
・ Blur
・ Captain Beefheart
・ The Fall
・ Joy Division
・ New Order
・ Pink Floyd
・ Pulp
・ Roxy Music
・ The Sex Pistols
・ The Smiths
・ T Rex
・ The Undertones
・ Velvet Underground
といった具合で、自分の番組でかけた曲の九割方は、それまでどこの局でも放送したことが無い物でした。
パンクやロックが中心の番組を持ってはいましたが、彼が関心を持った音楽はジャンルが限られておらず、オフラ・ハザ(中近東ディスコとでも名付けたらいいような、モダンな中近東のポップス)を発掘したのも、ブルガリアの家庭の主婦のコーラスを発掘したのも彼。主婦のコーラスはベルリンに来た時に見に行きましたが、すばらしいです。
ドイツでは一時一世を風靡した天才デュエット・グループ、フォイエ・デザールと親しく、ピール・セッションという企画ではドイツで売れようが売れまいがお構いなくレコーディングさせていました。私のために知り合いがリクエストしてくれて、デュエットの1人、マックス・ゴルトの曲が番組でかかったこともあります。ゴルトにはベルリンで2、3回言葉を交わしたことがありますが、どちらかと言うと音楽家と言うより、文学肌の青年です。
ピールはDJとしてはビートルズをきっかけにアメリカのテキサス、ダラスから名を挙げた人です。それまでは英国で兵役についたり家業を手伝ったり、さまざまな職業を試していました。戦争で父親が出征していた事情などもあり、自分の生まれた家族ではあまり親子関係が密でなかったようですが、兄弟やその後の結婚で築いた自分の家族とは仲が良かったようで、幸せな結婚をし、大勢子供も生まれ、友人もたくさんいたようです。30年近く住みついていた小さな町へサインをもらいに訪ねて来た人に対しても親切で、評判のいい人でした。先月休暇を兼ねてペルーのクスコへ行っていましたが、10月25日夜病気が悪化し、急に亡くなったそうです。直接の死因は心臓麻痺。糖尿を患っていたという話も聞いたことがあります。亡くなったと聞いて首相が一言コメントをするような重要人物、勲章ももらっていますが、この人はそういうの無しでも国民からは実質的に国で1番偉い人の中に数えられています。特に庶民に人気が高かったです。
私も知り合いの誕生日に合わせてリクエストした曲をかけてもらったことがあります。まだ年末ではありませんでしたが、スタジオはちょうどクリスマス、お正月の録音を終えて休暇に出る直前。私が知らずにそのぎりぎりの時期にリクエストをしたら、「テープ送って来たら、おしゃべりの時間を詰めて入れてあげる」と言われ、慌ててテープを送ったことがその後も記憶に残っています。もうそれから何年にもなりますが、その後も同じ時期に休暇を取っていたようです。パンクやロック番組なのにかけてもらったのはソーラン節(事前に本人にどういう種類の曲か説明しました)。冗談も分かる人でした。
最近は現役の仕事をやや減らし、回想録を書いていたそうなのですが、ある日PCの間違ったキーを押してしまい、ほとんど全部を消してしまったそうです。貴重な経験談などが満載されていたそうなので残念としか言いようがありません。
どうやら11月分は録音を終了していたと見え、現在も番組は放送されています。ご冥福をお祈りします。同じく長寿番組を持っていたアリスト・クックがあれほど長生きしたのに(享年95歳)、65歳とは早過ぎる!
墓石に Teenage dreams, so hard to beat と刻んで欲しいと生前言っていたそうです。希望通りになることを祈っています。
まさか、ピールのせいではありませんが、今月はブルースがやたら少ない。
場所 | アーティスト | 詳細 | ジャンル | メモ |
Acud Café | Pinx | ファンク | ||
b-flat | Haunted By The Blues | Dietmar Kirstein, Eckhard Petri, Stefan Ulrich, David Jehn | ブルース | |
Deponie No 3 | Tom Blacksmith & Band | シカゴ・ブルース | ||
Deponie No 3 | Nina T. Davis, Kat Baloun | ブルース他 | ||
Eierschale Zenner | The Blue Voodoo Blues Band | Jazz Club | ||
Junction Bar | Soul Syndicate | Nico de Abreu, Marcus Kampfert, Gerit Borth, Olli Ostendorf, Bernd Wallrodt, Manuel Ganzer, Stefan Schifferdecker, Maxim Varshavsky, Damian Probiesch | ソウル | |
Junction Bar | Indijana’s Indigo | Indijana, Thomas Baumgarte, Oliver Schlüter, Jingo Kurkowski, Stephan Gatti | リズム & ブルース、ボップバラード、ロック | |
Künstlerklub Die Möwe | Rick Howard & Berlin Blues Band | R. Howard, Tom Blacksmith, Alex, Carlos Dalelane | ジャズ | ブルース・バンドと銘打ってあるのですが、曲の種類の方はジャズとなっています。 |
Mudd Club | The Black Keys | ガレージ・ブルース・パンク | ||
Quasimodo | Soulounge | Astrid North, Florine Dimonye, Esther Cowens, Platnum, Grace & Roger Cicero | Nu Soul | |
Quasimodo | Soulounge | Sven Bünger, Kai Fischer, Susanne Vogel, Bela Brauckmann | Nu Soul | |
Quasimodo | Climax Blues Band | Colin Cooper, George Glover, Lester Hunt, Neil Simpson, Roy Adams | 英国ブルース | |
Quasimodo | Vanessa Mason & Band | ソウル他 | ||
Quasimodo | Chris Farlowe & The Norman Beaker Band | ブルース、ロック | ||
Quasimodo | Jocelyn B. Smith & Band | Jocelyn B. Smith, Volker Schlott, Henning Schmiedt, Eric St-Laurent, H. D. Lorenz, Thomas Alkier | ファンク、ソウル、ジャズ | 先月もご紹介したかと思いますが、スミスは、自分が歌うだけでなくベルリンでソウルのワークショップ、授業もやっている人です。もう弟子はかなりいるのではないかと思います。 |
Tränenpalast | Victor Davies | Victor Davies, Joe Holweger, Kerim Gunes, Henry Bowers-Broadbent, Steve Wilcock | ソウル・ファンク | |
Tränenpalast | ConSOULidation Band | メイン: Mary K. and Chilli Dee | ソウル、ヒップホップ・ミーツ・グルーヴ・ジャズ(ライブ・レコーディング) | |
Vollmond | Blues Jewelier's Night | セッション | ||
Vollmond | Jan Hirte | ブルース・ジャム・セッション | ||
Yorckschlösschen | Bailey Brothers Trio | ブルース | ||
Yorckschlösschen | Rudy Stevenson Band | |||
Yorckschlösschen | Tayo & The Soul Knights | ソウル・ジャズ |
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