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コントロール / Control

Anton Corbijn

2007 UK/USA/Australien/J 122 Min. 劇映画

出演者

Joe Anderson
(Peter Hook - スティフ・キトゥンズのバシスト、後、ワルシャワ、ジョイ・ディヴィジョンとなるバンドの創始者)

James Anthony Pearson
(Bernard Sumner - スティフ・キトゥンズのギタリスト、キーボード、後、ワルシャワ、ジョイ・ディヴィジョンとなるバンドの創始者)

Sam Riley
(Ian Curtis - 職安の職員、スティフ・キトゥンズのリード・ボーカル兼作詞)

Samantha Morton
(Deborah Curtis - イアンの妻)

Richard Bremmer
(イアンの父親)

Tanya Myers
(イアンの母親)

Martha Myers Lowe
(イアンの姉妹)

Mary Jo Randle
(デボラの母親)

Eady Williams
(イアンの娘)

Alexandra Maria Lara
(Annik Honoré - イアンの愛人)

Harry Treadaway
(Stephen Morris - スティフ・キトゥンズのドラム)

Lotti Closs
(Gillian Gilbert - イアンの死後入ったメンバー)

Craig Parkinson
(Tony Wilson - テレビ司会者)

Toby Kebbell
(Rob Gretton - DJ)

Ben Naylor
(Martin Hannett - プロデューサー)

Herbert Grünemeyer (医師)

見た時期:2008年8月

日本もお金を出している作品。作りは非常に英国的です。コントロールというタイトルの作品を何度も見ましたが、それぞれ全くテーマが違います。今回は音楽関係です。

ソウル・ファンで、そのまま化石化してしまった私なので、その後出て来たパンクなどの曲には関心がありません。そのためこのバンドの事は知りませんでした。しかし1曲はベルリンでも耳にしており、後で聞くとそれなりに有名なバンドなのだそうです。

皮肉なことにこのバンドの曲だということで映画の中で流れたものを聞いていると、最初の曲が良く、後期の曲になるに連れてだめだなあという印象になりました。知名度は後期の方が増しています。

このバンドはパンクの後に出て来たという風に位置付けされているそうで、現在も亡くなったシンガー以外は活躍しているそうです。

★ 英国の音楽関係者

・・・を描いた映画としてはちょっと前にブライアン・ジョーンズ ストーンズから消えた男をご紹介しました。そこで犯人かも知れない男を演じていた人と、コントロールで主人公の妻を演じている2人がイン・アメリカ 三つの小さな願いごとで夫婦を演じているのも妙な偶然です。

ブライアン・ジョーンズ ストーンズから消えた男コントロールは全く話の運びは違うのですが、どことなく漂う雰囲気が似ています。英国の音楽シーンが共通項だからなのでしょうか。詳しい事情を知らないので、理由の見当はつきません。

★ 知らないバンドの話

コントロールはあるバンドのリード・ボーカリストが自殺に至るまでの話で、夫人の出版した本が元ネタとして使われています。

後にジョイ・ディヴィジョンとして有名になるバンドなのですが、主人公のイアン・カーティスが友人と始めたバンドが地元マンチェスターでそこそこの成功を収めます。本職は職安で仕事を斡旋する人で、結婚をし、子供もできます。結構バンドの名前が知られて来て、ファン層というのができた頃自分の方から積極的に近づいて来る女性が現われます。バンドにはつき物の話です。

家の妻はどちらかと言えば公務員の妻といった生活ぶり。イアンが浮気をするようになってからは夫の公演には招待されなくなり家にいます。しかしいずれはばれる不倫。ばれてしまいます。別居生活が始まります。

バンドは有名になると独特のパーフォーマンスをやらかすことがあります。このグループもそれをやっているように思われています。ところが実は全く事情が違います。映画では子供時代が詳しく描かれていませんでしたが、イアン・カーティスは映画で描かれる時代からは時々癲癇の発作を起こします。何がきっかけなのかは分かりませんが、本職の職安で働いていた時に、発作を起こした女性を見ています。

最初の発作の後、病院から副作用の強い薬を山ほど貰います。映画でその行けない医者の役をやっているのがドイツでは有名なロック・スターのグリューネマイアーです。

舞台のライトが発作を誘発するらしく、スタッフは配慮してライトをあまり扇情的にしていません。それと彼の書いた詩が合わさって、内面的なことを表現するアーティストという雰囲気が受けたのかも知れません。

映画の中では自分はマンチェスターのローカル・バンドで良かったという発言があり、事が大きくなり過ぎたことへの違和感、不倫問題で決心がつけ難く、夫人が苦しんでいることを承知していた、そして死の直前に発作が起きていたらしいことなどが誘引となって自殺をしたという風に語られています。映画で取り扱われたシーンは実話の割合が高いようです。

★ 俳優

時々観客の神経に触るような演技を得意とする俳優がいますが、サマンサ・モートンもそういう役で何度か見たことがあります。本人がそういう人だということではなく、そういう役を引き受けてしまったということなのでしょう。私は彼女の出演作全部を追っていたわけではなく、たまたま見た作品がそうだったようです。似たようなケースにエミリー・ワトソンがあります。非常に印象が悪かったのですが、一度そういうジャンルと全く違う役を見て、目を見張ったことがあります。そちらではとても輝いていました。

コントロールの中ではモートンは俳優としての格では1番。ですが主演はサム・ライリー。まだ出演作は少なく、私が見たのはこれが初めてです。イギリスの凄いところはほとんど無名だったり、国内でしか知られていない人でも基礎のしっかりした演技をすることです。

この作品を見た後で私は歌手本人のビデオを見たのですが、ライリーはとてもよく勉強しており、ライリーの演じるカーティスの方がカーティスという人物について確信の持てる振る舞いでした。カーティス本人の方が不安定で、内面が出来上がっていないような印象。大いなる矛盾です。

★ 良い評価

監督は音楽に造詣の深い人らしく、良い評判です。作品も有名な映画祭で高い評価を受けています。にも関わらず、私はあまり好きになれませんでした。

映画の脚本や演出に責任があるのか、カーティスをめぐる事情に私が好きになれない理由があったのかは分かりません。白黒にしたり、鬱っぽい雰囲気を出したりと工夫は見られます。

暗い映画、暗い主題でも良い作品というのはあり、私の個人的な評価が高い時もあります。しかしコントロールはあまり評価が上がりませんでした。

まだ漠然としていて本当に何が引っかかっているのかは分からないのですが、1つ気になるのは周囲がカーティスをとことん利用したのではないかという点。映画ではそれは描かれていません。しかし芸能人をこれ以上無理だというまで利用し尽くすという話はどこでも聞かれます。スキャンダルを起こしたら今度はそれを売りにして利用、1度降板しても翌日にはどうやって復帰させるかが堂々とテレビで話題になったりもする世界です。2度失敗しても即日また復帰への道が議論される世界。

カーティスが病気のせいでああいうパーフォーマンスになっているのか、舞台上の演技なのかが分からないぎりぎりの線で営業していたのは確かでしょう。その辺のすっきりしない雰囲気が伝わって来るため、私が拒否反応を起こしているのかも知れません。私は古臭い人間なので、病気など個人的な理由を客寄せパンダにしては行けないと考えるのです。

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