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アステリクスとオベリクス /
Astérix et Obélix contre César /
Asterix & Obelix gegen Cäsar

Claude Zidi

1999 F/D/I 109 Min. 劇映画

出演者

Christian Clavier
(Astérix - 職業:村の英雄)

Gérard Depardieu
(Obélix - 職業:石切り職人)

Michel Galabru
(Abraracourcix/ドイツ名:Majestix - 職業:酋長)

Marianne Sägebrecht
(Bonnemine/ドイツ名:Gutemine - 酋長夫人)

Claude Pie'plu
(Panoramix/ドイツ名:Miraculix - 職業:村の長老、漢方医のような医者)

Daniel Prévost
(Prolix/ドイツ名:Lügnix)

Pierre Palmade
(Assurancetourix/Troubadix - 職業:村の楽師)

Laetitia Casta
(Falbala - よその村から来た美人、オベリックスの憧れの人)

Hardy Krüger Jr.
(ドイツ名:Tragicomix - ファルバラの婚約者)

Sim
(Agecanonix/ドイツ名:Methusalix - 杖をついている老ガリア人)

Arielle Dombasle
(Agecanonix 夫人/ドイツ名:Methusalix夫人 - メトゥザリックスの若い美人の妻)

Jean-Roger Milo
(Cetautomatix/ドイツ名:Automatix - 職業:村の鍛冶屋)

Jean-Jacques Devaux
(Ordralfabetix/Verleihnix - 職業:村の魚屋)

Gottfried John
(Jules César/ドイツ名:Julius Caesar)

Roberto Benigni
(Lucius Detritus/ドイツ名:Tullius Destructivus - 策略家ローマ人、シーザーの地位を狙う)

見た時期:2005年6月

予定外の入院という事態になった上、トイレに行く以外は動いては行けないという命令。する事が無くて、仕方なくテレビを借りました。電話使用料などを払うのと同じチップを用意しなければ見えないのですが、料金は無料。それで長年1度は見てみたいと思っていた CNN と BBC のテレビニュースを見てみました。

ところがあて外れ。同じニュースの繰り返しが多く、CNN の方は顔を出す人が皆演技をしています。ドラマ番組ではなく、ニュースのはずなのに、とがっかりしてしまいました。出る人が皆劇的効果を狙って顔の表情を歪めてみたり笑ってみたり。変な番組です。BBC の方はそれに比べるといくらかまともでしたが、それでもわざと悪役を演じて見せるインタビューアーがいたりしてあまり見ていて感じが良くありませんでした。1人、2人、普段ラジオで名前を知っている人の顔を見ましたが、番組としてはワールド・サービス系のラジオ番組の方がずっとおもしろかったです。

いくつかのドイツの番組をチャンネル・クロッシングしてみましたが、つまらない番組ばかり。1番おもしろかったのが病院を紹介する内部ビデオという体たらくです。で、数日後テレビ番組表を取り寄せ、1日中劇映画だけをやっている局が無いか淡い期待を抱いて探してみましたが、ありませんでした。日中ぽつんと物凄く古い映画が上映され、おもしろい作品は早くても午後8時頃から始まります。ところがそこに出て来る作品はほとんどこのコーナーで紹介済み。まだ見ていない作品は滅多に出て来ません。ようやくおもしろい作品が見付かると、午後10時から午前2時というような時間帯。最初に入院した時は1人部屋に隔離されていたのでいつ何をしても良かったのですが、その時はすぐ退院だろうと思ってテレビを借りていませんでした。2度目に入院した時は2人部屋で、同室になった人が手術を控えた上、不眠症。邪魔をしては悪いので、10時以降は見ないようにしていました。部屋を暗くして自分の方向に向いているテレビを見ていても、明るい場面では部屋の半分ぐらいが明るくなってしまうのです。

で、結局見られた作品の数はそう多くありませんでした。ファンタに出るようなおもしろそうな、グロテスクな作品は深夜中心。8時台は家族全員で見ていられるような話ばかりです。しかしそれでも以前見たいと思った作品があったので、時間が空いている時は見ていました。時間が空いている時?食事と診察以外の全部の時間が空いていました。

さて、その家族の誰が見ても問題の無い作品の1つがこれ、アステリックス・シリーズです。以前に書いたように、アニメと俳優が演じたものの2種類あります。この日見たのは俳優が演じた最初の作品。フランス、イタリアの豪華スターが揃っています。

ストーリーは私にはおなじみでした。ヒットせず、続編が作れない可能性も考えていたのでしょうか、1本の映画に漫画数篇分のエピソードを詰め込んでいました。フランス人に取ってのアステリックスは日本人に取っての寅さんみたいなもので、観客が来ないはずはないのですが、最初だったので予想がつかなかったのでしょうか。私のような外国人にはそうやって詰め込んでしまったのが失敗に思えました。公開してみると観客動員数は良かったようですが、作品としては安っぽくなってしまったように思えます。

漫画が日本でさほど知られていないので、話について来られる人が少ないのが残念ですが、アステリックスというのはフランスで大成功した漫画シリーズで、1冊1冊がおもしろく、子供より大人に好まれています。同じ本を何度も読む人もいます。見る漫画ではなく、読む漫画。絵がカラフル、愉快なのでまず子供に気に入られますが、チラッと見てその子の両親が虜になってしまうというのが一般的なケースです。

私はドイツに来た当初、ドイツ語を勉強するために読んでいました。なぜ大人まで巻き込まれるかと言うと、フランス人得意の揶揄、皮肉がたっぷり効いている上に、独立精神旺盛なガリア人に対して判官贔屓の気持ちが生まれて来るからだと言えるかも知れません。結構高度な内容も混ざっていながら、アハハと誰もが笑える表現になっています。歴史学的に見てもいい加減な事はしていません。アステリックスとゴート人という1冊ではドイツ人もコケにされるのですが、それでもドイツ人のファンは多いです。(注: ゴート人はドイツ人の先祖のような人たち。)

時代は紀元前50年頃。ジュリアス・シーザーにとってガリア人は長年の目の上のたんこぶ。フランス全土を支配したつもりで、「従え」と言っても従わない村が1つ残っていたのです。その村の住民全体が主人公ですが、その中でも特にチビ・デブ・コンビのアステリックスとオベリックスが代表格。漫画本の他にアニメが何本か公開されているので、アステリックスを知らない人はフランス国籍を返上しろと言われそうですが、外国にはまだアステリックスを全然知らない人もいるでしょう。それで映画の冒頭村の生活、ローマ人との関係などがざっと紹介されます。

注: ガリア人は所謂フランス人の先祖ではなく、現在は海を渡った向こう側に住むケルト系の人たち。

今でこそ海を渡った向こう側、アイルランド、ウェールズなどに限られていますが、全盛期は現在の英国全土、スペインの半分以上、イタリアの上の方、EUのほとんどの国、東ヨーロッパもかなり右の方までに住み、かなり羽振りが良かったです。紀元前1200年から500年という途方も無く昔の話。

アステリックスに出て来る憎まれ役のジュリアス・シーザーの時代にはすっかり力を落としていて、大陸側ではガリア地方、現在のブルターニアが最後の抵抗を続けていた程度。漫画はそこに住んでいる主人公のアステリックス、オベリックス他の村人とローマ軍とのごたごたを扱うことが多いです。

この抵抗は根強く続き、2000年経った現在でもブルターニアの人は当時の言語をしゃべっています。ただ、所属国の公用語フランス語と併用の人ばかりになっていて、何か手を打たないといずれ死後になってしまいそうです。とは言え、クマのプーさんのブレトン語版も出ているようなので、頑張ってもらいたいところ。

本題に入るとすぐ登場するのがアカデミー賞監督兼俳優ロベルト・ベンニーニ。イタリア人の彼はアステリックスの敵国からの出演です。イタリアではローマ人が毎回きっちりコケにされるのでアステリックスの販売は長い間トラブっていました。フランスとイタリアというのはあまり深く考えずに外から見ていると同じ系統の国民と思えないこともありません。両国とも文化が大きく花開いた経験があり、今でも人々は芸術、建築から衣服、食事に至るまで他の国から羨ましがられるように輝いています。かつての栄光の残り火だと悪口を言われても、残り火の輝き方にすら文化があふれています。しかし当のフランス人とイタリア人の間にはある種のライバル意識があり、お互い交流しながらも自分の方が上だという気持ちは消えないようです。ですからイタリアとしては、フランスで大ヒットした漫画をそう簡単に自国で宣伝する気にはならなかったのです。ですからフランス映画にイタリア人の俳優を出すというのも良く考えた上の決定、イタリア人の俳優が出演を承諾するというのもよく考えた上の決定だったのではないかと思います。

漫画の方ではベンニーニ演ずるローマ人がその辺にいるとすぐ周囲で喧嘩が起き、いつもは親切な人たちが心にも無い意地悪い言葉をしゃべってしまうという特技が披露されます。喧嘩を始めた人がしゃべる台詞は全部色が緑に変えてあって、ベンニーニの役は嘘や策略を駆使する腹黒い男という風になっています。活動写真では印刷のように上手く表現することができないので、 彼の腹黒さは比較的単純になっていました。その上あれもこれもと色々なエピソードを取り入れてしまった結果でしょうか、映画全体にアクセントがありません。

お金はかなりかけてあるように見えます。後半のコロシアムのシーンなどは結構大掛かりです。十分に工面できたお金と俳優の使い方を誤ったというのが私の印象です。ですから私には失敗作に見えます。ルビー&カンタンで分かるように、ジェラール・ドゥパルデューは間抜け役も非常に上手に演じることができる俳優。オベリックスというのはアステリックスに比べ頭の中が単純にできていて、何でも真っ直ぐ考える人。それでいてデリケートな心も持ち合わせていて、恋をすると一直線。その辺をもう少し出せるような演出にするべきだったと思います。アステリックスとオベリックスの体の動きもまるでディズニーランドの歩くぬいぐるみのようで、せっかく人物を使っての実写映画にしたのですから、もう少し人間らしくすれば良かったと思います。村の様子もせっかくお金が使えるのなら、もう少し漫画的な面を減らし、考古学的な装飾をきっちりすれば良かったと思います。漫画的にするのでしたら、アニメが多数作られているので、そちらで間に合いますし、アニメはアニメで楽しく見ていられます。

次の作品にはイタリアの宝石モニカ・ベルッチがクレオパトラの役で出ているので、そちらに期待。何かのチャンスがあったら見に行こうと思っています。

参考ページ: Asterix

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