映画のページ

ルビー&カンタン /
Tais-toi! /
Ruby und Quentin

カンタンを追い払うのは簡単ではない・・・

Francis Veber

2003 F 85 Min. 劇映画

出演者

Gérard Depardieu
(Quentin - 強盗)

Jean Reno
(Ruby - 闇世界の男)

Leonor Varela
(Katia/Sandra - 闇世界のボスの妻/不法入国の外国人)

André Dussollier
(精神分析医)

Richard Berry
(Vernet - 警部)

Jean-Pierre Malo
(Vogel - ギャングのボス)

見た時期:2005年1月

ストーリーの説明あり

のっけから下手な駄洒落で始まり申し訳ありません。主人公はクェンティンという名前なのですが、アメリカではないので読み方ががらっと代わり、カンタンといいます。クェンティンの方がクールに聞こえますが、その通り、こちらのカンタンはクールではなく、とんでもなく厄介な男です。何しろ思い込みが激しい。

フランスは最近佳作が増えているような気がしますが、というか私にそういう作品を見るチャンスが頻繁に巡って来ますが、大規模に自国の映画を保護している国なので、脇が甘い作品も大量に出てしまうようです。大スターでも恐ろしい数の作品に動員されるらしく、練れた作品ばかりに出るわけには行かないようです。

この作品も良い面を多少含みながら詰めが甘く、爆笑、歴史に残る喜劇にもなり得るすばらしい人材を備えていながら、あとちょっとのところで手を抜いたというかそんなに細かい所までかまっている暇が無かったのか、テレビドラマ的な規模で終わっています。

何しろ当代切っての名優、主演を1人で張れる大スターが2人雁首揃えているのです。監督もコメディーでは定評のある人。脚本をもうちょっときっちり作り、レノーとパルデューに掛け合い漫才をやらせておいて、脇役をもう少し上手に使えば、ピーター・セラーズとハーバート・ロムは軽く抜けたと思うのです。これは心から「惜しい!」「残念!」と言いたい。

役どころは、レノーが寡黙でクールなやくざルビー。寡黙とは言ってもレオンのような親方に上がりを掠め取られる殺しオタクではなく、頭の方もしっかり。ボスの妻と金を掠め取ってしまいます。しかし事はうまく運ばず、ボスの妻は見つかって殺されてしまい、レノーは復讐を誓っています。しかし現在は別荘暮らし。レノーは顔をくしゃくしゃにしてコメディーを演じる人ではないので、いつもの顔。

デパルデューはやや粗暴さも見える強盗カンタン。昔から家族もおらず、教育も受けなかったため、食べて行くために止むを得ず泥棒をし、その時に暴力も出たりする生活。長年ホームレスで飢え死にか、泥棒かという選択を迫られて生きていました。現在はドジをやって別荘生活。

カンタンはしかし刑務所の問題児。同房になった囚人をボコボコに殴ってしまう癖があるのです。理由はカンタン。普段1人でさびしいので、刑務所に入るともう夢中で喋り捲るのです。「やあ、こんちは、おれ、カンタン」ぐらいですといいのですが、そこから何時間も喋り続けるので、相手はたまったものではありません。そして返事が来ない、俺は無視されたと感じると、カンタンの拳骨がボコ。凶悪犯でもかないません。皆入院。

しかし規則か何かで独房に入れることができないらしく、刑務所所長以下看守全員が困り切っていました。そこへ入ってきたのがルビー。大金を取ったままありかを言わないので、ギャングだけでなく、警察も興味津々。しかしプロのルビーは完全に黙秘を通していました。そこで思いついたのが、この2人を一緒の部屋に入れること。

新しいルームメイトに喜んだカンタンは自己紹介を始めます。ルビーは何も言わない。で、殴られるかと思いきや、ルビーは大喜びで喋り続けます。曰く「君は、文句も言わずじっと聞いていてくれる、君は本当の友達だ!」このあたりで観客はカンタンが思い込みの激しい男だと悟ります。思い込みの世界チャンピオンと言えばやはりピンクパンサーのクルーゾー警部。しかしビル・マーリーも What About Bob? でかなり度の過ぎた思い込み男を演じています。どうやら思い込みは映画のいい素材になるようです。

ここで見せるデパルデューの演技が職人芸。この人はたいていの役はできてしまいますが、ちょっと頭が弱いのかと思わせるすれすれ、ぎりぎりの演技が冴えています。レノーはデパルデューの引きたて役ですが、この人は不平を言わずどんな役でもにこにこしてやる俳優として有名。自分が引き立つ役は10本に1本ぐらいあれば十分、あとは映画産業に貢献するのだと考えているかのようです。そういう風に割り切ったプロが2人で演じているので、この掛け合い漫談はなかなかいいシーンになり得ます。デパルデューの目線が何とも言えず本気でいいです。

さて、恋人を殺されたルビーはボスに復讐を誓っているので、何としてでも刑務所を脱走しなければなりません。プロなので仮病を使い入院。精神安定剤のような物を注射されているのですが、ある日金で看護人を買収。注射の液は体を滑り落ち、床へ。カンタンはせっかくの親友がいなくなり落胆。自分も入院するために偽装自殺。まんまと入院を果たします。

カンタンのことなどは眼中にないルビーは自分のプランで脱走をはかろうと着々と準備を進めます。一方大親友のルビーを刑務所から出してやろうと思いやったカンタンは知り合いに連絡をして、デンマーク式の脱走計画を練ります。なぜデンマーク式かと言うと、ファンタで1度これとそっくりのデンマーク映画を見たことがあったからです。どちらがぱくったかと言うと、カンタンの方。デンマーク映画は1年前に作られています。あちらもかなりドジな男たちの話でしたが、カンタンも予想外の出来事になり、ドタバタ。しかしとにかく2人は負傷しながらも脱走に成功します。

カンタンなどにはついて来てもらいたくないルビーですが、助け出してくれたのはカンタンですし、自分は負傷して体が思うように動きません。しぶしぶルビーを受け入れます。ルビーはギャングの一味にハイテク車で追われていますが、それでいて自分の方も相手を追っています。ドイツの高級車で、コンピューターで居所が分かってしまう車ですが、それを巧みに使ってギャングの後を追います。ギャングの方は男が3人、4人雁首並べているのに車を奪われてしまったりするので、ルビーはかなりのプロだと言うことが分かります。その周囲をさらに警察も追っています。

カンタンとルビーは寝泊りするために空家になっているレストランを見つけます。そこでカンタンは自分のこれまでの人生や将来の夢を語ります。カンタンはかたぎだったらレストランをやりたかったのです。ルビーの方は同じレストランにホームレスの外国人女性がいるのを見て「おや」と思います。彼女が殺されてしまった恋人にそっくりだったのです(二役)。不法入国しているのでちゃんとしたアパートも借りられず、ホームレス同様の生活をしている彼女にルビーは心を惹かれ、親切にします。

こうなると怒るのはカンタン。自分はのけ者です。で、ルビーがいない間にボスに電話をかけ、居所を知らせてしまいます。この時のパルデューの豹変ぶりもなかなかの演技。愛情を拒否され傷ついた男の怒りです。85分したら何とか結末に持ち込まなければ行けないので、大勢集まって来ます。ドンパチが始まる前にルビーは隠し場所から札束を取り出し、女の子にあげます。「あそこの宿だったら身元なんて野暮なことは聞かれずに住むことができるから、そこから学校に行け」と言い残して去ります。それからはボスとの対決。

ある意味で裏切り行為をしたカンタンですが、そのためにボスをおびき出しやっつけることができたので、2人はまた肩を並べてムショ行き。めでたしめでたし。パルデューの演技が上手で、裏切ったのか友情なのか分かり難い表情。この後2人は離れられなくなるので、続編が作られる可能性も否定できません。

ちょっと気になったのはパルデューの痩せ具合。以前の彼を見ている人なら激痩せと言うかも知れません。あごなどはとんがっています。ちょっと前は彼は太り過ぎていて、ドイツのジャーナリストが心配するほどでした。ヴィドックを演じた時はあの巨体でどうやってアクションを演じたのだろうと不思議に思うほどでした。その頃から比べると20キロぐらい落としたのではないかと心配してしまいます。痩せること自体は血圧が下がったり、色々いいことがありますが、病気が原因で痩せたのでないことを祈ります。(パルデューはかなりのワイン通で、自分のワインを作るような人です。という事は肉料理も好きなんでしょうねえ。)

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