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Fカップの憂うつ /
Slums of Beverly Hills /
Hauptsache Beverly Hills

Tamara Jenkins

1998 USA 91 Min. 劇映画

出演者

Alan Arkin
(Murray Samuel Abromowitz - ミッキ−の弟)

Natasha Lyonne
(Vivian Abromowitz - サムエルの娘)

Eli Marienthal
(Rickey Abromowitz - サムエルの息子)

David Krumholtz
(Ben Abromowitz - サムエルの息子)

Carl Reiner
(Mickey Abromowitz - マーリーの成功した兄)

Rita Moreno
(Belle Abromowitz - ミッキ−の妻)

Marisa Tomei
(Rita Abromowitz - ミッキ−の娘、ドラッグ中毒)

Kevin Corrigan
(Eliot Arenson - 隣の少年、殺人鬼マニア)

Jessica Walter
(Doris Zimmerman)

Mena Suvari
(Rachel Hoffman)

Marley McClean
(Brooke Hoffman)

Mary Portser
(Hoffman)

見た時期:2005年6月

凄いタイトルがついていますが、ピンク映画ではありません。ドイツ語は《ビバリー・ヒルズでさえあれば、あとはどうでもいい》という意味。英語では《ビバリー・ヒルズの貧民街》。どれも本質を突いています。

日本語では変なタイトルですが、主人公のティーンエージャーの女の子にとっては文字通りの憂鬱な問題。的外れなタイトルではありません。奇をてらってつけたタイトルでもなく、本当に主人公はFカップで憂鬱なのです。日本は胸が小さ目の人が多いのですが、欧州に長く住んでいると胸が大き過ぎて困っている人というのをわりと頻繁に見かけます。日本では最近巨乳などとあまり品の良くない言い方が流行っていますが、日本や欧州、アメリカでは胸の大きさで人格の評価までされてしまう事があるらしく、女性にとっては結構深刻な問題です。

最近チラッと見たニコール・キッドマンの古い映画では胸が無いと言ってもいいぐらいで、こういう悩み方もあるわけですが、と言うか日本ではお馴染みの悩みですが、大き過ぎるというのも当人に取っては結構マジな問題のようです。そういう問題とは全く関わらず能天気に生きていた私なので、これ以上コメントしたくありませんが、シリコン入れていると車の事故などで破裂した後はかなり危険が伴うという話を聞いた事があります。親に貰った物だけで十分ではありませんかとは言いたいです。オリジナル・サイズのあなたを気に入ってくれない男はあなたの恋人にふさわしくありませんぞ。

本当のテーマは家族と思春期の問題。まだ成人していない子供に心配をかけるような親、母親がおらず他は全部男なので、どうしたらいいか何も相談できない少女、家庭内に閉じこもってあまり外界と接触したがらない父親の問題。そして成功した兄とこれまで1度も成功した事の無い弟の確執。難しい問題を集め上手に料理しています。演じている人たちの功績も大きいです。誰も派手な事を試みず、スタンド・プレイ無しで、地味に演じています。

65歳になる現在まで50年間兄に食わせてもらっている弟というのがあの有名なアラン・アーキンの役どころ。どういうわけかお金をためる事もできず、意味のある使い方をする事もできず、稼ぐ事もできない人が3人の子供の父親に納まっています。母親でなく、父親が子供を引き取っているというアメリカでは少数派の状態。その子供たちが徐々に育ち、間もなく成人です。男の子の事はまだ父親にも分かるのでしょうが、女の子の事はあまり分からないらしく、的外れな事をアドバイスしたりしてしまいます。最近のファッションなどは無視です。

ホームレスではないのですが、しがないアパートを転々。夜逃げ同然に前のアパートを引き払う事が続いています。それが今回はどういうわけか決して安いとは言えないビバリー・ヒルズでも良いアパートにおさまります。ドラッグ中毒の姪の面倒を見るという条件で兄から仕送りを受ける事になったため、急に金回りが良くなったのです。

引越しが多いと子供は全然友達ができないかたくさんできるかのどちらかになってしまいます。ビビアンは人とのつながりを作れる少女で、早速隣の若者エリオットと知り合います。両方とも思春期なので、チラッとセックスに対する興味もありますが、ビビアンは長く続く引越し生活でやや孤独。それでアパートの洗濯室で時々エリオットと話したりします。父親が引き受ける事になった姪リタは実はかなりいい加減な女性ですが、ビビアンにはいい友達になります。兄は俳優になる事を夢見ているのでビバリー・ヒルズという土地に住むのはベスト。エージェントやバイトを探して回っています。

ようやくビビアンも落ち着いた生活ができると思い始めた頃、問題が起き始めます。ドラッグのリハビリ・センターから抜け出したリタの世話がなぜかビビアンに回って来てしまいます。これを見ていても父親があまりしっかりしておらず、娘の方が大人の面があるのが分かります。それを外見だけは一応きちんとしているアラン・アーキンが演じているところがおもしろいです。ビビアンは父親から変な服を押しつけられあまりぱっとしませんが、父親と違って自分に欠けている物、必要な物を自覚する能力は備えています。リタは一応看護学校で勉強をするという触れ込みになっていますが、突然苦し紛れに思いついた事で、全く本気ではありません。このいい加減さを演じているマリサ・トメイ、だめ父親のアラン・アーキン、仕方なく頑張らされているナターシャ・リオンはとても上手です。脇を固めている少年たちも自然で、良いアンサンブルを作っています。

父親の方針は家族が協力して暮らす事ですが、父親が頼りにならない上、子供たちは独立する年齢に近づいて来るので、なかなか上手くまとまりません。それが物語りの最後にはまたまとまります。しかしその理由はマリサ・トメイの自堕落な生活が両親にばれてしまい、家に戻る事になってしまうからです。話し合いの場で激しい兄弟喧嘩になり、姪の世話=仕送り=楽な生活という図式が崩れてしまいます。また元の貧乏生活に逆戻り。一時不安から解放される生活をし、女性と親しく話ができたビビアンですが、全ては振り出しに戻ってしまいます。また家族が協力し合って生きていかざるを得ません。父親の方針がこういう形で実現する事の皮肉、こんなに若い、青春を謳歌するべき人たちが親に振りまわされる事の不条理さが苦く漂いながらのエンディングです。

低予算映画ではあると思いますが、俳優がよく頑張っています。

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