映画のページ

モンスター・イン・ロウ /
Monster-in-law /
Das Schwiegermonster

Robert Luketic

2005 USA 102 Min. 劇映画

出演者

Jennifer Lopez
(Charlotte Cantilini - いくつかのアルバイトで食いつないでいる30歳ぐらいの庶民)

Jane Fonda
(Viola Fields - 何十年もスターだったニュースキャスター)

Michael Vartan
(Kevin Fields - スター外科医、ヴィオラの息子)

Wanda Sykes
(Ruby - ヴィオラの長年のアシスタント)

Adam Scott
(Remy - シャーロッテの恋人で無い同居人)

Annie Parisse
(Morgan - シャーロッテとレミ-の友達)

Monet Mazur
(Fiona - ケヴィンの前の恋人)

Stephen Dunham
(Dr. Chamberlain - ヴィオラの精神科医という男)

Jenny Wade
(Samantha Flynn)

見た時期:2005年5月

いや、凄い。エネルギーの要る作品です。見る前にしっかりご飯を食べておきましょう。

アハハの・・・エンドだとばれます。物語の重要部分はそこに至るまでの過程。

ドイツ語でも英語でもモンスターとつくので、ファンタに出るような作品だと思ったら早とちり。ジェーン・フォンダやジェニファー・ロペスがドーン・オブ・ザ・デッドみたいな作品に出たら愉快ですが、それは将来に期待することとし、今回は家庭問題。ドイツ語のタイトルもずばり《怪物姑》。

あの華やかなジェニファー・ロペスが家庭問題の映画に出ると聞くと意外な気がする人もいるかと思いますが、彼女は家庭とか出身、結婚などというテーマに関心があるようです。そういう映画に出る時は結構マジです。体裁はたいていラブ・コメディーとなっていますが、女性が見ているとちゃんとマジな部分も伝わって来るようです。

★ フォンダ家のジェーン

ジェーン・フォンダは古い時代の彼女を知っている方にはおなじみ。変身の名人で、世界政治にはショーン・ペンなどよりずっと以前から大きな関心を持ち、政治のいくらかは動かせる立場にいたこともある人です。私には彼女は自分の私生活で足りない部分を世界を動かすことで補おうとしているように見え、当時も今もあまり肯定的には見ていませんでした。というか、彼女のアピールにつられて自分が動こうという気にはなりませんでした。どちらかと言うときつい家庭環境に育ち、内面的には苦しい人生を送っていた人なので、「長い間ご苦労様、大変でしたね」と声をかけたくなってしまいます。その御褒美なのか、とにかく凄いアウトフィットです。

1937年末の生まれなので御年67歳。日本人の67歳の女性ですと彼女よりずっと若く見える人がたくさんいますが、アメリカ人、ハリウッドの人となると、そう多くありません。中には度重なる外科手術で却って妙な姿になってしまう人もいます。ところがジェーン・フォンダは出る皺、たるむ肌はある程度受け入れ、化粧品、運動、衣服などで補える所はそれで補い、うまく年を取っているようです。外科手術や顔の皺をのばしたりやっているのかも知れませんが、やらなかったか、最小限にしておいたのかも知れません。ピカピカに磨いて60歳台なのに35歳に見えるような不自然さはありません。この年齢でこういう姿にたどり着いたとすれば、40歳を通過するあたりで自分の顔に責任を持とうと思ったのかも知れません。ハノイ・ジェーンとまで言われたフォンダ嬢、自分の居所を探してあれこれやっていましたが、だんだんアイデンティティーがまとまって来たようです。

★ ジェーン対ジェニファー

《ジェーン・フォンダの15年ぶりのカンバック》とのふれこみですが、その相手にジェニファー・ロペスというのもまた凄いスケールです。そしてロペスは堂々たる貫禄。ドイツでは「これに比べたら、デニーロのミート・ザ・ペアレンツなんぞはカワイイ、カワイイ」とのふれこみですが、まさにその通りです。スケールの大きいこと。

ご覧になれば分かりますが、この2人、自分の事を笑い飛ばす鷹揚さがあり、こちらも安心して笑えます。女性がコメディアンとして成功するのは男性に比べ難しいようですが、ジェニファー・ロペスにコメディアンの才能があるというのは随分前から分かっていました。しかしジェーン・フォンダもそれにしっかりついていける程度の度胸があります。彼女これからも時たまコメディーをやったらロバート・デニーロをすぐ抜けるのではないかと思います。

ちなみにこれはアクション映画で、アクション部門での主演は2番目にクレジットされているジェーン・フォンダです。彼女がなぜ2番目で我慢したのか、そして自分の醜い面全開のこの作品に快諾したのか。それは全体のスケールを見ると分かります。醜い役ではありますが、ゴージャスです。嫌がらずに出た場合、得る物も大きいです。これで長い間のブランクは一挙に解消。その上、今までと違う役でフォンダを使ってみようと思う監督が出るかも知れません。メリル・ストリープが乗り損ねたコースにフォンダがダークホースで飛び出し、大きく水をあけたという印象です。

ジェーン・フォンダの作品はどれを見ても上手いと思ったことがありませんでした。政治的なメッセージをたっぷり含んでいながら、感情に走り過ぎて、見た後メッセージが頭に残らない物が多かったです。オスカーを取ったのも上手いからではないでしょう。しかし今回は彼女の人生、個性をを上手に脚本に織り込み、どこまでが地でどこからがフィクションなのかが分からないようにしてあります。巧みに見る人の興味をそそります。

ジェニファー・ロペスの視点から言うと、今度もまた教育映画です。彼女は元から演技で勝負する気は無く、主題で勝負です。私はパフ・ダディーとジェニファー・ロペスが結婚したらいいと思っていた1人で、それはかないませんでしたが、その後ジェニファーもパフ・ダディーもそれぞれの方法で社会に貢献し始めました。他愛ない、楽しい映画を作っていながら、実は家庭問題を扱っていたりして、「若い女性よ、困った時はこうしなさい」というメッセージが時々送られて来ます。パフ・ダディーの方は先日の大統領選挙の時、さかんに若い人に「選挙に行け、サボるな」というメッセージを送っていました。儲けるばかりでなく、儲かった後には人のためにも少し働こうという了見のようです。

★ 笑いの陰の辛さ

さて、これは一応ロマンチックなコメディーなのですが(この略がロマ・コメなんでしょうか)、経験のある人にはちょっと辛い作品でもあります。こんな凄い姑はいないだろう・・・と思いきや、いるかも知れない・・・。いや、いないだろう。でももしかしたら・・・。そうなのです。男女の仲でも親子の仲でも、相手を完全に独占しようとする人が時々います。それがかなわない時にきれいに相手を旅立たせてやれる人と、そうでない人がいます。旅立たせてやれない人にジェーン・フォンダのようなパワーがあると大変。対戦相手にはやはりジェニファー・ロペスぐらいのパワーが必要です。あのジェニファーでも結婚寸前に全てをあきらめかけるのですから。キャストはすばらしいです。

実はすばらしいのはジェーンとジェニファーだけでなく、ジェーン・フォンダのアシスタントのルビー役の女性もぴったりです。私の知り合いにもインテリで気性の激しいキャリアを上り詰めた女性がいるのですが、ちょっとパワーが入り過ぎる時があります。その人に何十年もついているアシスタントのような女性がいます。この人が危ない時にしっかり手綱をつかんでいるので、何とかなっています。実生活にもこういうコンビがあるようですね。それをユーモアたっぷりに演じてくれます。加えてフォー・ウェディングのように登場する2人の友人。これがまた適度に重要で、大きく目立ちませんがいないと物足りなくなります。

★ あらすじ

大筋はスター・ニュースキャスターだったヴィオラ・フィールズがある日世界情勢を全然知らない若い子に取って代わられ首になるところから始まります。仕事を失ったショックと、その後何をしていいか分からず、取り敢えずは精神病院へ一直線。ヒステリーは完治していませんが退院して大きな邸宅に住んでいます。それまでは日本の某有名キャスターや某女優と同じく、重要なインタビューをしょっちゅうこなしていたので、頭はとても良く、外交官にしてもいいぐらいマナーも心得ています。ですから時間を持て余す度合いは常人の数十倍。離婚を繰り返しているので、きちんとした家庭もありません。(携帯電話を通じて)話し相手になってくれるのは病院でスター外科医として活躍している35歳の息子と、以前アシスタントでそのまま辞めずに残ったルビーだけ。仕方なくこれからは息子と付き合いながら暮らそうと思っているところへ、庶民で定職の無いラテン系(なんて言うけれどイタリア系ではないか)のシャーロット・カンティリーニと結婚という事になってしまいます。

シャーロット・カンティリーニは気立てのいい友達に好かれる30歳ぐらいの女性。定職が無く、ケータリング・サービス、受付嬢、犬の散歩係りなどをして食いつないでいます。ゲイの男性と家賃を折半して暮らしていますが、最近はシングルで、恋愛とは暫く縁が無いような様子。それがある日2日間に同じ人に3度も会うという事がありました。出会ったのはジェーンの35歳になる息子ケビン。意気投合して一緒に暮らし始めますが、ケビンは間もなく母親の目の前でシャーロットに結婚を申し込みます。この瞬間からシャーロットとヴィオラは宿敵になります。

頭が良く、機能するアシスタントと有り余るほどの金と時間のあるヴィオラ対、3つの仕事に追われてカツカツの生活をしている庶民のシャーロットでは勝負はあっけなくついてしまいます。何度も恥をかかされ、健康を害するような攻撃を受け、シャーロットは四苦八苦。

普通ですとこの辺で未来のお嫁さんは退散するのですが、恋するケビンはシャーロッテを手放しません。35歳の医者は《自分の人生は母親の手には無い》と知っていました。この年でも知らない男性も世の中には多いので、この辺は教科書的に立派です。しかし敵は手ごわい。シャーロッテが使えない手段を動員して来ます。何せ元ニュース・キャスター。調査能力は抜群。しかしぼろが出ません。単純な生活を送っていたシャーロットは何も隠しておらず、アラを探しても出て来ないのです。で、矛先は肉体的な攻撃に移ります。ここからは明かにヴィオラの方が法的立場を危うくしています。鬼畜のごとく爪を尖らせてかかって来ます。監督がそういう演出にしたのでしょうが、ここは完全にジェーン・フォンダのオーバーアクティング。しかしここを湿らせてじわじわとやったら、フォンダは世界中から憎まれてしまいます。事を冗談で終わらせるためにはちょっとやり過ぎるぐらいにして、アハハと笑うエンディングに持ち込んだ方がいいでしょう。私にはあっさりとした味の刺身の方がいいのですが、ここはごってりとした肉料理を勧められたような感じがします。

最後は教科書的な終わり方ですが、休戦協定。シャーロッテの提案は、「限度をわきまえるなら、今後もずっと付き合う」です。そんな人間として当たり前の決着をつけるのにここまで戦わなければ行けないのが世の中なのだと分かるかしこ〜い映画です。しかし気立ての良さそうな息子はなぜ自分に取って世界で1番目と2番目に大切な女性を戦わせておいて、自分は関与しないんでしょう。これが何百年も前から今日に至るまで常に女性が持つ疑問。そこには触れていません。次の映画の課題として残してあるのでしょうか。

音楽は決まっている所もあり、オープニングはソウル、続いてラテンです。最後は私の趣味ではないのですが、ファンの人には受けそうなしっとりしたジャズ・ボーカル。

この後どこへいきますか?     次の記事へ     前の記事へ     目次     映画のリスト     映画以外の話題     暴走機関車映画の表紙     暴走機関車のホームページ