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13/ザメッティ /
13 (Tzameti)

Géla Babluani

2005 F 86 Min. 劇映画

出演者

George Babluani
(Sébastien - 屋根の修理工、13番)

Philippe Passon
(Jean-François Godon - 麻薬中毒の男、屋根の修理の依頼主)

Olga Legrand
(ゴドン夫人)

Pascal Bongard
(主催者)

Vania Vilers
(Schlondorff)

見た時期:2006年8月

2006年 ファンタ参加作品

滅法怖い作品です。典型的なファンタの作品ではなく、一般の観客向き。スリラー、犯罪映画、フィルム・ノワールといった分類ができないことはないのですが、何よりも人間を描いているように思え、普通の観客に訴える部分も大きいと思えました。

画面はモノクロームで、ニッサンテレビ名画座に登場してもいいような、いかにもフランスという作り。人間を極限の恐怖に追い詰めるという点ではイヴ・モンタンの恐怖の報酬に迫ります。フランスが原点に戻って出して来た、力のこもった作品で、監督2作目というのは俄かに信じ難いです。

要注意: ネタばれあり!

重要なネタの一部はばれますが、最後の結末は伏せてあります。

主人公はセバスチャンという20歳をちょっと過ぎた若者。解説によるとグルジアからの移民だとか。生活が苦しい様子で、フリーターのようなのんきなアルバイトではなく、ちょっとでもお金を稼いで家族にという感じです。家では彼より年長の家族も失業状態で、とにかく苦しそう。

その日もらえた仕事は海岸にある家の屋根の修理。ちょっと年の行った男と、少し若い女の夫婦ですが、夫がラリっているので妻はかんかん。時々こういう事があるらしく、妻は夫を邪険に扱いながらもセバスチャンの助けを借りて家に連れ戻します。

セバスチャンの目から見るとこの家は金持ちですが、この家の方から見ると破産寸前。夫宛てに謎の手紙が届いた直後夫は死んでしまいます。元から鬱っぽい顔だった夫ですが、手紙を受け取ってからは土気色。モノクロームなので、本当に顔の色が変わったかは分かりませんが、そういう演技です。なぜだか分からないのですが、家の外には警察が張っています。

夫の死亡に伴い屋根の修理は中止。家は兄弟の誰かに相続されるので、セバスチャンには修理代が出そうにもありません。そんな時謎の手紙がセバスチャンの目に入ります。電話を盗み聞きするチャンスもありました。封筒の中には電車の切符とホテルの予約が入っていました。その家の都合で急に首になってしまったセバスチャンにはあまり多くの選択肢はありません。非常に貧しかったので、この手紙を失敬して、予約してあった電車に乗ってしまいます。運を天に任せ、警察が後からついて来ることも知らず。

パリ到着の少し後、どこからか連絡があり、それに従いコインロッカーへ。そこで見つけた番号札は13番。欧州では不吉な番号ですが、果たしてどういう結果になるか。その後も連絡に従って行くと田舎の家にたどり着きます。警察もバッチリ跡をつけていますが、セバスチャンは事情を知りません。

海岸の家の主人が来ると思っていた人たちは、全然違う若者が来たので戸惑います。そこいら中人相の悪い男たちがあふれています。セバスチャンの方は、運を天に任せっぱなしで先に駒を進めます。セバスチャンの後からは、元々は海岸の家の主人を追っていた警察もついて来ています。警察は家の中に踏み込む事はせず、近所を嗅ぎまわっています。

間もなくセバスチャンにも13が何を意味するか、そしてこの旅が何を意味するかが分かって来ます。

ここは《持つ者》と《持たぬ者》の秘密集会だったのです。《持つ者》が持っているのはトランクいっぱいの札束。《持たぬ者》が持てるのは礼金。しかし参加者のうちただ1人しかもらえません。審判の指示通りに全員前を向いて輪になります。リボルバーと弾丸が1つずつ配られ、審判の指示通りに弾をこめ、弾倉を回転し、自分の前の人の頭に狙いをつけます。そして審判の指示通り発射。前の人が死ねばそれだけ次のラウンドのメンバーが少なくなります。最後の1人になるまで続き、残った人が勝者。お礼がもらえます。そこで動くお金に比べれば雀の涙ですが。

そうです。ここではディア・ハンターでクリストファー・ウォーケンがやっていたロシア・ルーレットを集団でやっているのです。13というのは不吉な数字ですが、セバスチャンは勝ち抜いて行きます。確かクリストファー・ウォーケンもロバート・デニーロが現われるまで馬鹿勝ちしていました。セバスチャンの運命は意外な展開を見せ、結末にはアッと驚かされます。

単にそれだけの筋ですが、審判の指示、それに従う人々の表情が鬼気迫り、恐ろしい迫力です。気合のこもった怖さと言うとハイ・テンションの殺害シーンといい勝負。しかしハイ・テンションと違い、13は人が死ぬ前の数分の恐怖が極限に達します。で、見終わってもジワーッと余韻が残ります。監督2作目でこんなの作ってしまって、これからどうするんだろう。

あまりの迫力に見終わって茫然自失。しかし少し経って落ちついて来ると色々な問が浮かんで来ます。例えばフランスで移民の置かれている状況はどうなんだろう、貧富の差はどのぐらいなんだろう、金持ちはなぜ賭け事をやりたがるんだろう、なぜ女性は参加していないんだろう、海岸に住んでいた夫婦は一体どういう生活をしていたんだろう、等など。

胃に来るか、体重が減るか、眠れなくなるか、とにかく家に帰っても何かしら起きそうなこわーい作品です。たかが映画と軽く見られない作品の1つに数えましょう。

これを見ていてふと思い出したのがトム・クルーズのアイズ・ワイド・シャットアイズ・ワイド・シャットは何もかもが高級仕立てで、デラックスなムード、13は何もかもが胡散臭く、薄汚く見え、低級ムードですが、やっている事はあまり変わりません。アイズ・ワイド・シャットではお金を持ち過ぎた人たちがセックスに明け暮れ、13は何もかもが胡散臭く、薄汚く見え、低級ムードですが、やっている事はあまり変わりません。13ではセックスの代わりに殺人ゲームに明け暮れるだけの違い。しかし人は必要以上の物を持ってしまうとろくな事を思いつかないという点は共通しています。でき上がりは13の方がずっしり重いです。

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