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007 の予告: 007/カジノ・ロワイヤル /
Vorfilm: Ian Fleming's Casino Royale /
Casino Royale

弱そうに見えて強そうなボンド

2006 UK/USA/Cz 3 Min. 以内 劇映画の予告

出演者

Daniel Craig (James Bond)

Mads Mikkelsen (悪漢)

Judi Dench (M)

Eva Green (Vesper Lynd)

見た時期:2006年9月

本編はこちら。

これまでジェームズ・ボンドの映画と言うと、お遊びと思っていたのですが、どうやら今度は本格的なアクション・スリラーに模様替えして出て来るようです。先日初めて予告を見たのですが、これまでのボンドと全く違い、気合を入れて仕切り直した様子です。

ダニエル・クレイグの人選についてはあれこれ言われていましたし、弱そうなイメージが世界中にふりまかれていましたが、それが却って良く作用したかも知れません。予告を見ていると、傷つきそうな繊細な神経を覗かせておきながら、いざとなったら考えもせず反射的に身を守り、他の人を助け、悪漢をやっつけてしまいます。予告を作った人は、スリラーやアクション映画を見慣れている私でも料金払って見に行こうかと思わせるぐらいの力はあるようです。無論予告に見せ場を全部出してしまって、映画館に行ってもそれ以上見る所が無いなどという例もありますが、予告のアクションの秒数が短いので、少なくともそのシーンをもう少し長く見ていられそうです。

007/カジノ・ロワイヤルというタイトルなので、カジノが出て来ます。私も1度ベルリンで1番有名なカジノに行ったことがありますが、ことカジノに関してはボンド映画に出て来るカジノの方が高級そうです。ああいう場所に弱そうな、繊細そうなクレイグが出て大丈夫なのかと前には思っていましたが、なかなかの押し出し。歴代のボンドの中では1番共感していた若かりしショーン・コネリーをも抜いています。

実は21作目からの新ボンドにはかなりの数の候補者がいて、中の1人はクライブ・オーウェンでした。お遊びボンドでなく、マジ・ボンド・シリーズにするのだったら私も賛成したい候補者が何人かいました。クライブ・オーウェンもその1人。しかし彼は Croupier という映画でカジノのディーラーを演じていたので(上手です)、いくら客のフリをして登場しても私にはどうしてもルーレットの前に雇われ人として立っているイメージが浮かんでしまって行けません。彼が落選したのはそのためでしょうか。

悪漢には当方お薦めのお笑いタレント、マッズ・ミケルゼン。彼はお隣のデンマーク出身の国内大スターです。EU 全体でもある程度名が知られていて、ドイツでも一応名が通っています。その辺のタウン誌でも、新作が公開されると名前が挙がりますし、インタビューが出ることもあります。

なぜお笑いタレントと言うかと言いますと、彼にはタレントがあり、お笑い映画に連続して出ているからです。というか私はこれまでユーモアの無いミケルゼンの映画は見たことがありません。最近クライブ・オーエンと共演して、アーサー王の伝説を撮っていましたが、あれもお笑いで終わっています。「監督、スタッフ一丸になって、ワイルド・バンチのような作品を作ろうと努力していたら、制作の真っ最中にウォルト・ディスニーのお偉方が現われて、結局最後はマイルド・バンチになってしまった」という発言をしていました。

ミケルゼンはアンダース・トーマス・イェンゼンパプリカ・ステーンと相性が良く、よく一緒に仕事をするようです。デンマークが発祥の地で、近隣に広がっているドグマ映画の創始者ラース・フォン・トゥリアとはあまり相性が良くないようです。イェンゼンの映画作りが、仲間と一緒に話し合って良いアイディアが出たらそれも採用する手法なのに対し、トゥリアはシブチンで石頭だからのようです。少なくともミケルゼンは「あいつはけちだ」と発言しています。石頭の方は同じく石頭のビヨルクと一騎撃ちしたことでも有名です。対するミケルゼンは柔軟路線。

ミケルゼンには時たま海外からの仕事が舞い込むようになっており、国際的な名声も徐々に出て来ていますが、どうやら他の俳優と同じく、自国と海外で逆の役を引き受けることにした様子。ですから、007/カジノ・ロワイヤルではお笑いタレントはやめて、嫌な奴か怖い男を演じる様子。なにやら国際的な組織の悪玉という感じです。彼ならそういう役も嬉々として演じそう。新ボンドといい対決になりそうで期待しています。

デンマークでは国中で1番セクシーな男と評判のミケルゼン、007/カジノ・ロワイヤルでも素敵な声を聞かせてくれます。ですから私は英語で見たいのですが、ドイツでは少数の館を除いてドイツ語での公開になります。万一ただ券が当たったりした場合は間違い無くドイツ語。もったいない話です。

いずれにしろ、小説のボンドでチラと感じさせてくれる雰囲気が映画にも出ており、子供騙しの活劇では無い様子。イノセンスの予告もそうでしたが、新しい007も予告は良くできています。

ちなみに過去のカジノ・ロワイヤルを思い出すと頭が痛くなりそうです。最初の映画化は1967年で監督は何とジョン・ヒューストン、ケン・ヒューズ、ロバート・パリッシュ、ジョセフ・マクグラス、ヴァル・ゲスト。音楽がバート・バカラック。出演はピーター・セラーズ、デヴィッド・ニーヴン、ウィリアム・ホールデン、ウディー・アレン、デボラ・カー、ウルズラ・アンドレス、ジャクリーン・ビセット、ジョン・ヒューストン、シャルル・ボワイエ、オーソン・ウェルズ、ジャン・ポール・ベルモンド、ジョージ・ラフト他。パロディーだから笑えと言われても、笑いにくい作品でした。ミケルゼンのようなユーモアが好きだと、どうも合いません。

最近クェンティン・タランティーノでもう1度撮るという話があったのですが、彼が声をかけていたのがピアス・ブロスナン。正式ボンド卒業直後のブロスナンがタランティーノと組むとなると、マジで撮ったとしてもテイラー・オブ・パナマのようになってしまうのかと思っていましたが、タランティーノは一応原作通りの作品を撮るつもりだった様子。しかし制作側の賛同を得られずこの案はボツ。

満を持しての新作、ダニエル・クレイグ版 007/カジノ・ロワイヤルはパロディーではありません。

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