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Five Years /
The Hidden

Brett Wagner

2002 USA 89 Min. 劇映画

出演者

Kris Carr
(Renee Unger - エリックの妻)

Timothy Altmeyer
(Eric Unger - 建築会社の経営者)

Todd Swenson
(Colson Unger - エリックの弟)

Byron West
(Byron Unger - エリックとコールソンの父親)

Cathy Doe
(Renaye Upchurch - コールソンのガールフレンド)

Helen Wiggs
(レニーの祖母)

Larry Miles (Lewis)

Charles Eduardos (Rufus)

David Manocchio (Paul)

Jason Goldstein
(Randy Wright)

Casey Scott (Rosalee)

Michael Buscemi
(Dean Gilman - ルネの友人)

見た時期:2006年8月

2006年 ファンタ参加作品

要注意: 始めの方にネタばれあり!

最後のネタはばらしませんが、その直前までばれます。

ちょっと古い作品ですが、2006年度のファンタに出ていました。タイトルは両方とも内容を示しています。今年のファンタの傾向は小ぶりの地味な佳作だったのですが、Five Years もそれに当たります。

小さな町で幸せに暮している若奥さんルネ。最近子供もも生まれました。夫のエリックは建設業を営み、うまく行っています。高望みをする人でないので、すっかり満足して暮していました。そこへ5年間刑務所に入っていたエリックの弟コールソンが釈放され戻って来ることになります。未成年の時にドラッグをやっていざこざに巻き込まれ、殺人事件になってしまったとのこと。

普通に幸せに暮していた若奥さんにとっては波風。しかし夫の弟だということでむげに断るわけにも行かず、家中のナイフとドラッグの代わりに使えそうな薬品を片付けて弟の帰還を待ちます。

現われたのは暗そうな表情の若者。あまり打ち溶けようとしないコールソンですが、兄は彼を町に溶けこませようとして、教会のミサで町中の人に「皆も知っているだろう、弟が戻って来た。弟は確かに間違いをやった。だがこれからはちがう。受け入れてやってくれ」ってな演説をぶちます。

波風を嫌うルネは「何もそんな事言わなくてもいいのに」という意見。兄は「どうせ小さな町だ。すぐ皆噂を始める。それだったら最初からきっちり言っておいた方がいい」との意見。弟は居心地悪そうで、その場を去って行きます。

私はこの時「お兄さんのやる事は原則論で、私も賛成、しかし保守的な町ではこういう方法を嫌う人がいてもおかしくない」ってなことを考えていました。確かにお兄さんの取った方法は合理的ですが、人はひそひそ噂をすることを好むかも知れないなどと・・・。

ところがすでにここに大きな問題が潜んでいたのです。ある意味で観客は監督にミスリーディングされるわけですが、この展開もストーリーの重要なパズルの一片。

なかなか新しい生活に溶け込めないコールソン、弟の面倒を見ることに集中するエリック、何だかよく分からないけれど変だぞと思い始めるルネ。コールソンが理由を言わず家を離れ、またちゃんと戻って来たあたりからルネは考えが変わり始めます。偏見とは言いませんが、それまではムショ帰りと決めつけた視点だったのです。間もなく生まれて来る子供にこういう弟は悪い影響がある・・・ってな考え方をしていたようです。

コールソンの後をつけて行くと、空家にたどり着き、彼は家の中で床に頬をつけています。事件の時に何かを隠していてそれを取りに来たと取れないこともありません。しかしそうでないかも知れない。そしてある日アンガー兄弟は両方とも消えてしまいます。電話で連絡も取れません。

焦ってしまうルネ。しかし彼女は徐々に独自のチェックをしていて、コールソンのかつてのガールフレンドのレニーやその祖母にたどり着いていました。

そして見えて来たのは同じモザイクのタイルを使った全然違う絵です。

実は5年前、コールソンは黒人の女の子レニーと仲良くしていたのです。で、ロミオのコールソンがジュリエットのレニーを訪ねたりしていました。純粋白人製のアンガー一家には許せない出来事でした。兄弟の父親に当たる人と兄はてっきりドラッグのディーラに会いに行っているものと思い込み、黒人一家の家に乗り込んで行ったのです。その時もみ合いになり、レニーのお父さんを刺殺したのはコールソンではなくエリック。

コールソンは未成年だったので、1年半ぐらいで出て来られるだろうとの計算。で親子共謀して身代わり裁判。ところが予想に反して5年の刑になってしまいます。今更証言は変更できずコールソンは服役します。

この作品で1番腹が立つのは(=見所)、自分が悪くないコールソンが家族のために犠牲になったのに、戻って来たら感謝されるどころか邪険に扱われ、町での評判も《慈悲深い兄がどうしようもないろくでなしの面倒を見ている》という風に兄に演出されてしまうこと。父親も右に習えです。

事の真相はルネがレニーと話しているだけではなく、そこへ飛び込んで来たエリックの行動でもばれてしまいます。その後起きたどがちゃか、そしてルネの取った行動はびっくり。

っとまあ、最後にやや意外な結末が待っていますが、エリックとコールソンの入れ替わりだけでも十分ドラマとして成立します。モラルを問う作品ですが、気負い過ぎず、塩加減がちょうど良いです。

カメラは明るく、この町にこういう秘密が隠されているとはとても思えない雰囲気を作っています。しかしアンガー一家の父親と長男を見ていると、滅法暗い作品チョコレートのグロトフスキー親子を思い出してしまいます。なぜだか分かりませんが、こういう問題あり一家には必ず誰か1人、モラルのきっちりした人ができてしまうようです。誰も止める人がいないのも困りますが、1人パターンに合わない人ができて、家族の揉め事に発展するようです。世の中というのはそういう風にしてバランスが取れているのか、ふむふむ、と感心しているところです。

さて、アメリカの芸能界では珍しい名前のブシェミ。そうです。クレジットを見なくても顔を見ればあの有名なブシェミの身内だと分かります。こちらは兄弟揃って善人のようで、お兄さんとそっくりの感じです。唯一違うのは髪の色。お兄さんばかりが有名になってしまいましたが、兄弟喧嘩をしたという話も聞いたことがないし、きっと2人でマイペースで生きているのでしょう。

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