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無影剣 /
Muyeong geom /
Shadowless Sword

2005 Korea/USA 104 Min. 劇映画

キム・ヨンジュン/Kim Young-jun

出演者

ユン・ソイ/Yoon So-yi
(ヨン・ソハ - 渤海の女剣士、将軍)

李瑞鎮/Lee Seo-jin
(テ・ジョンヒョン - 故買屋、追放されている渤海の王子)

申鉉濬/Shin Hyeon-jun
(クン・ファピョン - 渤海を裏切って契丹に寝返った将軍、契丹反乱軍のリーダー)

イ・ギヨン/Lee Ki-yong
(メ・ヨンオク - クン・ファピョンの腹心の部下、ヨン・ソハをライバル視する女剣士)

崔志宇/Choi Ji-Woo
(ピド姫)

金秀路/Kim Su-ro

チョン・ジュンハ/Jeong Jun-ha

見た時期:2006年8月

2006年 ファンタ参加作品

韓国ではフロップだったそうです。お蔵入りにするにはもったいないような作品で、以前見たアウトドライブ 飛天舞などに比べるとずっと良くなっていました。アウトドライブ 飛天舞で練習して、その成果があったというような感じです。

渤海や契丹が出るというので慌てて歴史のおさらいをしたのですが、それほどマジになって歴史を紐解かなくても、一応話について行けます。渤海、契丹問題は、後継ぎ問題と主権争いなのだという風に思っていれば、舞台がよその国、別な時代でも通用する物語です。

渤海という民族は698年頃から成立し926年に契丹に滅ぼされてしまいます。契丹の方は916年に成立し、1125年に滅びます。モンゴル系の契丹と満州ツングース系の渤海とは隣同士に見えますが、あまり仲が良くなかったようです。

さて、ストーリーですが、契丹に攻められ、世継ぎがほとんどいなくなってしまった渤海に残されたチャンスは、以前追放された王子テ・ジョンヒョンの発見と保護だけ。 歴史を見ると渤海と契丹が重なっているのは約10年。ですから完全に史実を無視したのでなければ、この話は926年に近付いている時期のいつかということでしょう。

映画は渤海の側から描かれます。そこに登場する英雄が女剣士というところが変わっています。しかも将軍です。単に剣士が活躍するファンタジー時代劇にしてしまえば、なあんだということになりますが、主演に女性を持って来た点が変わっているのと、主演女優の扱いが普段知っている作品と違うので類似の他の作品を大きく引き離しています。

どうやらこの話にはジャンヌ・ダルクのような女性がいたらしいという言い伝えによるものらしいです。国が滅びる寸前になると、普段は見向きされない女性にも活躍の場が与えられるのでしょうか。ま、その辺はあまり突っ込まないことにしますが、映画に出て来る女性は、任務に忠実、仕事熱心です。

王子には政治に対する興味が無く、国王などになる意思ゼロ。現在の仕事は盗品の古買屋。現状に満足。王になるという野心が無ければ本来安全なのでしょうが、敵は彼が何を考えているかなどには頓着せず、消しておいた方がいいという考え。で、迫って来ます。しかも《契丹に追われる渤海》というだけでなく、契丹に寝返った者もいます。当代一の剣士を倒して自分が当代一になろうと狙う者もいます。そんな中女剣士は王子を国に連れ帰らなければなりません。皆が誰かを倒したいので人は出会うたびにチャンバラ。韓国映画ではありますが、広々とした中国で撮影されています。

それも見所ですが、特に私の印象に残ったのは、女剣士が無口で、人形っぽくないところ。当時の人があんな格好をしていたわけはありませんし、あんなメイクのわけもありませんが、それでも一応納得させるような描き方で、漫画にならずに済んでいます。アクション・シーンはファンタジー時代劇と考えると贅沢に作られています。

このストーリー、どれほどが当時の時代に忠実に描かれているのか、見当がつきません。女剣士がいたという言い伝えがあるようですが、剣士というのは大多数は男性でしょう。職務を男性に移し変えて考えたとして、これは日本的な武士(ぶし)なのでしょうか。韓国人の言う武士(むさ)というのはどういうステータスなのでしょうか。

西洋の武士は騎士などといわれ、契約で主従関係が決まります。臣下はしっかり給料を要求します。契約が切れるとドライにさようなら。日本より主人との密着度が薄いです。こういう別れ方は裏切りではありません。その辺を知っていた方が物語が良く理解できたのかな。知らない私でもちゃんと楽しめましたが。

無影剣というのはそういう剣があるのではなく、技の名前。主演は本当は王子のようなのですが、私の目には女剣士の方が主演にふさわしく思えました。なお、この作品は豪快な戦いのシーンが見所なので、できれば劇場で見ることをお薦めします。ワイヤーを使ったスタントも多いのですが、以前見たグリーン・ディスティニーほど不自然な仕上がりではありません。アクション・コーディネーターは香港のスタッフ。

これまでに阿羅漢−掌風大作戦アウトドライブ 飛天舞を見る機会があり、無影剣は3本目になりますが、私は阿羅漢−掌風大作戦アウトドライブ 飛天舞の評価は低く、無影剣は楽しめた、人に薦めてもいいという評価になっています。キム・ヨンジュンだけを見ても、2作目は進化したと言えます。

東アジアの情勢は緊張しているのですが、この作品、反米色、親中色を強める韓国がアメリカの協力も得、中国で撮影。スタントには香港が協力。民間ではこんな事も可能なのかとため息が出ます。

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