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2010 サッカー世界選手権 南アフリカ

その1

関係者

世界選手権出場ティーム
(この日は英独)

審判

各国スタッフ

見た時期:2010年6月

★ ミイラ取りの末路

お断りしておきますが、私はサッカーのファンではありません。関心もありません。ただ4年ほど前から局部的に世界選手権と欧州選手権になると発作に見舞われるようになりました。

今年も「サッカーがあるとブルースのライブ・コンサートの邪魔になる」ぐらいの乗りで見ていました。ですからサッカーの話題は表紙のページにちょっと触れるぐらいでいいと思っていました。

ところが昨日。午後5時近くまで用があって家にいたのですが、その後時間ができたので近所のビア・ガーデンに繰り出して行きました。そこにはテレビを大スクリーンに映し出す装置があり、ビールを1杯注文するとベンチに座って試合を見ていられるのです。ドイツではビールはジュースより安いです。どんなマイナーな試合でも中継は全部見せてくれます。店の前を通りかかると週の途中で客は1人などということもあります。

★ 32→16

今年のサッカーは32ティームから16ティームに絞られる段階で何度か不思議な現象があり、本気で見る気がしませんでした。主な《なんでやねん》を挙げると、

・ A 開催国にご祝儀相場無しだった南アフリカ。(大変な仕事をやったのだから、ご苦労様の点をあげてもよかったのでは。開催国が優勝するパターンは多く19回中6回、4位以内にも計算に入れると実に12回)
・ A フランスは一体何をやっているの。(試合の実力で負けたのではなく、ティーム内の揉め事で引き上げた。これから大統領に申し開きしなければ行けない)
・ B 過去の成績を考えると順当な結果に思えた。
・ C 過去の成績を考えると順当な結果に思えた。
・ D セルビアがガーナより下になったのは過去の結果を考えると意外。旧ユーゴスラビアはドイツや英国ほどの大成功ではなくても欧州でははずせない国だった。今年はアフリカの年、「セルビアはこの国名では初出場だから数回練習してから上に来なさい」という意味か。
・ E オランダはまあこれまでの実績から言って、残る可能性は大きかった。カメルーンを抑えて日本が出るとは思わなかった。アフリカ年だからカメルーンが残るかと思った。カメルーンが活躍した年にはドイツでも報道されていた。無名国ではない。
・ F ぶっ飛んだ。サッカー大国イタリアを抑えてそれ以外の国が勝ってしまった。「前の優勝が強引過ぎたので、今年は静かにしていなさい」という意味か。フランスとイタリアの両方が消えたのにはぶっ飛んだ。
・ G この中でブラジルが残るのは自明の理。北朝鮮に1点プレゼントしたのは44年ぶりだったので参加賞か。ブラジルから点を毟り取るのは他の国でも大変。最近調子が上がっているけれど、ポルトガルはサッカー大国ではない。この組み合わせの中では順当な結果。運が良かった。
・ G 番狂わせではないけれど、北朝鮮が44年ぶりに出て来て、因縁のポルトガルと対戦。44年前と同じく軽くあしらわれて退場。前回は大番狂わせでかなり上まで上がった北朝鮮をポルトガルが仕留めました。今年はあっさり最初のグループで「一昨日おいで」とばかりに負け。
・ H 過去の成績を考えると順当な結果に思えた。

32→16で残った国を見渡すと、

・ 世界大戦の続きになりそうな国がいくつか残っていた
・ 植民地時代の独立戦争のやり直しになりかねない国がいくつか残っていた

のですが、少しずつ決着しています。ここ数日でその辺の結果か出ます。

★ 平和のスポーツ: サッカー

「本当の戦争は止めてスポーツで鬱憤を晴らしなさい」という考え方は昔からあります。オリンピックなどもそういう意味合いが濃いです。その意味では今年は趣旨に合っているのかも知れません。今年は何だかそういう意味合いが例年より見え隠れします。世界の動きも反映しているようで、開催国は2002年がアジア、今年がアフリカ大陸、次回が南米。別な目で見ると2002年日本(と韓国)、2006年ドイツと旧敗戦国に華を持たせたようにも見えます。西ドイツは1974年に開催したことがありますが、統一ドイツではこの間が初めてでした。

★ 危険なスポーツ: サッカー

1974年のドイツは国中が大喜びしていました。結果として西ドイツが優勝したのですが、恐ろしかったです。何しろアウトーバーン(高速道路)を車が100キロ以上の速度で走り(西ドイツには高速道路上では速度制限が無い)、ゴールが決まるたびに車内でラジオを聞いていたドライバーが興奮して急ブレーキを踏むのです。私はその頃たまたま西ドイツのケルン、ボンあたりからルクセンブルクに近い土地を観光旅行していたのですが、危ないの何のって。サッカーには何の知識も無く、全く関心の無い私は、ただただ身の安全を考えていました。

欧州人がサッカーに狂うということは日本にいる頃から知っていました。1965年から作られ始めた黄金の七人シリーズには、泥棒の一味が国民がサッカーに夢中になっている隙にごっそり盗み出す作戦もありました。時間切れでばれるかと言う時に同点になり、延長戦に持ち込まれたためまんまと盗みおおせるというエピソードもあります。サッカーを諦めて盗みに入るにはそれ相応の決心が要ったことでしょう(笑)。私は当時あれは笑いを取るために話を大袈裟にしたのだと思い込んでいましたが、いやいや、そうではありません。欧州人は4年に1度狂います。

★ 因縁の英独戦

上にも書いたように英独戦の後半をビア・ガーデンで見たのですが、英というのはイングランドだけのことで、大英帝国の国旗ではなく、イングランドの旗で参加しています。大英帝国の旗から青を抜くと赤白の旗になります。そこに残るのは米という文字。そこからバッテン(×)を抜くと残るのは赤白の十という文字。これがイングランドの正体です。ちなみにスコットランドは青地に白のバッテン。北アイルランドはイングランドと似た地に紋章。ウェールズはちょっと違うパターンですが、赤(い竜)、白、緑を使ってあります。ウェールズにはその他に黒字に黄色の十字の旗もあります。英国が白地に赤の十字旗で出る時はグレートブリテン・北アイルランド連合王国を代表しておらず、イングランドだけを代表しています。かなりこだわっています。

★ 統一ドイツ

さて、それに対するドイツはと言うと、統一ドイツ。統一ドイツでスポーツ大会に参加と言うと思い出されるのは東京オリンピック。ドイツ人にその話をすると誰も知らず、びっくりした顔をされるか、私が嘘を言っているかのように思われてしまいます。しかし何を隠そう、ドイツは東京オリンピックには両国一緒になって出て来ました。しかし国は別々のままで1989年まで残りました。1989年に統一を果たし、その後は完全な統一ドイツ。

東ドイツはオリンピックには積極的で有名な選手もいますが、サッカーにはあまり乗り気でなく、1974年に下の方に顔を出しただけです。しかしスポーツとしては知られており、1989年以降は東地区生まれの選手もどんどん出ています。

★ 今年はドイツから出るトルコ

加えてドイツで無視できないのはトルコ人。トルコのサッカー歴は長く、国際連盟には1920年代から加盟。国際舞台に名前が出るようになったのは90年代以降です。この頃までにはドイツに仕事に来て定住したトルコ人に孫ができるぐらいになっており、ドイツの学校に行くと当然ながらスポーツの時間にはサッカーもあります。トルコ人はドイツだけに移住したわけではなく、フランスなど近隣の国にも住んでいますから、そういう国から影響も受けているでしょう。ドイツの監督がトルコのトレーナーに就任などという話が耳に入って来ます。2000年以降は無視できない国に成長しています。

トルコという国を代表して出て来ますが、その他にドイツ国籍になっているトルコ人にもサッカーの上手い選手がおり、今年はメスート・ウジルがドイツ・ティームで大活躍しています。

前々回はかなり上まで行きましたが、ベルリンに住んでいると、トルコ系の人はまずトルコを応援し、どこかで負けるとドイツの応援に切り替えます。ベルリンのトルコ人は自国を応援する時にも必ず同時にドイツの旗も立てます。今年はトルコは予選落ちしているので、32ティームに入りませんでしたが、ドイツを応援しているようです。その中でドイツ・ティームの監督はトルコ系選手に見せ場を作らせています。

★ 英独戦 本当の因縁

32→16から勝ち上がって来た英独ですが、16→8に上がるところでいきなりぶつかりました。サッカー大国を2つぶつけるということはかなり厳しい選択になります。他所を見渡すと例えばアルゼンチンがすぐメキシコと当たっていますし、スペインがポルトガルと当たります。32→16の時には何だか変な試合だと思ってあまり本気で見ていなかったのですが、16→8からは血を見るぞってな感じで、少し気合を入れて見始めました。それでビア・ガーデンに出かけて行った次第。

前半は用があって見られなかったのですが、その間に大事件が起きていました。どうもドイツが先に1点入れ、後を追うイングランドは1点返したように見えたのですが、審判が首を縦に振らず、1対0。その後調子を崩し、2対1に持ち込んだものの、後半さらに2点入れられてしまい、4対1でドイツの勝ち。私は2対1とか1対0とか3対2など僅少差でドイツが勝つかと思っていたので、ちょっと意外でした。

ここでめちゃくちゃ混乱したのはイングランド。始まる前にベッカム負傷で重要人物が欠けました。その点ではドイツも祟られ、バラクが負傷して始まる前に退場。−1対−1です。そしてこの2ティームは44年前に決勝で対戦して以来の因縁を抱えています。当時決勝まで上り詰めて来た両国が対戦。2対2で時間切れ。休憩してから延長戦。その前半(あの時も前半だった!)にラインズマンの判定で英国に1点。ゴールラインをきっちり越えていなかったというドイツ側の主張は却下。その後もう1点決めて4対2でドイツの負け。

ちょうどこの試合をひっくり返したようになったのが昨日の前半。私が見始めた時は2対1でドイツがリードしていたのですが、イギリスの解釈によれば2対2。しかし審判は1点を認めていませんでした。ビヤ・ガーデンのベンチにすわりふと前を見ると英国人が1人赤いトリコーを着て最前列ど真ん中に座っています。もうこの時は悔しくてカリカリしていたのでしょう。

後半が始まったばかりのところから見始めた私ですが、暫くするとゴール。周囲も私も大喜びです。1人むっとしている英国人。ビールを注文して見ているとまた1点。ついに英国人は席を立ち、帰って行きました。

余裕で画面を見ていると新しいゴール・キーパーが頑張っています。レーマンを思わせる長身。その上キング・カーンやレーマンに劣らぬ有能なゴール・キーパー。ドイツはしっかりしたゴール・キーパーを置く伝統があり、《後ろは任せておいて大丈夫》体制をしきます。キング・カーンは敵側から見ると憎らしくなるぐらい完璧なゴール・キーパーでした。鬼のような顔で競技場を睨みつけ、眼力でも相手を攻撃します。言わば閻魔大王。そのカーンをはずして前回レーマンを押し通したクリンツマン監督ですが、そのレーマンも外国から誘いが来るような有能なゴール・キーパーでした。2人は年齢を考え、身を引くことに決め、試合範囲を国内だけに限った後で完全引退。その直後に既にこういう新しいゴール・キーパーが国際舞台で活躍しています。

ドイツ人はゴールが決まると花火を打ち上げる習慣があるのですが、この日は当然ながらまず4回花火が上がりました。そして町中の道路を走る車はクラクションを鳴らしまくります。普段は騒音として取り締まられるのですが、トルコ人の結婚式の車列とドイツやトルコがサッカーの重要な試合で勝った時はおまわりさんは両目をつぶり、取り締まりません。私がいたビア・ガーデンは近所の大通りに面していたので大騒ぎ。ドイツの旗をつけた車がクラクションを鳴らしまくっていました。

この試合の前まではあまり気合が入っていませんでしたが、英独戦からは本腰を入れ始めたようです。

★ 元閻魔大王の現在

キング・カーンは1994年に名門のミュンヘンのティームに入り、その後10年以上一流の腕を見せた人。武勇伝は伝記本を数冊書けるぐらいあります。ゴール・キーパーとしては世界一の能力。彼がいるだけでビビる敵選手もいるはずです。言う事も辛口で、舌戦も激しいです。しかし一般のサッカー選手より思慮深く、現役時代から全ての人生をサッカーに捧げないように気をつけています。

本人がその気になれば大学に行くこともできる試験には高校時代に受かっており、その状態で選手として現役でした(ドイツは日本ほど大勢の人が大学を目指さず、入らない。サッカー選手で大学に行く人は少ない)。職業はサッカー選手と思われがちですが、株式のアドバイザーでもあり、テレビにちゃんと自分の時間を取ってもらい、経済コメンテーターとして番組に出ます。その時はサッカーの話はせず、平服で出て来ます。

偶然昨日インターネットで彼を見ました。驚いたの何のって。

試合中だけでなく、現役の時はいつも目を吊り上げて怖い顔をしていたあのカーンがまるで笑い茸でも食べたかのように番組中笑いころげていました。横にいたアナウンサーも笑っていましたが、彼女が何度「コーチになれば」とか、「サッカー界のどこかでカンバックしては」と言ってもかつてボールをゴールさせないように完全ブロックしていたのと同じぐらい確実に拒否。にこにこ笑いながらの話で、顔はほころびっぱなしなのですが、答はノー。「人生にはサッカー以外にも楽しいことがいくらでもある」と言い続けていました。

前回の世界選手権の時はレーマンがゴールを守っている間控え室にいましたが、舞台裏ではシュヴァイニー君(シュヴァインシュタイガー)に個人教授をしたりと、後輩の面倒は見ていました。あの時の彼はいかにも閻魔大王という出で立ちで、味方には力強い支えと思われ、敵には地獄の大王のように恐れられていました。その彼があんな温和なおじさんになってしまうとは思いもよりませんでした。

★ 場外乱闘

今年の英独戦は場外も激しく、英マスコミもドイツとはクリンチをしています。英独戦直前のドイツ・ティームの会見では英国ジャーナリストが「お前ら英語で答えろ」と言い出す場面も。それを会見のまとめ役だった人が一言の元に却下。英独戦争の様相を呈していました。

英国の新聞は監督の粋なはからいで試合前にサファリ・パークにライオンを見に行ったドイツ選手を揶揄。笑い者にしようとしたようです。ドイツの監督は《ライオン》という苗字なのでライオンと遊びに行ったのですが、英国のティームもライオンと呼ばれるらしく、そこに引っ掛けたようです。結果は重要な試合前に遊びに行ったドイツの勝ち。選手をリラックスさせようとのはからいが良かったようです。

試合が終わって家に戻って来る時、家の前でアパートの管理人をしている隣人とばったり。私が「4対1で勝ったね」と言ったら、その人は「当然だ。イギリスはドイツのことをバクテリアなどと呼んだんだぞ」と言っていました。なんじゃ、そりゃひどいと思ったのは私だけではありませんが、どうも三文新聞も激しい舌戦を繰り返していたようです。

★ 素早い判断

今年のドイツ選手は若手中心で、1966年の事を知っている人はいません。生まれてもいなかった人ばかり。しかし危機管理は完璧だったと見え、怪しい判定が出た後、ドイツはさらに点を入れており、あの1点を抜きにしてもきっちり勝ちと見えるような点数で終えました。僅差で勝つと「実はあれは引き分けだった」とか、「実はイングランドが勝っていた」と今後44年間言われ続けるでしょう。それを防ぐには、「あの1点を貰っていても負けた」と思えるような点差をつけること。その通りになりました。

ここでやめるつもりだったのですが、日本が妙な感じだったので、ちょっと追加。

★ 軽量級

日本は不思議な勝ち進み方をして、今年は韓国より1つ先に駒を進めました。組み合わせの運、不運もありますので、最初の4ティームに強豪ばかりが集まってしまって重量級の国が敗退ということもあります。今年の日本はオランダには負けると分かり切っていましたが、カメルーン戦はちょっと意外でした。

まあ、どういう運がついたにせよ勝ち残ったのでそれはいいですが、パラグアイでは6対4ぐらいの感じで負けるだろうと思っていました。負け方としてはかなり良かったです。1点差ぐらいで通常の試合中に負けるかと思っていたのですが、延長戦に持ち込み、そこでも点を許さなかったのは根性。最終決着11メーター(PK戦)ですと恥じることはないでしょう。しかも0対何とかではなく、3点入れている。

全体的に見ると日本はまだ軽量級で、世界の強豪と呼ばれるティームとは格が違います。なので私は今年の結果はそれほど悪くないと思います。「一昨日おいで」とは言いません。「昨日おいで」ぐらいでしょう。守備では世界に見せても恥じることのない力がつき始めていると思います。

中継で全部見たわけではないので話がずれるかも知れませんが、ビデオのカットを見た限りでは点を入れるためのティームにはなっておらず、点を取らせないためのティームになっているような印象でした。点を取らせないことと点を取ることはコインの両面みたいなもので、同時に両方必要です。まず守備から学んで次にということなのでしたら、順調に成長していると言えます。しかしまだ両方きちんと揃っていないので「昨日おいで」になってしまいます。

参考になるのはドイツでしょう。ドイツの選手はゴールキーパーに絶対の信頼を置けるようにしておいて、他の選手は個人プレイをしません。誰かがボールを持って走り出したら、必ず彼をアシストする準備のできている選手が少なくとも1人ついて来ます。前に進めなくなったらさっとそちらにボールを送るのはもちろんのこと、ゴールに近づいた時には必ずその人をアシストする選手が控えています。かつての大選手ベッケンバウアーにはミュラーという人が必ず陰のようについていて、ベッケンバウアーがゴールしやすい環境を整えていました。他の世代ではブライトナーとルメニゲのコンビも有名です。この方式は2人組に限らず、ドイツ選手は1人が走り出すと周囲にネットがしっかりできています。どの国でも似たような事は考えつき、同じようなトレーニングをしているのでしょうが、ドイツが特によく機能しています。

日本は試合開催地の気候に合わせた作戦を練っていたそうで、その点は評価しています。

★ 越えなければならない壁

日本はまだ軽量級と判断するのはプレイの技術ではなく、ティームの方です。欧州の重量級の選手は体が堂々としているだけではなく、知らない人が見たらどこかの傭兵か、ギャングかと思える迫力があります。殺気が漂うこともあります。応援席にお母さんがいて、テレビで中継されるなどという話は聞いたことがありません。ドイツがイングランドに勝った直後にドイツ選手の1人がカメラに向かって「おじいちゃん、おばあちゃんによろしく」などと言ったので驚いてのけぞりましたが、滅多に家族が出て来ることはありません。

最近フーリガンがいなくなりましたが、ちょっと前までは応援席すら危険な雰囲気が漂い、見に来る人の手にはビール瓶などということが多かったです。サッカーは普段ばらばらの家族や友達がテレビの前に集まって一緒に見る競技ですが《家族的なスポーツ》ではありません。ドイツ選手は比較的クリーンなイメージですが、例えば英国には悪名高いジョーンズを始め、伝説的な猛者がいました。ドイツの知人が子供向けのサッカーの話を書いているのですが、そこに出て来る田舎の少年サッカーですら、買収、ありとあらゆるルール違反が続出する厳しい世界。日本選手にはまだそういうタフな世界で勝ち抜くという意思が見えません。

ジョーンズのように汚くなれと言っているのではありません。悪役も観客動員数や視聴率を上げるためのパーフォーマンスに違いありません。選手の方も再就職、例えば引退後悪役になって映画で殺人鬼を演じる準備をしているのかも知れません(笑)。しかし例えばプロ野球の選手ですと大事な試合でもあまり両親が出て来たりしません。それでも野球の本場のアメリカで通用しています。日本選手はドーピングをせずにクリーンにやっています。そこで感じられるのは選手が舞台の裏と表の両方を心得ているのではないかということ。

野球選手は国内でも色々な駆け引きを知った上で一部は演じながらやっているのが伺えます。純粋にやっていられるのは学校関係の試合ぐらいでしょう。プロになるとそうは行かない。似たような複雑さは欧州では野球ではなくサッカーにあります。今回意外な国が早く敗退してしまった裏にはその辺の事情もあったのではとかんぐったりしています。

日本人がそういう駆け引きに弱いとは言えません。例えばアイススケートの浅田選手は未成年の頃から色々な障壁に苦しんでいましたが、ついに高度のジャンプを飛ぶ選手にはそれなりのトライに対する評価が得られるようにルールの変更がありました。プルシェンコが「このまま行くとシングルはアイス・ダンスと改名するべきだ」と言い出したように、スポーツなら高度の技術に挑戦する者が報われなければ行けないと思います。浅田選手が泣いたのは単に負けたからではなく、そういう裏の駆け引きを理解していたから。あの若さでしっかり頭の中は大人です。

この種の駆け引きを勝ち抜く競争心がまだ日本のサッカー選手にはよく見えて来ません。あるいはその辺を理解していても壁を突破する強い意志が見えて来ませんでした。監督はあっさり辞めてしまうようですし、選手は不思議と自分では満足している。4年後誰がどういう風にまとめて行くのかちょっと気になります。

さて、日本は敗退しましたが、まだ今日はウルグアイ・ガーナ戦とオランダ・ブラジル戦。明日はアルゼンチン・ドイツ戦とパラグアイ・スペイン戦です。

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