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USA 2011 93 Min. 劇映画
出演者
Jason Statham (Arthur Bishop - ヒットマン)
Donald Sutherland (Harry McKenna - ビショップの友人で仕事の依頼主)
Ben Foster (Steve McKenna - ハリーの放蕩息子)
Tony Goldwyn (Dean - ハリーの上にいる大ボス)
James Logan (Jorge Lara - 南米のターゲット)
Joshua Bridgewater (自動車強盗)
Jeff Chase (Burke - メカニック、ビショップの暗殺のターゲット)
John McConnell (Vaughn - 新興宗教の教祖)
Mini Anden (Sara)
見た時期:2011年12月
★ 俳優ジェイソン・ステイサム
水泳選手、ファッションモデルを経て俳優になったステイサムは演技力では勝負せず、むしろ自分の持つ雰囲気を生かす監督と組み、スポーツを行かせるアクション俳優として名を挙げていました。脚本がおバカ物、主人公が能天気でも気にしない、気にしない。その路線でうまく行っていました。そして台詞ではあまり大がかりな芝居はせず、時たまぽろっともらす言葉がクールだったり、納得がいかないような視線をちらりと見せることで対面は十分保っていました。
そのステイサムが演技派に向かいだしたのかなと思わせるような作品がメカニック。適度に映画界に慣れたところで、本来のアクション映画を拒否することなく、するりとこういう作品を混ぜて来るのは本人の希望なのか、良いマネージャーがついているのか、あるいは監督が彼を育てているのか。
★ 2011年のメカニック
リメイクではありますが、とりあえずは新しい方だけに注目してみます。
☆ ストーリー
主人公の職業はヒットマン。その仕事ぶりから同業者の間でメカニックと呼ばれるビッショップは友人で仕事を周旋してくれるマッケナンの殺しも引き受けます。マッケナンの上に立つ男が命令したので、言われた通り仕事を片付けます。マッケナンは車椅子に乗っているものの、まだかなり実力があり、ビショップはそのマッケナンの裏をかいて駐車場におびき寄せ、片付けてしまいます。
マッケナンには放蕩息子がいて、金がかかり、よその金を失敬していたとか、仲間を裏切って殺したという理由が大ボスから語られます。仕事がオフの時はニュー・オルリンズの湿地帯に住み、ある老人と友情がある以外は他人とは深い付き合いもしません。
マッケナンはビショップを自分の子供のようにかわいがり、ヒットマンとしてのノーハウを全て教えていました。実の息子スティーヴの方は出来が悪く、父親の葬儀で久しぶりに再会したビショップは息子の危うい様子を見て、今度は自分が親代わりに息子にノーハウを教えようと決心。馬鹿息子ではあっても多少はヒットマンとしての才能があり、特訓が始まります。そして実践の場にも立ち合わせ、後には実践に加えます。
初仕事で、スティーヴはビショップの言うことを聞かず、毒を盛る代わりに格闘。そのため証拠が山ほど現場に残ってしまいます。次の仕事は新興宗教の教祖暗殺。時々信者の女性を妊娠させ、暫くすると女性の死体があがるという胡散臭い人物。ここではビショップとスティーヴはちゃんと準備を整え出動。しかし相手側の都合で番狂わせ。効くと思った薬が効かないのです。結局大立ち回りになり、2人は命からがら逃げ切ります。しかし1人でやったり、昔の仲間と組んでいた頃とスティーヴを使うようになってからでは全く様相が変わります。
逃げている途中、偶然ビショップは死んだはずの死体写真の男が歩いているのを目撃。その結果大ボスの話に大きな疑問符がつき、ハリーがやったとされている話は大ボスのことではないかと疑い始めます。実はハリーはボスのやった不正に気づき、調べていたようなのです。大ボスはビショップが気づいたことに気づき対策を打ち始めます。たとえばスティーヴが人質に取られビショップが誘い出されそうになります。そこは上手くスティーヴに隠してあるピストルのありかを伝えることができ、乗り切りますが、スティーヴはビショップが自分の父親を殺したことを知ってしまいます。
2人の次のターゲットは自分たちを襲って来る大ボス。依頼者がいるのではなく、自衛のため。その仕事の最中、ビショップはスティーヴが父親殺しの犯人がビショップだと気づいたことを知ります。スティーヴはガソリン・スタンドで爆発を起こし、ビショップを片付けたつもりになりますが、ビショップはその前に逃げます。
スティーヴはビショップの家に戻り、ビショップが大事にしていた古いレコードをかけ、古い車を持ち出しますが、ビショップはそこに罠を仕掛けていました。スティーヴは昇天。最後にビショップがどうやってガソリン・スタンドで逃げたかが観客に紹介されます。
いかにも西洋型の父子関係。ハリーは事情を察しながらも言い訳をせず、静かにビショップの手にかかり死んで行きます。どうせ死ぬなら愛弟子の手にかかって・・・ということだったのでしょう。ちゃんと説明すればその時点で謎が解けたとも思えますが、男のブルース路線にしたのでしょう。ビショップとハリーの間ではいかにもゲルマン族的な、父親が子供を殺すという結論になっています。実の親子でないけれど。
☆ 1972年のメカニック
チャールズ・ブロンソン演じるメカニックはリメイクと全く同じ役名、職業です。彼なりに殺しに美学を持ち込み、難しい仕事にも研究心旺盛で取り組んでいました。新しい仕事の依頼は自分の父親の友人、ハリー・マッケンナ暗殺。仕事が終わった後、ハリーの息子とご対面。それまでのルールを破ってその息子スティーヴの面倒を見始めます。
その頃ビショップはちょっとした病気を抱えていますが、この部分はリメイクからはカットされています。オリジナル版ではスティーヴを助手にするにあたってこの病気が理由となっています。スティーヴを一人前のヒットマンになるまで養成。勝手に助手を使ったことで大ボスに怒られるところはリメイクと同じ。殺す相手などは少し変えてあります。チラッと女性を相手に休養するところではブロンソンの奥方が登場。ステイサムは独身で、出演させる奥方は無し。代わりにミニ・アンデンが似たような役を引き受けています。
その先の展開がやや違っていて、スティーヴがビショップ暗殺の命を受けることになっています。リメイクではスティーヴは大ボスとはつながっておらず、こういう揉め方はしません。オリジナル版ではビショップがハリーを殺し、次に若い舎弟のスティーヴがビショップを殺す命令を受けるという因果応報式になっています。実はこの暗殺命令が曲者。スティーヴに返り討ちを受けるかも知れないことを知りながら仕事をするビショップ・・・という形でスリルを盛り上げているようです。
私はブロンソン、アイルランドの作品を何本か見ているのですが、このオリジナル版を見たかはっきり記憶していません。
ステイサム版ではビショップがスティーヴに納屋へ物を取りに行かせ、スティーヴがそこでビショップが保存していた父親の銃を発見したため、ビショップがハリーを殺したことがばれてしまうようになっています。で、父親とあまり上手く行っていなかったスティーヴがそれでも父親の敵を討つという運びになります。
ここで深読みすると、ハリーを殺したことで気がとがめているビショップがわざとスティーヴに銃を見つけさせたとも取れます。メカニックと呼ばれるほど用意周到なビショップなら、銃はもっと分かりにくい所に隠すか、思い出の品などは取っておかないと考えられるのに、わざわざ、ぽろっと出て来てしまうような場所においてあり、その家にわざわざスティーヴを来させているからです。
その反面オリジナル版ではビショップは事前にスティーヴが自分を狙うことを予想していますが、リメイク版では自分の不注意さでスティーヴはビショップを狙い始めますが、ビショップは気づいていないことになっています。そこで、銃の解釈が微妙になります。どちらにしろ2人の間は表向き仲のいい同僚、裏では1人がもう1人の命を狙うという運びになります。
★ ステイサムを持ち上げる作品
ステイサムは俳優として特別凄い能力が見え隠れする人ではありません。スポーツが得意なためアクション映画には向いていて、これまでそれでずっと通しています。ただ、彼が良さそうに見える脚本が用意され、彼と反りの合う監督が演出するため、主人公が筋肉馬鹿に見えるようなアクション映画にはならない仕掛けになっています。
メカニックはまさにそれで、ビショップが時々自問自答しているような表情を見せます。ステイサムが重要な台詞をしゃべるわけではなく、ちょっと憂鬱そうな顔で遠くを見たり、ただそれだけ。しかし監督に気に入られ使ってもらうだけではなく、彼に合いそうな脚本まで用意されているというのは、俳優としては幸運中の幸運と言えるでしょう。
ステイサムはそこが良く分かっているのか、演技に関して大口をたたいたりはしません。出る作品がみな似たようなタイプでも文句も言わずせっせと仕事をこなしています。人を殺すか映画を撮影するかの違いがあるものの、メンタリティーとしては来た依頼を黙々とこなすプロフェッショナルな男という意味で同じなのかも知れません。
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